
答練を受けただけで満足するなよ!!
令和5年度(2023年度)司法書士試験合格者の谷口遼馬さんに、答練の利用法を語っていただきました。
こんにちは。3度目くらいの登場、谷ロです。
1月からはどの受験指導校であっても、答練が始まる時期です。しかもなぜか高速で過ぎて行ってしまい、ちゃんと勉強できたか不安になる時期でもありますよね。
このnoteでは、答練を受けて不安になった方に向けて、答練の受け方、使い方について述べていきます。
参考になる点は盗み、ならない点は無視して読んでみてください。
1 はじめに
伊藤塾では1月から択一実戦力養成答練が始まります。昨年の悔しい気持ちを抱えて、または次の本試験で一発合格を目指して一生懸命勉強した昨年末までの成果が、“一旦”でるのが、1月からの答練です。ラストスパートをかける直前期に向け、基礎を固める重要な期間に突入していくわけです。
そんな重要な時期に始まる答練を受ける前に、きっとこう思うでしょう。
「よっしゃ、いっちょ答練で高得点を取ったるで!!」と。
そして、とくに勉強を始めて日が浅い方は、いざ答練を受けた後こう思うはずです。
「あれ、全く点数が取れなかったぞ……」
または、比較的うまくいった方はこう思うでしょう。
「あれ、今年いけるな……」
おそらく、どちらかの感想を抱いた方が多いのではないでしょうか。自分の実力が足りなさに気づいたり、十分に実力がついていると自信をつけたり、自分の現在地を客観的に把握することは、とても大事です。
しかし!!
結果が良かったからと、これで終わりにしてはいけません。そして、実力が足りないからと丸暗記に走ってもいけません。
その両方を経験した私からの忠告と助言をいくつか述べたいと思います。
2「あれ、全く点数が取れなかったぞ……」という方へ
私が初めて本試験を本気で受けた年は、答練を解き、答練で答えられなかった問題の解説を読み、結論を覚え、直前期はとにかく答練の問題を回していました。
その結果、全く合格に手が届かず失敗しました。
これは、何が失敗の原因だったのでしょうか。
原因その1 : 答練の問題を解けるようになれば、合格できると思っていたこと
答練の使い方を誤っていたということです。
かくいう私も、伊藤塾の択一実戦力養成答練の問題を何回も回しその問題を解説できるくらいまで仕上げると本試験に合格するものだと思っていました。
しかしそうではありません。
答練とは、優先順位と苦手分野(学習の足りていない分野)を発見するツールです。
つまり、
①完全な理解が必要な分野(いわゆるAランク)、論点や結論を覚えておけば足りる又は後回しをして良いもの(いわゆるBランク)、捨てても問題のない論点(いわゆるCランク)の把握をする(優先順位の把握)。
②それまでの学習度合いに応じて、それぞれを残りの数か月の間にどれくらいの時間を割けばよいかを把握する(苦手分野の把握)。
解説や講義において、①については説明されます。そしてその説明に則り、間違えてしまった問題や時間のかかってしまった問題を見直し、そもそもその分野が頭の中で理解できていなかったのか、それともその分野は理解していたが、細かい知識だったためその条文までは押さえていないだけなのかを把握します。
そして一番大事なことが、
③把握した苦手分野の進捗具合に応じて、テキストと過去問を回すこと。
これをしなければ、答練の意味が全くありません。たまたま答練の問題がそのまま出題されれば良いですが、基本的にそのまま出題されることはありません。答練で覚えた知識を違う問題で解けるようにするためには、テキストの該当箇所で趣旨や周辺知識を押さえたうえで、過去問を解く必要があります。
したがって、答練は、
①優先順位を把握し、
②苦手分野や学習の足りていない分野を把握し、
③①と②で発見した弱点をテキストや過去問の復習につなげること
が目的といえます。
断じて、答練を周回すれば良いというものではありません。それでは苦手分野が苦手分野のままになるだけでなく、過去問や模試の問題を覚えるだけになり、結果本試験の初めて見る問題に太刀打ちできないということになりかねません。
初学者の方で、答練の使い方がわからないという方は、一旦解説講義を聞き、ランク付けをしたうえで、間違えた問題の優先順位の高い方からテキストと過去問を一周解いてみることをお勧めします。そうすると、その分野が苦手だったのか、その問題が細かい知識だったのかがわかるはずです。
なお、テキストや過去問の回し方については、過去のnoteで詳しく書いているので、わからない方は調べてみてください。
原因その2 : 総整理表を丸暗記する又は理解してから覚えようとしたこと
答練を解説ページの後ろには、どの受験指導校であっても、まとめ表(伊藤塾では総整理表)がついています。
