Rapid Communication "Gel-tape-casting of aluminum nitride ceramics" について
文献を読んで、覚えておきたいことをメモしておくためのnote。
Gel-tape-casting of aluminum nitride ceramics
J. Adv. Ceram. 2017, 6(1): 67–72
メモ
Introductionより
テープキャスティングには非水系と水系の二種類がある。非水系では有機添加物は可燃性で毒性があるため、不燃性で毒性の無い、環境に優しい水系プロセスを開発。
窒化アルミニウム(AlN)粉末を水に分散させると加水分解するため、AlN粉末の表面修飾が必要。
2002年:Xiangらはアルミナシートを製造するため、gel-tape-casutingと呼ばれる、フリーラジカル重合による、新しい製法を開発。
5種類の添加物:分散媒、モノマー、架橋剤、触媒および重合開始剤、さらに可塑剤を必要とする。添加物が多く、また酸素による重合阻害によりプロセスが複雑化。2013年:Yangらは、毒性が無く、水溶性のイソブチレンと無水マレイン酸の共重合体(PIBM)を使用し、アルミナの簡単なゲルキャストを開発。PIBMは分散媒とゲル化剤の両方として作用。この系では酸素阻害は起こらない。
2014年:ShuらはPIBMを使用し、ゲルキャスティングでフィン状のAlNセラミックスを作製。
本研究:テープキャスティングとPIBMを使用したゲルキャスティングを組み合わせてAlNグリーンテープを得た。N2雰囲気、1840 ℃、4 hの常圧焼結で緻密なAlNシートを作製。
Experimental procedureより
AlN原料粉末:平均粒径1.1 µm、密度3.26 g/cm3
Y2O3原料粉末(焼結助剤):平均粒径2.0 µm、密度5.01 g/cm3
これら二種類の原料粉末は加水分解するため、防水材(主成分はポリウレタン)で被覆する。
可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG)を使用。
Y2O3はAlNに対し3 wt%添加
レオロジー特性は直径25 mmの平行板を使用し、レオメーターで測定。
スラリーの粘度は連続せん断モード(1から1000 s^-1まで、25 ℃)で測定。
微構造とEDSの試験はSEMとFESEMで実施。
熱拡散率はレーザーフラッシュで測定。
AlNの密度はアルキメデス法で測定。
Results and discussionより
PIBMはイソブチレンと無水マレイン酸の共重合体なので、スラリーの分散媒およびバインダーの両方として作用。
固形分率38 vol%、PIBM添加量2-4 wt%(粉末比)のスラリーはいずれもせん断速度の増加に伴い、shear-thinning性を示した。
粘度は、PIBM濃度の増加に伴い、高くなった。
PIBMの添加量3-4 Wt%は差が無く、2 wt%ではグリーンテープの強度が弱く、無傷のテープが得られなかったため、PIBMの添加量は3 wt%とした。
固形分率38 vol%と40 vol%は大差無く、42 vol%まで増えると粘度が著しく高くなった。低粘度かつ高固形分率で、安定した均一なスラリーを重要。固形分比40 vol%のスラリーが妥当な粘度で、固形分比が高い。
固形分比40 vol%、PIBM添加量3 wt%を最適条件とした。
貯蔵弾性率はゲル化速度の解析に用いられる。
可塑剤無しではスラリーの貯蔵弾性率が開始時点で高く、時間経過とともに増加した。可塑剤添加後は、似た傾向を示したが、貯蔵弾性率は大幅に低かった。可塑剤添加により硬化時間が大幅に延長され、成形体は柔軟になる。
緻密なAlNが得られ、平均粒子径は約7 µmだった。
粒界には第二相がはっきり見えた。
破断面のEDSマッピングの結果、YとOが粒界に分布していた。
Y2O3とAlNが反応し、Y、Al、Oの組成物およびY2O3が第二相となり得る。
第二相のスポット分析でも、Al、YおよびOが分布していた。
第二相の組成および分布はAlNの熱伝導率に影響する。
AlNの密度:3.3 g/cm3
熱拡散率:0.66284 cm^2/s
比熱容量:純粋で緻密なAlNの0.734 J/(g・K)、20 ℃)を使用
熱伝導率:161 W/(m・K)
AlNの熱伝導率は、粒界に分離された低熱伝導性の第二相の形態、微構造を含め、影響を受ける。
第二相は互いに連結しており、AlNシートの熱伝導率をかなり低下させる。
第二相の形態を孤立した構造に変えることで、熱伝導率を向上させることができる。
第二相の分布が不揃いであることから、防水剤が効果的な役割を果たしていないと推測。そのためスラリー中のAlNとY2O3の不均一な加水分解が生じ、第二相の生成が増加するかもしれない。
Conclusionsより
分散媒とゲル化剤として共重合PIBMを使用し、可塑剤としてPEGを使用して、簡単なgel-tape-casting法によりAlNセラミックシートを作製した。
作製したAlNシートの熱伝導率は161 W/(m・K)だった。第二相の組成と分布の効果的な制御により、特性が改善される。
Words
Shear-thinning
Storage modulus
所感(得られた知見を活用できるか、どう活用するか)
得られた知見を活用することができる。(個人の意見です)
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?