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連想~関西スーパーとオーケーとH2O

1 司法書士試験と連想力

司法書士試験は、連想力の試験だと言われています。今日は、先週より話題になっている関西スーパーとH2Oの経営統合の話から、連想を広げて生きたいと思います。

関西スーパーの統合手続き差し止め 神戸地裁仮処分決定(日本経済新聞社)

2 株式交換の決議要件

「株式交換議案が可決に必要な3分の2をわずかに上回る66.68%の賛成で承認された。」というところから、まず最初に連想の対象になるのは、株式交換の決議要件です。株式交換完全親会社における株式交換の決議要件は、株主総会の特別決議である点を確認しておきましょう(会社795条1項、309条2項12号)。その際に、他の組織再編行為の決議要件についても確認しておくと、さらに記憶に残ります。

3 株式交換の差し止め

「12月1日に予定されていた株式交換は一旦差し止められる。」とあることから、株式交換の差し止めが連想ポイントです。ここでは、株式交換の差し止めの要件を確認しておきましょう。略式組織再編の場合のみ、組織再編の対価の著しい不当性も差し止め理由となっている点が、試験対策的にはポイントです。

会社法
(吸収合併等をやめることの請求)
第七百九十六条の二 次に掲げる場合において、存続株式会社等の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、存続株式会社等の株主は、存続株式会社等に対し、吸収合併等をやめることを請求することができる。ただし、前条第二項本文に規定する場合(第七百九十五条第二項各号に掲げる場合及び前条第一項ただし書又は第三項に規定する場合を除く。)は、この限りでない。
一 当該吸収合併等が法令又は定款に違反する場合
二 前条第一項本文に規定する場合において、第七百四十九条第一項第二号若しくは第三号、第七百五十八条第四号又は第七百六十八条第一項第二号若しくは第三号に掲げる事項が存続株式会社等又は消滅会社等の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当であるとき。


4 仮処分

会社法上の差し止めの訴えは、通常仮処分という形で顕在化することが多く、実際「経営統合の手続きを差し止める仮処分決定」というところから、仮処分が連想ポイントとなります。この場合の仮処分は、仮の地位を定める仮処分となります。申立ての際に明らかにすべき事項、管轄、疎明や審理の方式、解放金の有無等の手続について確認しておきましょう。その際は、仮差押や係争物に関する仮処分の手続との違いもあわせておさえておけば、理解が深まります。

民事保全法
(仮処分命令の必要性等)
第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。
4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

5 保全異議、保全抗告

「関西スーパーは決定を不服として、神戸地裁に異議を申し立てる予定だ。」とあり、それが認められない場合保全抗告を申し立てるでしょうから、ここでは保全異議と保全抗告が連想ポイントとなります。それぞれ、申し立てができるのが誰で、期間はいつまでなのかという手続の異同を整理しておさえておきましょう。

民事保全法
(保全異議の申立て)
第二十六条 保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。

(保全抗告)
第四十一条 保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判(第三十三条(前条第一項において準用する場合を含む。)の規定による裁判を含む。)に対しては、その送達を受けた日から二週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない。
2 原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない。
3 保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない。
4 第十六条本文、第十七条並びに第三十二条第二項及び第三項の規定は保全抗告についての決定について、第二十七条第一項、第四項及び第五項、第二十九条、第三十一条並びに第三十三条の規定は保全抗告に関する裁判について、民事訴訟法第三百四十九条の規定は保全抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。
5 前項において準用する第二十七条第一項の規定による裁判は、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。

以上、関西スーパーとH2Oの経営統合の話から、司法書士試験に関連するトピックをまとめてみました。

伊藤塾 司法書士試験科スタッフ 髙橋 知規

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