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『カット椅子』に座ってカットしちゃいけない?美容師の謎ルール


操作イトウです。今回は美容業界に数多ある『悪しき慣習』シリーズ。

二つ目は「カット椅子」についてです。美容師なら「あ〜それ、あるよね〜。」となる、意味不明なルールのお話。

その名の通り、座りながら切るために用いるのが『カット椅子』(僕がそう聞いてきただけで、業界でこの呼び方が正式かは謎)です。これを、頑なに使わないことがルール化されている美容室が多くあり、外の美容師さんから、未だに話を聞く場面があります。

勿論、これは全ての美容室に当てはまることではありませんが。

美容業界には、未だモーレツを引きずっている様子が伺えます。

古い慣習が残り続けている美容室は多く、昭和の価値観を美化し過ぎたままの企業に押し潰され、美容師が辞めていってしまうのです。

一つ目はコチラ↓

『カット椅子』とは?

当たり前ですが、美容師は髪を切る時には必ず手元を見ています。これはハサミで切る線がズレないようにするためなのですが、あちこちに髪の毛を引っ張り上げて切るために、引っ張る方向によって身体が捻れるようになったり、中腰になったりします。

ですが窮屈な体勢になると足がプルプルすることもあるし、身体がブレると手元もブレてしまいます。そこで使うのがカット椅子。脚にローラーが付いているので小回りも効きます。

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座ると、、↓

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美容師さんを見ればわかると思いますが、図よりももっと窮屈な姿勢になることが多いです。立っているよりも安定するため、ただでさえ腰を痛めやすい美容師にとっては、余計な負担は避けたいことです。

美容師の手捌きは、さながら○木○道のディフェンスのように四方八方に両手を伸ばします。

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美容師がそこまでして髪の毛を引っ張るようにして切るのは、引っ張り出すに角度によって、切った髪の形が変わるからです。

髪の毛を持ち上げて切ってるのはなぜ?

美容師さんが髪の毛を持ち上げて切る動作。引っ張る角度(高さ)によって、髪の毛の切れる長さが変わります。

例えば↓

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上図 引っ張る角度を緑(中心)から直角に設定して切ると、青(一番下の髪の毛)はと赤(一番上の髪の毛)の長さは同じになります。

下図 引っ張る角度を赤から直角に設定して切ると、赤は短く、青は長くなります。

平面で説明していますが実際の頭は球体なので、引っ張る角度は美容師から見て上下左右、手前、奥、と、動きに合わせて髪の毛の切れ方は変わります。

美容師のカットについてはコチラ↓

なぜカット椅子に座っちゃいけない?

美容師が座りながら切ると、立っている時よりスペースを広く使うことになります。特に都内の美容室はテナント自体が狭いので、人が通れるだけの通路が無くなってしまったり、使わない時に隅に置いているカット椅子は、邪魔になったりします。

ですが「カット椅子を使っちゃいけない」ルールには、それとはまた別の理由があります。それは「姿勢」についてです。

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接客業全般に言えることかもしれませんが、日常的に立ち姿勢などを厳しい先輩から指導されることが多いです。スマートに立ち振る舞うことが求められ、もちろん気怠そうに立っていると怒られます。

また、美容師は営業中に座ることを良しとしません。やる仕事がなくても常にお店の隅やフロントなどのどこかで立って、すぐに先輩スタイリストへの助太刀ができる「姿勢」を要求されてきました。

「姿勢」に厳しい美容師

同じように、施術中の作法やカットする「姿勢」も厳しく教わります。切る一連の動作が慣れない間は手元がブレやすく、手元に集中するあまり、腰が曲がったりして、立ち姿がカッコ悪くなりやすいものです。

怖い先輩から厳しく教えられたことを遵守してきた美容師は、それを後輩に伝授しますが、こだわりが強くなると「この時のあの姿勢もシャンとするべき」とか、じゃあ「これ」も「あれ」も、と飛躍していきます。するとそれを過大解釈してしまったり、本質を見失ったまま、教えられてきたことに固執してしまいがちです。

[ 姿勢が悪い = やる気がない ]

と、その先輩はいつのまにか“身体的な姿勢”と“精神的な姿勢”を混同してしまう。

座って背中が丸くなると、、

そしてカット椅子で作業をすると、手元に目線が行くため背中が丸くなってしまいやすい。

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これが過大解釈を経た先輩からすると「座って切る」のが、「楽(らく)してやってる」ように見えるようです。「真面目にやっているように見えない」「座ってサボっている」「やる気あんの?」と、次第に圧力がかかります。

「座るとあの先輩から怒られるから、座っちゃいけない。」カット椅子を使わないルールは、それだけの理由です。

すると駆け出しの若手も、そんな先輩の背中を見て真似するようになり、それをまた自分の後輩に伝授します。先輩に怒られないために始めた習慣は形骸化して、いつしか使ってはいけない物になってしまった。

『美容師という仕事はこういうもの』『座らないで切るのが一流』といった歪んだ美学は、「座るのはサボっている」ものとして脈々と受け継がれてきたのです。

辛い姿勢は腰を痛めるだけだし、誰のための美学?

技術職だからでしょうか、そういった「昭和な伝承」は今も聞く機会が多いです。僕が前の会社に就職した13年前には間違いなくあったし、それをぶっ壊していくのは「散々やらされてきたけど、意味ないじゃん」と思える僕ら世代であることは間違いないです。

ただでさえ腰に負担がかかりやすい美容師。

会社側が「座る」ことを推奨しないのであれば、それは立派なブラック企業です。『腰を痛めても自分の責任』と言われても納得してしまうのは、会社が間違っている事にも気づかないほど、当たり前の習慣になっているからです。

ファッションや見てくれには敏感な美容師ですが、日々を専門的で閉鎖的な空間で過ごすうちに、既に古くなってしまったマインドを美化したり、過去の成功体験に固執してしまいがちです。

この記事が「それはもう辞めようよ」と言えるきっかけになればと思います。


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ではまた。


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