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北谷馨の質問知恵袋 「混同」に関する質問

〔Q〕 所有者と1番抵当権者が同一人となった場合でも、2番抵当権が設定されているときは、「混同例外」として1番抵当権は消滅しないと思います。しかし、このようなときでも1番抵当権が消滅するという問題がありました。これはどのように考えたらいいでしょうか。

混同を考えるときは、「物権混同」と「債権混同」を区別する必要があります。
 
「物権混同」とは、所有者(設定者)と抵当権者が同一人となった場合に、抵当権が混同で消滅するというものです。所有者と地上権者が同一人となった場合に地上権が混同で消滅するのも物権混同です。
「債権混同」とは、債権者と債務者が同一人となった場合に、債権が混同で消滅するというものです。例えばAがAに100万円の貸金債権を有していても意味がないので、100万円の貸金債権は債権混同で消滅します。
 
それを踏まえて、以下の登記記録を前提に、具体的な事例を見ていきます。
 

(甲土地)
甲区1番 所有者A
乙区1番 1番抵当権設定 抵当権者B 債務者A
乙区2番 2番抵当権設定 抵当権者C 債務者X

【事例1】令和6年1月26日、Aは、甲土地をBに売った。
⇒所有者はBとなり、1番抵当権者もBであるため、1番抵当権に「物権混同」が生じることになりそうです。
しかし、2番抵当権が設定されている場合には、物権混同の例外にあたり、1番抵当権は消滅しません。これは、将来2番抵当権が実行されると、Bは所有権を失ってしまいますが、1番抵当権が残っていれば、2番抵当権者よりも優先して配当を受けられるという実益が残っているからです。
なお、この後、令和6年3月1日に、2番抵当権の債務者Xが被担保債権の全額を弁済したらどうなるでしょうか。これにより、2番抵当権は消滅し、「混同例外」がなくなるので、このタイミングで1番抵当権は混同により消滅することになります(令和6年3月1日混同)。
「2番抵当権の被担保債権が弁済されたことで、1番抵当権も消滅する」ことになるので、記述式で出題されれば差がつく論点になります。
 
【事例2】令和6年1月26日、Aは死亡した。Aの相続人はBのみである。
⇒所有者はBとなり、1番抵当権者もBであるため、1番抵当権に「物権混同」が生じることになりそうなところ、2番抵当権が設定されているため物権混同の例外にあたることは、【事例1】で検討したとおりです。
しかし今回は「相続」なので、甲土地だけでなく、「債務」もAからBに承継されることになります。そうすると、1番抵当権の被担保債権は、「BのBに対する債権」になります。そうすると、当該債権は「債権混同」で消滅します。
被担保債権が「債権混同」によって消滅した以上、1番抵当権も付従性によって消滅することになります。
つまり、1番抵当権は
・2番抵当権の存在により「物権混同」は生じない。
・しかし「債権混同」により被担保債権が消滅し、付従性によって抵当権は消滅する。

ということです。
「抵当権者」と「所有者」だけでなく、「債務者」にも注意するというのがポイントです。
 



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