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北谷馨の質問知恵袋 「承諾と原因日付」に関する質問

今回は、「承諾と原因日付」に関する質問です。

ここでは、「登記原因についての第三者の許可・同意・承諾」「登記上の利害関係を有する第三者の承諾」の区別が重要となります。

「登記原因についての第三者の許可・同意・承諾」
→実体法を根拠として、承諾・許可・同意が要求されている場合に提供する。

 
実体法を根拠とするということは、実体上の効力発生要件となる場合が多いため、登記原因日付に影響を与えるケースが多いです。
農地法所定の許可や、根抵当権の全部譲渡等に対する根抵当権設定者の承諾など、実体上の要件とされているものです。

「登記上の利害関係を有する第三者の承諾」

こちらは原因日付に影響はありません。
例えば、実体上無効な抵当権設定契約に基づいて抵当権設定登記がされたので、抵当権抹消登記を申請するという場合、転抵当の登記がされているときは、転抵当権者の承諾が必要になります。
これは、不動産登記法68条で要求されている承諾であり、実体上要求されるものではありません。
転抵当権者が承諾しようがしまいが、実体上無効なものは無効です。
ただ、転抵当権者が全く関与しないところでその登記が抹消されるのはまずいので、手続上承諾が要求されています。
この承諾は、「(抵当権抹消)登記をすること」についての承諾なので、原因日付には影響がありません。

 以下、代表的な「原因日付に影響を与えるもの・与えないもの」を挙げておきました。
根拠条文を見ると、実体法を根拠として承諾・許可・同意が要求されていることが分かると思います。

・登記原因日付に影響を与えるもの

① 区分地上権設定に対する、地上権者等の承諾(民269の2Ⅱ)
② 順位変更(民374Ⅰ)
③ 根抵当権の全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡に対する根抵当権設定者の承諾(民398の12 Ⅰ,Ⅱ,398の13)
④ 根抵当権の分割譲渡に対する利害関係人(転抵当権者等)の承諾(民398の12Ⅲ)
⑤ 根抵当権の共有者の権利移転に対する他の共有者の同意(民398の14Ⅱ)
⑥ 根抵当権の極度額の変更(民398の5)
⑦ 農地法の許可
⑧ 裁判所の許可(※)
※ 基本的に裁判所の許可は日付に影響あり、と考えて差し支えありません。不在者財産管理人・相続財産清算人の処分行為に対する家庭裁判所の許可、破産管財人の任意売却に対する裁判所の許可、成年後見人による成年被後見人の居住用不動産についての処分行為に対する家庭裁判所の許可、代表取締役の職務代行者の常務に属さない行為に対する裁判所の許可等。

・登記原因日付に影響を与えないもの

①制限行為能力者の法律行為に対する保護者の同意(民5ⅠⅡ、13ⅠⅡⅣ、17ⅠⅣ)
②利益相反取引についての承認(株主総会決議・取締役会決議等)(会356Ⅰ、365Ⅰ)
③賃借権の譲渡・転貸に対する賃貸人の承諾(民612Ⅰ)


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