シンガポールのラッフルズホテルを訪れて。愛されてる場所のすごみ
「まず最初に、ラッフルズホテルに行きなさい。そしてそのあとにシンガポールを見て」と、故エリザベス女王が王子におっしゃったそうです。女王がそれほどまでにお好みだった場所、ラッフルズホテルを、シンガポールの旅行中に訪れました。
全てがまばゆかった。
都会の中、ひっそりと佇むラッフルズホテルの芝生の庭園と、清らかに差し込む光。伝統的なコロニアル調の建物のバルコニーを歩くときのなんとも言えない静謐さと晴れやかさ。どこをとってみても、キリッとしているのは何故だろう?この心地よさはどこからくるのだろう?滞在中は、その謎解きをしているような気持ちで過ごすことに。
元々は中国人のお金持ちの個人所有の建物だったそうです。(まるで映画、クレイジーリッチの世界…!)戦時中は日本軍により占領されたという負の歴史の舞台でもありました。ツアーに参加した際には「これは占領時に、地面に隠した調度品だよ」と、ここかしこに、歴史を生き延びてきたアンティークたちが、凛とした佇まいで置かれていました。
一方で、感じたのは人々に愛されて、憧れられる場所の矜持と思いやり。
隅々まで手が届き、働いている人も胸にプライドがあり、訪れる人も丁寧に身支度をして、楽しみにやってくるという、特別感や高揚感。
ふと、少し前に観た映画「すずめの戸締り」を思い出しました。映画は、廃墟となってしまった場所にある扉から災いが起き、その扉を閉めに旅をするストーリーでした。つまり、もう愛されていない、人の怨念みたいなものが残っている場所が舞台だったのです。そちらとは真逆の、溢れるばかりの清々しさ。歴史を重ねながらも、今なお愛されている場所の凄みを感じたのです。
友人から教わった言葉で、イヤシロチというものがあります。太古から日本人はそのような場所に神社を建てたりしてきたそうで、「心地良いな、安心するな」という空間のこと。まさに、こちらはイヤシロチそのものでした。
・バルコニーから外を眺めながらお酒を飲むぼーっとする時間が何より良かったという父。
・プールに入り、ここで犬かき泳ぎができるようになった(笑)2歳の息子。
・「月と六ペンス」を読み、サマセットモームの足跡を辿るのが何より楽しみだった私。(サマセットモームが飲んでいたバー「Writers Bar」、原稿を書いていたという庭、お気に入りの部屋だった場所もありました。)
と、思い思いにステイを楽しみました。
思い返せば、訪ねた場所、それがホテルでなくても誰かの住居だとしても、心に残っているのは、清潔で、もので溢れていなくて、統一感があり、日当たりが良くて、家の場合はその場所に合ったその人らしさを感じるものがあるところ、でした。
ラッフルズを訪れ、自分の暮らしをイヤシロチにするにはどうしたら良いだろう?自分の暮らしで良くできるところはないか?
そんなふうに、ヒントをもらい、旅を生活に落とし込むこと。
素敵な場所を訪れると、感じることや気付きがあるから、訪れる前と後では少しだけ違った自分になれる。そんな心の機微に敏感になって、日々過ごしていきたいと改めて思いました。そんなことが、旅の醍醐味なのかもしれません。
最後に。
実は、今回の滞在は家族にお祝いごとがあり、ケーキを注文したかったのです。
息子は砂糖不耐性で、砂糖を避けているのですが、ホテルの人に相談したら、ここのケーキがいいよと教えてくれました。いつも私の作る真っ黒な(笑)ケーキしか食べたことなかった息子はとっても嬉しそう。(ケーキはDelcie’sというお店のもの)
アレルギー対応の質問をする際には、ためらいや引け目を感じてしまうことがあったりもするれど、今回ホテル側は快く、さらに、探してたもの以上の答えをくれるという、隅々までパーフェクトなサービスも、このホテルならではなのかなと思い、ここに記しておきます。