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私文書における印鑑証明書添付の意味

添付情報が私文書である場合、そこに押印された印鑑についての印鑑証明書の添付を要するとする制度は、2段の推定を利用して添付情報である私文書の形式的証拠力を確保するための工夫である。

私文書の成立の真正は、作成者本人又は代理人の署名又は押印があれば,文書全体について法律上推定される(民訴228Ⅳ)。しかし、この場合の署名又は押印は、行為者の意思に基づくものを意味し、その立証が困難であるため、判例は、文書中の印影が本人又は代理人の印章で顕出された事実があれば、反証のない限り、意思に基づく押印と事実上推定している(最判昭39.5.12)。

これにより、添付情報となる私文書の押印が作成者が使用している印鑑によることを、印鑑証明書により証明することで1段目の事実上の事実推定を受け、それを前提として2段目の法律上の事実推定により形式的証拠力を確保するものである。

ただし、添付情報でも、登記原因証明情報については、例外的に私文書であっても、印鑑証明書の添付を要しない。これは、旧法時代からの伝統によるものである。

伊藤塾司法書士試験科 講師 蛭町浩


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