その日の天使
中島らもさんの文は何でも好きですが、中でもジム・モリスンの"The day's divinity, the day's angel"を訳した「その日の神性、その日の天使」の話が好きです。
1人の人間の一日には、必ず1人「その日の天使」がついているというお話。
普段、普通に生きている人には見えないですが、絶望的な気分の時にだけ形を変えて現れるそうです。
例えば、思い悩んでいる時に職場の先輩から突然ものを頂いたり、ラジオから聞こえてきた歌の言葉に救われたり…
それがその日の天使なんだそうです。
仕事帰り、小雨の中を傘も差さずに自転車で考え事をしていました。
「今月の支払いまだだったな」「あの仕事ポシャりそうだな」「うまくやっていけるかな」…
青信号の横断歩道を渡る寸前、向かい側から猛スピードで左折してくる車が見えました。
『雨で滑りやすくなってるから、安全にいこう』と思い横断歩道の手前でゆるくブレーキをかけました。
しかしそこにはマンホールが。
すべる前輪
ここは落ち着いてハンドルをしっかり握って捌かねば
妙な段差にひっかかり飛び跳ねる後輪
反転する視界
『ああ…
いっそこのまま…
ケガでもして休みが取れたら…』
ハンドルを握りしめたまま縁起でもない事がよぎる中、自転車の前方へダイナミックに躍り出た私は、激しく尻餅つきました。
(まるで…自転車の…筋肉バスターやぁ…)
道ばたで寝転びながら猛烈な恥ずかしさと、笑いが込み上げてきてしまった先日の私の天使でした。
ドロドロにはなったものの痣一つありませんでした。
ダイナミック天使。