「小林家住宅モノレール」
モノレールという名前の想像を超えていました。
私の家から車で1時間もかからない所に、東京の秘境と言われる檜原村(ひのはらむら)という所があります。
地図上に「小林家住宅モノレール」と見つけて気になっていました。
檜原村にはよくドライブに出かけるのですが、先日ついにナビの行き先にその名前を入れました。
車はグングン山奥に導かれ、バス終点も通り過ぎ、道も細くなり心細くなった頃、視界が開け駐車場と新築っぽい木造の公衆トイレが現れます。ほっとして車から出ると、山の木立の涼しい風が迎えてくれました。
谷にかかった橋の上に「小林家住宅モノレール駅」という文字。そしてそこには「最終14時」という張り紙がありました。
5分ほど過ぎていたし、得体の知れない乗り物に乗れる気もしなかったので、写真を撮って帰ろうと思いました。
すると中学生くらいの2人の女の子を連れた老夫婦がやってきて予約してるとのこと。
ほどなく橋向こうの山から降りてきたモノレールと呼ばれる乗り物は、デパートの屋上の子供電車のようでした。
そんなこんなで私たちは、ラッキーにもアバウトな最終便に乗ることができたのです。
標高750メートルの山頂まで、150メートルをほぼ一直線に登る最大傾斜45度の乗り物は、資材を運ぶために作られたものを人間用に改良したそうです。
重量の計算とかちゃんとしてるのだろうか…
座った椅子の背中に思い切りGを感じながら、大人6人を乗せた子供電車は、歩く速度で傾斜をぐんぐん登っていきます。
ケーブルもなさそうだし、確かにレールを抱えたモノレール。
動力は…とかいろいろ不安になって、詳しそうな顔した旦那に聞いてみても納得のいく答えが返ってこなかったので、最悪の事態を想定する私の中で、子供電車はインディジョーンズのトロッコに変わっていました。
慣れてきた頃まわりを見ると、下界の暑さとは打って変わって、清々しい木々の中を進む乗り物は、そこいらの遊園地では味わえない高揚感と爽快感があったのです✨
山頂の開けた土地には、どっしりとした茅葺の古民家が観光用に開放されていて、案内のお婆さんが丁寧に説明してくれました。
なんでも炭焼きを生業とする小林さんというおじいさんのお宅で、年老いて数年前にここを引き払い町に越されたそうです。
保存が良く作りもしっかりしていたこの家は、山岳民族の暮らしを知る場所として、国の重要文化財に指定されて観光用に整備されたということでした。
重厚な柱と梁に支えられた民家は、囲炉裏やかまどがあって、昔の人々の生活を教えてくれます。
家の裏手の斜面には紫ツツジの木が一面に植えられ、おばさんは春にもう一度来たらいいと言いました。
下りモノレールは後ろ向きで降りていきます。国の予算と聞いたせいかすっかり気持ちも大きくなっていました。
写真を撮り合ったりずっと行動を共にさせていただいたご家族。お孫さんに「どうだった?」と聞いた時、「楽しかった!また来たい‼️」と答えてもらった時のおじいちゃんの嬉しそうな顔。
難しい年頃のお孫さんの返事に、私たちもホッと胸を撫で下ろしました。