FULL PAPER "Quantitative measurement of amorphous grain boundary phase of aluminum nitride ceramics and correlation of microstructure and other physical properties with thermal conductivity"について
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Quantitative measurement of amorphous grain boundary phase of aluminum nitride ceramics and correlation of microstructure and other physical properties with thermal conductivity
J. Ceram. Soc. JAPAN 131 [7] 284-290 2023
メモ
Introductionより
焼結助剤としてY2O3を使用した場合、窒化アルミニウム(AlN)原料粉末の表面酸化物と反応し、液相として焼結を促進するY-Al-O組成物を生成。
焼結後、Y-Al-O組成物粒子および粒界相が形成される。これらは不純物であり、AlNよりも熱伝導率が低いにも関わらず、焼結助剤は熱伝導率を著しく改善する。
粒界相の検出と定量化は難しく、定量分析は行われていない。
XAFSのLCF法(linear combination fitting method)によりアモルファス粒界相を定量化できる可能性がある。
Experimental proceduresより
焼結温度、焼結時間、Y2O3添加量の条件を変えて28水準のセラミックス試料を作製した。
・焼結温度:1770~1800 ℃
・焼結時間:30 min~6 h
・Y2O3添加量:AlNに対し、3~12 wt%。いくつかの試料にはAl2O3を添加。XAFSの標準物質:Y3Al5O12 (YAG)、Y4Al2O9 (YAM)、Y2O3、YAlO3 (YAP)
粒界相観察:STEM、EDS
断面観察:SEM、EBSD、加速電圧15 kv、低真空モード(70 Pa)、倍率1000倍。
任意の100 µm角領域内の500個のAlN粒子を測定してメジアン径を測定。熱拡散率測定:周期加熱放射測温法
熱伝導率計算:AlNの密度、比熱容量(710 J/K)
C-axisの格子定数:XRD
2θ補正のため、Si粉末を内標準物質として試料に添加。
各Y-Al-O組成物は参照強度比法で同定、定量化した。Alサイト空孔濃度:陽電子消滅寿命(PAL)より推定
元素分析:不活性ガス融解-赤外線吸収法(O)、不活性ガス融解-熱伝導度法(N)、ICP発光分光分析(Al、Y)
Results and discussionより
XRD:AlNとYAPが検出された。
SEM-EBSD:粒界三重点としてYAPとYAMを検出。Y2O3はAlN粒子の周囲に散在。
結晶質のY2O3の量は非常に少なく、EBSD画像内で約0.05 %だった。
STEM:AlN粒子は規則的で鮮明だったが、AlN粒子間の粒界相は不規則であいまいで、非晶質であることを示した。
粒界相のAlとNは、原子比率が1:1であるため、周囲のAlN粒子に由来する。
Medrajらは、AlN-Al2O3-Y2O3の状態図において>1900 ℃で酸窒化アルミニウムが形成されたと報告。
1800 ℃より低温で焼結したので、粒界相は酸窒化物を含まないと推定。
おそらく粒界相はほどんどYとOの原子で構成されていた。
粒界における、Yに対するOの原子比率はY2O3より高く、YAGに近かった。
非晶質粒界相の量をLCF法で定量化するには、XAFSスペクトラムが必要。言い換えれば、他のイットリウム組成物を含まないイットリウム粒界相の試料が必要。これは、AlNとY2O3から作製できないため、イットリウム組成物を添加したAl2O3から作製した。
Fig. 6:EXAFS動径分布関数
Y含有Al2O3セラミックスの粒界相は非晶質。Wangらは粒界相は非晶質の酸化イットリウムで、イットリウムの濃度が増加すると、その一部はYAG粒子になると指摘。
おそらく粒界はAl原子を含まない非晶質のYAGなので、Y含有Al2O3の粒界相のスペクトラムをリファレンスとし、AlNセラミックスにおける非晶質粒界相の濃度をLCF法で定量化した。
XAFSはXRDよりも検出感度が高いが、SEM-EBSDで検出された結晶質のY2O3は、非常に少量のため検出されなかった。
焼結条件の異なる28水準の試料について、粒界相の量、c軸格子定数およびメジアン径を測定し、熱伝導率との関係を示した。
粒界相の量は負の相関、c軸格子定数およびメジアン径は正の相関があった。
重回帰分析の結果から計算した熱伝導率と実測値の相関性を示した。三つの特性で熱伝導率をおおよそ説明することができた。
粒界三重点のY-Al-O組成物の濃度または種類は熱伝導率とは無関係だった。
p値から、粒界相の濃度とメジアン径はおそらく熱伝導率に影響するが、c軸格子定数は影響しそうにない。
以前の報告によれば、c軸格子定数、酸素固溶量、Al欠陥濃度とAlNの熱伝導率は相関する。
XuらはAl欠陥はAlN結晶の熱伝導率に支配的な役割をはたすと報告した。
メジアン径、c軸格子定数および熱伝導率は焼結時間に依存したが、欠陥濃度は依存せず、ほぼ一定だった。
c軸格子定数は熱伝導率の十分な指標ではない。
メジアン径と粒界相濃度で重回帰分析した結果、決定係数R^2は0.6746で、熱伝導率はc軸格子定数が無くても説明できた。
メジアン径が大きいほど熱伝導率は高かった。これはフォノン平均自由行程が長いため。
AlNのような多結晶では、フォノン平均自由行程は、非晶質の粒界相が無くても、粒界に制限される。
粒界相の量が一定であれば、メジアン径が大きいほど粒界相は厚くなる。メジアン径の増大による熱伝導率の向上は、非晶質粒界相が厚くなることで相殺される。
メジアン径が大きいほどAlN粒子間の界面の熱抵抗は小さくなる。
Al2O3の添加はAl欠陥と酸素固溶に影響しなかったが、粒界相の濃度は顕著に増加した。これが、試料No.2に比べメジアン径が大きい試料No.4の熱伝導率が低かった理由。
Al2O3の添加により、試料No.4は試料No.2より酸素濃度が高く、イットリウムを捕捉してYAGを形成し、大半の酸素をトラップしたが、かなりの非晶質粒界相を残している。
熱伝導率の向上のためには、非晶質粒界相の量を減らすことが重要。高温、長時間の焼結により酸素を系外に除去し、減らすことができる。
焼結温度が約1800 ℃であれば、酸素は系外に除去されないため、非晶質粒界相を三重点のY-Al-O組成物粒子に変えることが重要。
AlN以外のAl源を添加することが必要。Al2O3はAl源になるが、酸素も供給し、粒界相は低減せず、むしろ試料No.4のように増加する。
酸化物以外でAl源を添加することで、非晶質粒界相を減らすことができるかもしれない。
Conclusionsより
AlNセラミックスの非晶質粒界相をXAFSのLCF解析により推定することができた。
AlN結晶のc軸格子定数、AlN粒子のメジアン径を測定し、熱伝導率との相関を解析した。
非晶質粒界相の量は(熱伝導率と)負の相関を示した。
c軸格子定数およびメジアン径は(熱伝導率と)正の相関を示した。
重回帰分析により、三つの特性は熱伝導率に影響を与え、非晶質粒界相の量とメジアン径が支配的であることが分かった。
AlN粒子の欠陥濃度はc軸格子定数に無関係で、重回帰分析により、c軸格子定数は熱伝導率との相関性がほとんど無いことが分かった。
所感(得られた知見を活用できるか、どう活用するか)
得られた知見を活用することができる。(個人の意見です)
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