三つの願いで忘れ去られた心
ある村に貧しいけれど謙虚でまじめに暮らしている夫婦がいた。
その夫婦の元に預言者エリジャが貧しい身なりで現れた。
エリジャが一杯の水を乞うたところ、その夫婦は「さぞかしお困りでしょう。お茶と一緒にパンをぜひ食べていってください。よければ今夜の夕食もいかがですか?」と家に招き入れた。
そして、夕食には可能な限りの料理を作ってエリジャをもてなした。
夕食の席で預言者エリじゃはその村人夫婦に「お礼として3つの願いを叶えましょう」と言った。
夫婦は喜んで「家があまりにも狭く小さいのでできれば大きい家に住みたいです。また服装もあまりにも貧しいので立派な服が着たいです。それに貧乏で暮らしが大変なので金貨も欲しいです。」といった。
翌日夫婦が目を覚ましてみると、自分たちの住んでる家はみすぼらしい小屋から広々とした庭に囲まれた大豪邸に変わっていた。着ている服はすべて豪華な衣装に、そしてあり余る金貨が机の上に置かれており、エリジャの姿は消えていた。
3年後、預言者エリじゃはまたその村に戻ってきた。
今度も非常に貧しい姿だった。
そしてあの村人夫婦を訪ねると、家には高い塀が張り巡らされて、門番が番犬を連れていた。
エリジャが「一杯の水をください」というと、この門番は「お前のような者にやる水はない」といって犬をけしかけようとした。
犬の吠える声を聞いて出てきた家の主人はエリジョの貧しい姿を一目見ると、「さっさと立ち去るがよい」と言って、くるりと背を向けて家の中に入ってしまった。
エリジャは「金持ちになると、貧しい者への配慮をすっかり忘れてしまった。貧しい時には優しい心を持っていたのに何ということか。」というや否や、一度は叶えた望み3つを全て取り上げてしまった。
翌朝起きると、村人夫婦はまた小さい小屋にボロ着をまとって、金貨一枚もない生活に戻ってしまった。
その後も夫婦は生涯貧しいままだった。
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