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「億万長者」は幸福への近道?遠回り?

ここはコスタリカの小さな漁村である。

1人のアメリカ人旅行者が桟橋に係留してあるボートに近づいて行った。

ボートには大きなカジキマグロが数本入っていた。

旅行者は漁師に尋ねた。

「何時間くらい漁をしていたの?」

漁師は「そんなに長い時間じゃないよ。」と答えた。

「もっと漁をしていたら、もっと魚が取れたんだろうね。惜しいなあ。」

「自分と自分の家族が食べるには、これで十分だ」

「じゃあ、余った時間は何をしているの?」

「日が高くなるまでゆっくり寝ていて、それから漁に出る。戻ってきたら子供と遊んで、女房と一緒に昼寝をして、夜になったら友達とワインを飲んで、友達とギターを弾いてるのさ。旦那、することがいっぱいあって毎日、結構忙しいんだよ。」

旅行者は真面目な顔で漁師に向かってこう言った。

「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間としてアドバイスをしよう。いいかい、君はもっと長い時間、漁をするべきだ。それで余った魚は売る。お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲量は上がり、儲けも増える。その儲けで漁船を二隻、三隻と増やしていくんだ。やがて大漁船団ができる。そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。その頃にはこのちっぽけな漁村を出て、コスタリカの首都サンホセに事務所を構える。やがてロサンゼルスやニューヨークにも進出できるだろう。漁港から加工、販売までを統合して、オフィスビルから企業の指揮をとるんだ。」

漁師は尋ねた。

「旦那、そうなるまでに何年かかるんですか?」

「15年から20年くらいだな。」

「で、それからどうなるんで?」

旅行者は笑って言った。

「うん、ここからが肝心なんだ。時間が来たら上場する。そして、株を売る。君は億万長者だ。」

「なるほど、そうなるとどうなるんで?」

「そしたら仕事から引退して、海岸近くの小さな村に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、日中は釣りをしたり、子供と遊んだり、奥さんと昼寝をしたりして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌を歌って過ごすんだ。どうだい、素晴らしいだろう。」

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