2歳児にボタンを留めてもらいながら天井を見つめて自画自賛した話をずらずらと。
しまった!
そう思ったときには時すでに遅しなことが多い。
娘がいろんなものに興味を持ち始めてできることが増えるにつれ、そういう場面を幾度となく経験してきた。例えば、
エレベーターのボタンを押した瞬間、
バスの「次、降ります」を押した瞬間、
改札でパスモをピッってやった瞬間、
保育園の玄関のインターホンを押した瞬間、
保育園を出るとき、オートロックの解除ボタンを押してしまった瞬間、
である。
ハッ!!し、しま……!!!!
と気づいた矢先、
「トトちゃんがしたかったのぉぉぉおおあ゛ーーーー!!(激おこ)」
となるのだ。
で、先日、登園の準備でバタバタしている我が家にて。
時刻は8時50分頃、すなわち家を出なければならない時間。娘の歯磨きだの検温だのその他諸々を済ませ、どたばたとジーパンを履いて、シャツのボタンを留め、よし保育園いくぞー!とリビングにいる娘を呼びに行った瞬間。
ハッ!!し、しま……!!!!
と気づいた。
が、やっぱり時すでに遅しで。
「トトちゃんがボタンやりたーーーい!!」
と、私が着ているシャツのボタンに気づいた娘がすっ飛んできた。
不覚だった。
ボタンを留められるようになってからというもの、「トトちゃんがやりたいリスト」に追加されていたのをすっかり失念していたのだ。
しかも今日は「ぜんぶ」留めたいと言う。
ここにきて!登園の時間がせまっているというのに!もはや遅刻気味だというのに!
だけど娘にはそんなこと関係ない。「やりたい」と思ったらやらないと気が済まない。
エレベーターのボタンやら何やらは「二回目」がないけれど、シャツのボタンは外せばよい。
とにかく穏便に済ませたい私は、ボタンをすべて外し、仰向けに寝転がった。娘が上の方のボタンも留められるように。
そして「おねがいしまーす」と私が言うと、娘は喜んで私の腰あたりによいしょと座り、ボタンを留め始めるのだった。
私は天井を見つめながら、シャツを選んだことをちょっぴり後悔した。
だけど。
いいぞ、このかんじ、と思った。
いいぞ、この余裕。
この子の「やりたい!」という気持ちを尊重しているかんじ。
「いいから!ママがやるから!」「っだー!!早く!保育園遅れる!」などと急かさずに、「まぁ困ったら言ってよ、手伝うからさ」とどしーんと構えている、このかんじ。
自分ナイス!!!!!
そもそも少しくらい保育園に着くのが遅れたところで死ぬわけでもないし。なんでそんなに毎日生き急ぐ必要があるのか。
ああ、いつもこれくらいの余裕を持てたらいいのにな。
なんか頑張ってボタン留めてるし。かわいいな。
小さな指をぎこちなく動かした後、「できたぁ!」と首元以外のボタンをすべて留め終えた娘の顔は笑っていて、達成感に満ちていた。
私も嬉しい。
そんなこんなで時計は9時をまわろうとしていた。
「ぶはっ、時間やばい。トトちゃんありがとね!じゃ、保育園行きましょ!」
「はーい!」
自分の思い通りに何かをさせてもらえたときの娘はとても機嫌がよい。残りの身支度もささっと済ませ、家を出た。
なんだか清々しかった。
—— とはいえ、保育園の日にボタンがついてる服を着るのはもうやめとこ。
そんなことを考えながら、いつもより気持ち早めに保育園へと自転車をとばした。