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『商業登記ハンドブック(第5版)』と司法書士試験
司法書士試験受験生の皆さん、こんにちは。
商法・会社法・商業登記法の教材作成者の杉山です。
本年1月初旬、『商業登記ハンドブック(第5版)』が出版されました。
本書は、平成17年制定会社法(及び商業登記法)が施行された後の平成19年6月に初版が出版されて以来版を重ね、今回で第5版となりました。現会社法下における商業登記実務に関する書籍のうち、最も有用であり、かつ、最も権威のあるものといってよいでしょう。
著者は、平成17年制定会社法(及び商業登記法)における商業登記法の立案担当者であった松井信憲先生(現法務省大臣官房司法法制部長)です。
今回、第5版の発売日にさっそく購入し、改めて通読してみました。全体としては、概ね、第4版の内容をベースとして、それに最新の法改正等の情報を追加してアップデートしたものとなっています。
司法書士の実務家目線でいうと、商業登記実務を行う際に不明点等があれば、ほぼ必ず本書の記載を確認することとなります。そして、そのような場合、本書は、「痒い所に手が届く」懇切丁寧な解説によって、悩める司法書士にとっての「救いの神」となっています。
法務局においても、概ね本書の記載に従った商業登記の審査が行われている(あるいは、本書の記載に矛盾するような商業登記の審査は行われていない)ようであり、登記申請の内容について法務局と議論(折衝)をする際には、本書の記載がその共通認識のベースとなっています。
よく、冗談で「無人島で商業登記実務を行うということになって、一冊だけ商業登記に関する書籍を持参することができるとしたら、迷わず『商業登記ハンドブック』を選ぶ」というほど(?)、商業登記実務を行う際の必須の文献となっています。
また、司法書士試験受験用の教材作成者目線でいうと、例えば、公開模試等の作成のために商業登記法の出題の予想をする際にも、本書にどのような記載がされているか、また、どのような事項が重要視されているか等を勘案しつつ行っています。
実際に司法書士試験において出題された事項と本書に記載されている事項とを比較してみると、あくまで個人的な感想ではありますが、試験委員が商業登記法の問題を作成する際に、大いに本書を参考にしているのではないかとも感じられるところです。
このように、本書は、司法書士実務にも司法書士試験受験用教材作成にも「一粒で二度おいしい」ものですが、受験生の皆さんには、受験勉強として本書を熟読するというようなことはお勧めいたしません。
受験生の皆さんには、まずは現在の学習計画に従って取り組んでいる受験用の教材で学習し、本試験を受験していただき、例えば、本試験後の時間に余裕のある際にでも、本書をお読みいただければ、試験合格後に司法書士として商業登記実務を行う自分の姿をイメージすることができるのではないでしょうか。
伊藤塾 司法書士試験科 杉山潤一
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