そのページを丸暗記すれば問題を解ける!!と思っている方、いますよね。違いますよ。
総整理表は丸暗記するだけでは、問題で使えるようになりません。その表の意味や使い方を知って初めて問題が解けるようになるのです。
なるほど、つまり理解してから表を覚えればよいのか、と思った方、それも違います。
これについては個人差がありますが、総整理表を見て理解してから覚えようと思っている時点で、その分野の理解ができていないのだと思います。なぜなら、本当にその分野の理解ができているならば、その総整理表を見た瞬間にその意味が(完全ではないが)何となく分かります。
少なくとも、総整理表を見て、これはあの分野の表だから、縦列はこれを表していて、横列はこのことで、こういう問題の時に使うんだな、とパッとわかるくらいでないと、暗記しても使えるようにはなりません。
したがって、総整理表を暗記する手順は、
①その分野の基礎的な事項を覚える(理解する)
②その総整理表の意味と使い方を理解する
③覚えないといけないところを総整理表で暗記する
④そして実際に問題を解いて実践する
の順番となり、④の問題が解けなかった場合は、もう一度①から繰り返しましょう。
あくまで、総整理表は暗記と理解の補助的機能を有するものであるので、基礎的な事項を覚えることをしないと何の意味もありません。なので、総整理表を見て暗記に走る前に、その分野の基礎的な事項を覚えることを推奨します。
答練は使い方によって、非常に有益なものになったり、むしろ勉強の邪魔になったりするものです。伊藤塾の択一実戦力養成答練は、使い方を誤らなければ、非常に有益な講座であり、合格する実力に成長させてくれます。
しかし、ただむやみに暗記に走ったりすると、問題が解けないだけでなく、その暗記に費やした時間がただの無駄となり、高額な講座の受講料が水の泡と化します。
正しい答練の使い方をすれば必ず合格する実力が付きます。答練の結果に一喜一憂するのではなく、今はとにかく踏ん張って目の前の課題を淡々とこなしていけば、気づいたら合格しています。頑張りましょう。
3「あれ、今年いけるな……」と思った方へ
この時期の答練、あまり問題が解けないのが普通だと思います。そんな中、ポジティブな感想持った方は、“現時点で”かなり合格に近い実力を持っています。
ちなみに、私は合格する一年前の模試の時にそう思っていました。そして迎えた本試験は、1.5点足りず不合格でした。
今でも忘れません。商業登記法の記述式問題で、“取”得条項付株式のことを“条”得条項付株式と書いたことを……
何が言いたいかというと、この時期に今年行けるなと思い勉強に力が入らなくなった結果、ケアレスミスが非常に多くなり、“本試験”の時にその実力を発揮できなかったのです。
つまり、慢心せず、やるべきことを淡々とこなすことを止めるな、ということです。言わずもがなですが、これが一番大切です。止めた人から落ちていくので、これを見ているあなたは私の二の舞を演じないようにしてください。
ちなみに、適度な休息は大事なので、気を張り詰めすぎないようにもしましょう。
私は本試験の数週間前に、米津玄師さんとBUMP OF CHICKEN のコンサートに行きました。これが良い息抜きになったのかなと思いました。趣味は大事です。一日だけ直前期に時間をとって何かするというのは良いかもしれないですね。
「夢ならばどれほどよかったでしょう」なんてことにならないように、たまに午前二時フミキリに望遠鏡を担いでって見えないものを見ようとするくらいがいいのかもしれません。雑談ですが、BUMP OF CHICKEN の「窓の中から」という曲を聴いて私は勇気づけられました。もし、直前期に悩んだり、今年もダメかもしれないなんてネガティブな気持ちになったら、ぜひ聴いてみてください。泣けます。
それと、本試験前日の夜にサカナクションの「アイデンティティ」を聴くことはお勧めしません。本試験中に悩むたびに、「どーしてーーー」というフレーズが頭から離れなくなります(実体験)。知らない方は試してみてください。良い曲なので。
4 まとめ
そもそも、合格できない理由の99%は、覚えるべきこと(基礎的な事項)を覚えていないからです。地道な道ではありますが、結果的にそれが一番の近道です。あと数か月勉強すればその暗記作業から解放されるので、今はとにかく踏ん張って、走り抜きましょう。
大丈夫です。この暗記地獄よりも、筆記試験から合格発表までの3か月の方が1億倍辛いです。私は結果的に全体の16位で合格しましたが、それでも当日の結果を見るまでは落ちると思っていました。みんなこんなものです。7月から10月までのこの地獄を味わえるように、頑張りましょう。応援しています。
谷口遼馬さんの過去の記事はこちら
② 「テキストを読み込みましょう」を文字通りに解釈するなよ!!!
