「4倍ルール」の3つの罠
「公開会社では、発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍を超えてはならない。」
おそらく、多くの受験生は上記のように記憶していると思います。この4倍ルールについて、勘違いされがちな「3つの罠」をご紹介します。
その1 逆に考えてしまう。
冷静に考えれば間違えることはないはずですが、慌てて逆に考えてしまう場合があります。
発行済株式総数2000株・発行可能株式総数8000株の公開会社で、発行済株式総数が500株増えることは可能でしょうか。
500株増えると、発行済株式総数は2500株になります。
「発行済株式総数2500株・発行可能株式総数8000株だから、4倍無い!だから4倍ルールに抵触しまう!」
落ち着いて考えれば、そんなはずはないですね。発行可能株式総数が8000株であれば、発行済株式総数は8000株まで増やせます。それが発行可能株式総数の意味のはずです。
「発行済株式総数が2000株であれば、発行可能株式総数は(2000株以上)8000株以下」
というのが4倍ルールです。
混乱したときは、
・発行可能と発行済が離れすぎるのはダメ(4倍を超えて離れるとダメ)
・発行可能と発行済が近づくのは問題ない(同じでもいい)
と考えましょう。
その2 発行可能「種類」株式総数に4倍ルールはない。
これも冷静に考えれば当然のことです。
そもそも種類株式については、「発行済0」でも良いわけですから、
「A種類株式の発行可能『種類』株式総数は、A種類株式の発行済『種類』株式総数の4倍を超えてはならない。」というようなルールはありません。
A種類株式の発行可能は1万株・発行済は0株(現に発行していない)ということでも問題ありません。
その3
「株式の消却」では4倍ルールの適用はない。
発行済株式総数2000株・発行可能株式総数8000株の公開会社で、発行可能株式総数を1万株に増やすことは、4倍ルールに抵触するためできません。
しかし、自己株式を1000株消却して、発行済株式総数1000株・発行可能株式総数8000株とすることについては、制限されていません。したがって、株式の消却によって、「4倍」を超えてしまうことはあるのです。これは令和4年の記述式でも問われた論点です。
最後に、4倍ルールの制限がある場合を整理しておきます。
以下の①~④の場合、発行可能株式総数は、発行済株式の総数の4倍を超えることができません
①株式会社(公開会社)を設立する場合(37条3項)。
* 新設合併等(新設合併・新設分割・株式移転)も同様(814条1項,37条3項)。
② 公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合(113条3項1号)
③ 非公開会社が定款を変更して公開会社となる場合(113条3項2号)
④ 公開会社が株式の併合をする場合(180条3項)
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