資本金の額の計上に関する書面
今回のテーマは「資本金の額の計上に関する書面」です。
択一式・記述式ともによく問われる書面ですが、その要否が混乱しがちなので、整理しておきましょう。
なお、例えば吸収合併であれば「資本金の額が会社法445条5項の規定に従って計上されたことを証する書面」のように、異なった表現がされているものもありますが、答案に記載する際は「資本金の額の計上に関する書面」で統一して構いません。
「資本金の額の計上に関する書面」は、原則として、資本金の額の変更登記や、設立登記を申請する際に添付します。
「必要」が原則なので、「不要」となる例外を注意して覚えていきましょう。
1-1 発起設立・募集設立 →金銭出資のみの場合は不要
これは、100万円の出資があったのであれば、資本金の額の上限が100万円であることは明らかであり、別途証明する必要性がないからです。
なお、「2 募集株式の発行」では、金銭出資のみでも「必要」です。これは、自己株式の処分が含まれる可能性があり、計算を要する場合があるからです(設立時には自己株式の処分はない)。
5 準備金の資本金への組入れ →不要
6 剰余金の資本金への組入れ →不要
これは、商業登記法69条において、「減少に係る準備金(剰余金)が計上されていたことを証する書面」の添付が要求されているところ、当該書面が「資本金の額の計上に関する書面」の役割を兼ねることになるからです。
7 資本金の額の減少 →不要
これは、資本金の額はマイナスにならない限り自由に(必要な手続を経れば)減少できるからです。
15-1 組織変更合同会社から株式会社へ組織変更する場合→不要
これは、組織変更をしても資本金の額が増減することはなく、合同会社の頃から資本金の額は登記されているからです。
なお、合名会社又は合資会社から株式会社へ組織変更する場合は、もともと資本金の額は登記されていなかったので、資本金の額の計上に関する書面が必要になります。
16 特例有限会社の商号変更による設立 →不要
これは、商号変更(特例有限会社から通常の株式会社への移行)をしても資本金の額が増減することはなく、特例有限会社の頃から資本金の額は登記されているからです。
※なお、移行と同時に募集株式の発行の効力が生じる場合等、登記事項の変更が生じる場合は、当該変更に関する書面(資本金の額の計上に関する書面を含む)が必要になります。
1 設立 金銭出資のみの場合 →不要
これは、100万円の出資があったのであれば、資本金の額の上限が100万円であることは明らかであり、別途証明する必要性がないからです。
2-1 社員が出資の履行をした場合 金銭出資のみの場合 →不要
これは、100万円の出資があったのであれば、増加する資本金の額の上限が100万円であることは明らかであり、別途証明する必要性がないからです。なお、株式会社の「募集株式の発行」の場合とは異なり、「自己株式の処分が含まれる可能性がある」というような問題はありません。
10 組織変更による設立 →不要
これは、組織変更をしても資本金の額が増減することはなく、株式会社の頃から資本金の額は登記されているからです。
なお、「必要」なもののうち、株式会社と比較して以下の2つに注意が必要です。
3 その他の資本金の額の増加 →必要
これは、例えば「剰余金の資本金への組入れ」などです。
株式会社では、商業登記法69条において、「減少に係る剰余金が計上されていたことを証する書面」の添付が要求されていましたが、合同会社ではこれに対応する規定はないので、「資本金の額の計上に関する書面」を添付することになります。
4 資本金の額の減少 →必要
これは、細かく突っ込む必要はありませんが、合同会社の場合、資本金の額は自由に減少できるわけではなく「一定の場合に、一定の限度で減少できる」という縛りがあります。そのため、減少額を証する「資本金の額の計上に関する書面」の添付を要します。