老僧の接ぎ木 | 未来を育む
谷中の里に古びた寺があった。
寛永(1624年〜1644年)の頃、将軍とお供の者が鷹狩の帰りにこの寺に立ち寄られた。
ちょうどその時、80歳になろうかという老僧が庭で接ぎ木をしていた。
将軍が「何をしているのか?」と聞いた。
老僧は「接ぎ木をしています」と答えた。
すると将軍は笑って言った。
「あなたは年老いているので、今、接ぎ木をしても、この木が大きくなるまで、命が続いているかどうかはわからないだろう。だから、そのように心を込めてやる必要はあるまい」
これに対して、老僧は答えた。
「よく考えてみてください。今、接ぎ木をしておけば、後世の代になってどれもが大きく育っているでしょう。そうすれば、林も茂り、寺も何とかやっていけるでしょう。私は寺のためを考えてやっているのです。決して私一代のことだけを考えてやってるのではありません」
これを聞いた将軍は「老僧が申すことはまことであり、もっともなことだ」と感心された。
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