青
今日も青を食べた。 私にとっての青は学生時代の燦々たる煌めきを表すものではなく、命が誕生した源である海なんて似ても似つかない。 私にとっての青って何?陰鬱な気持ちになりながらもまた、青を食べた。
気持ちではやめようと思っているのに何をやってもやめられない。物心ついた時からずっと変わらない私の癖。 元来全ての赤ん坊はとりあえずものを口に入れる習慣がある。例に漏れず私もその口で、なんとその場にあった絵の具をなめてしまったのだ! いつでも優しかった両親に何の怨みも無いが、唯一怒りを見出すならば趣味に絵を描くことだろう。 三つ子の魂百までとは言うけれど、もう三十路にもなるのにこんな癖が抜けないなんて… 。私は悲しいことがあったときによく青を食べてしまう。
お菓子がもらえなかったとき、悲しくなって青を食べた。その横にあった赤も食べてみた。違う。変な味がする。口当たりも悪いし、においも変だ。第一こんなもの食べてしまったらおなかを壊してしまうかもしれない。赤なんて食べるんじゃなかった。
始めて母に叱られたとき、初恋の子が遠くへ行ってしまったとき、お気に入りのシャーペンを隠されたとき。私は青を食べた。 両親は知っていたのかもしれない。そういう病院には何回か行ったことがある。でも無理にやめろとは言わなかったしそんな両親も私が中学生になるころ事故で他界してしまった。あのときの青はどうにも味が薄かった気がする。
その後私は施設に入って一人で生きてきた。それから一度たりとも泣かなかった。私には青があったし、青があると思えることで何でも我慢できた。
今日も青を食べた。明日も青を食べるだろうし、1年後だって、5年後だって青を食べる。私は青の中にいて青が私なのだ。私以外が青だなんて言わせない。