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登記制度におけるローマ法の影響の有無

我が国の民法は,ボアソナードがフランス民法に独自の見解を加えて作成した旧民法を,法典論争の結果,当時立法過程にあったドイツ民法草案を参考に改正して作られたものである。したがって,民法を理解するには,フランス法の他,ドイツ法を知ることが有益となる。

また,ドイツ,フランスともにゲルマン民族の一部族であるフランク族が建国したフランク王国を起源とし,両国ともゲルマン法を前提としながら,フランスでは12世紀の中頃からローマ法を継受し,ドイツでは13世紀頃からローマ法を継受してフランス法,ドイツ法が形成された歴史的な経緯がある。したがって,フランス法,ドイツ法を理解するためには,ローマ法を知ることが有益となる。

さて,ローマ法の物的担保は,一般先取特権に相当する一定の債権について債務者の総財産を対象とする「法定一般抵当権」が発達し,特定の不動産を対象とする約定の抵当権が発展しなかった。そのため抵当権を契機として登記制度が作られることはなかった。また,ローマでは,当初,イタリア半島の土地については,課税がされず,その後土地に課税するようになった時期には個人主義の発展が影響し,土地台帳を契機として登記制度が作られることもなかった。このように登記制度については,ローマ法の影響は皆無といってよく,むしろドイツではローマ法の継受により一時登記制度の発展が阻害され,混乱さえ生じた程であった。

ちなみに,ローマ法における土地の譲渡は,「握手行為」という形式を備えなければ効力が生じないとする形式主義から出発し,その後,要求される形式が「法廷譲渡」へと変化し,さらに,古典期以後,公証人により売買契約書を作成し,それを相手方に交付する「書面の引渡」へと変化していったが,いずれも証拠保全方法に過ぎず,公示の意味合いをもつものではない。

伊藤塾司法書士試験科 講師 蛭町浩

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