Paper "Effects of adding Y2O3 on the electrical resistivity of aluminum nitride ceramics"について
文献を読んで、覚えておきたいことをメモしておくためのnote。
Effects of adding Y2O3 on the electrical resistivity of aluminum nitride ceramics
J. Ceram. Soc. JAPAN 116 [4] 566-571 2008
メモ
窒化アルミニウム(AlN)は高熱伝導率、高耐食性およびシリコンに近い熱膨張を有する。
焼結中、Y2O3はAlN粉末の酸素不純物と反応し、yttrium-aluminates 第二相をつくる。
第二相は液相焼結を進めるだけでなく、酸素欠損によってAlN粒内のフォノン散乱の減少により熱伝導率を向上させる。
体積抵抗率は直流3端子法(JIS C2141)で測定。室温は大気圧、高温は真空中で測定。
同じ組成では、高温で焼結するほど体積抵抗率は低くなった。
Y2O3の増加とともに体積抵抗率は一度低減し、その後、Y2O3無添加よりも高くなった。これは1900℃以上で顕著だった。
Y2O3添加量が0.3 mass%のとき体積抵抗率(室温)は最低値の10^10 Ω・cmとなった。
1900℃で焼結後、Y2O3無添加ではAl5O6Nを同定。
0.1~0.5 mass% Y2O3では、Al5O6NとともにY3Al5O12を同定。
1.0 mass% Y2O3では、Y3Al5O12のみ同定。
2.9 mass%と4.8 mass% Y2O3では、YAlO3とY4Al2O9が残った。
第二相はAl2O3とY2O3の二元相図から推定された結晶相と一致。
Y2O3を添加したAlN粒子は六角形で形が揃っており、粒径が大きかった。
Y2O3無添加では粒内破壊、Y2O3添加では粒界破壊。
Y2O3無添加では、孤立した酸素分布はAl5O6N。
0.3 mass% Y2O3では、酸素とイットリアの異なる2つの分布があり、一方は酸素のみでAl5O6N、もう一方は酸素とイットリアが混在し、Y3Al5O12と一致。
2.9 mass% Y2O3では酸素とイットリアの分布はYAlO3と一致。
第二相は島状に孤立しており、粒界の濡れによる連続した第二相は形成されない。
Y2O3添加量が増えるほど、AlN粒内の固溶酸素量が減少。
カソードルミネッセンスでAlNのバンドギャップの不純物準位を分析:Y2O3無添加と0.3 mass%では370 nm周辺にルミネッセンスがあったが、2.9 mass%では無かった。
Discussionより
c軸の格子定数は、Y2O3添加量と熱伝導率の増加とともに、増加する傾向。
2.9 mass% Y2O3では、AlN粒内の酸素濃度は、無添加および0.3 mass%の1/3程度しかなかった。
酸素濃度が高いと370 nmのルミネッセンスがあったが、酸素濃度が低いとピークが無かった。
370 nmのルミネッセンスはAlN粒内の酸素不純物準位から放射。
Y2O3無添加および0.3 mass%での、低い抵抗成分は粒内抵抗と一致。つまり、酸素の固溶によりAlNに伝導担体が導入される。一方、2.9 mass% Y2O3での、低い酸素濃度のAlNでは、添加したY2O3とAlN原料粉末の酸素の反応により、酸素不純物はAlN粒子から取り除かれる。
Y2O3によってトラップされた酸素は、熱伝導率だけでなく、粒内抵抗にも決定的。
AlN結晶格子の窒素サイトへの酸素の結合は、支配的な電荷担体の電子を生成する。
Y2O3無添加および0.3 mass%の粒界抵抗の違いは粒径の違いで説明できる。無添加の小さな粒径は、高い抵抗の原因となる多くの粒界をつくる。
Conclusionより
少量のY2O3の添加(0.1~0.5 mass%)で著しく電気抵抗が低下(~10^10 Ω・cm)。
より多量のY2O3の添加(0.5 mass%<)により電気抵抗が増大(~10^13 Ω・cm<)。
Y2O3の添加量が増えるとともに熱伝導率も増大。
電気抵抗の低下のメカニズム:0.3 mass% Y2O3での、AlN粒内の酸素の固溶によりAlNのバンドギャップに不純物準位ができ、導電性担体の濃度が増加。
所感(得られた知見を活用できるか、どう活用するか)
得られた知見を活用することができる。(個人の意見です)
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