「ぶっちゃけ、コレにはお金かけない」美容室のリアルなやりくり【美容室と商材②】
操作イトウです。
【美容室と商材②】は、よりシビアな「材料費」のお話。
薬剤の価格やグレードはピンキリなため、美容室は「安い薬剤で材料費を削る」のか、「高い薬剤で顧客満足度をあげる」のかを、常に天秤にかけています。
では、具体的にはどう振り分けているのか?
【美容室と商材①】はコチラ↓
◾️支払額のどれくらいが「材料費」?美容室の銭勘定
美容室の主要な「材料費」は、カラーやパーマなどの薬剤です。
【美容室と商材①】で説明した通り、「イルミナカラー」などの薬剤を用いることでクオリティアップと単価アップが見込めます。ですが、美容室は全ての商材にお金を掛けていては、首が回らなくなってしまいます。
基本的に美容室の運営は、「月の総売上に対して10%以下に収めれば上々」というのが定石です。
某クーポンサイトでの集客が基本となる美容室は、顧客獲得のための「サービスメニュー」も多いため一概には言えませんが、お支払いいただく料金に対しても「10%前後が材料費」といったところです。
これに対して、「安くない?ボロ儲けかよ!」と思う方もいるかもしれません。業種によって材料費の比重は違うため感覚も様々かと思いますが、美容室は運営費用がかかりやすい業種でもあります。
▼美容室は、運営費用がバカほどかかる
様々な業界の中でも、美容室は月々の運営費用が多く必要になる業種かもしれません。
「材料費」の他には、美容師の「人件費」、好立地なテナントの「家賃」が大きく占めますが、諸経費の中でも「水道光熱費」は他業界の比にならないほどかかります。
お客様のほぼ全員に施すシャンプーやドライヤーはもちろんのこと、大量のタオルをひっきりなしに洗濯、乾燥。そして傷んできたら買い替えます。
タオルは業者からリースする美容室も多く、その費用はバカになりません。
更に、集客を一手に担うクーポンサイトへも契約して掲載費用を支払っているため、「広告宣伝費」として負担しています。
▼開業にお金が掛かる → ほとんどの美容室は借金返済中
そして、そもそも美容室は開業にかかる費用が大きいのも特徴です。
特に「シャンプー台」を要する水周りには、大掛かりな工賃がかかります。そして「専用のチェア」や「シャンプー台」などの専門機器も多いため、「始めから用意しなければならないモノ」が細々と沢山あるのです。
加えて美容室は、チェーン展開する企業よりも個人経営が圧倒的に多いのが特徴です。
個人の場合は大きく資本金を融資できないこともあり、ほとんどの美容室は何年もかけて「初期費用」を返済し続けています。
これら全てを賄った上で利益を上げなければならないので、月々の支払いをシビアに計算してやりくりすることになるのです。
【余談】1000円カットが激安な理由は、断捨離の極地だから
カットやカラーなどを低価格で提供するには、諸々の運営費用も抑える必要があります。
例えば、低価格といえば1000円カット。
彼らが1000円(大手のQBハウスは2024.11月現在税込1350円)で提供できる理由は、開業時の初期費用の少なさと運営の効率アップにあります。
まず1000円カットの店内には、工賃のかかるシャンプー台はありません。魔改造された掃除機で吸引することで髪を洗い流す必要はなくなり、更に濡れた髪を乾かす時間的な手間も無し(もちろんタオルもいらない)。
そして彼らは、カラーやパーマもしません。
これなら材料を取り寄せる必要も、在庫管理するスペースも手間も必要なく、放置時間(薬剤を効かせる時間)もないため回転率アップ。
などなど、あらゆるレギュラー美容室/理容室の規制を断捨離したことで成立しているのです。
1000円カットについてはコチラ↓
◾️「ぶっちゃけ、コレにはお金かけない」美容室のリアルなやりくり
美容師目線でも、用いる薬剤は価値判断が分かれやすい分野です。数多あるメーカー、数多ある商材から選び取るためには、経験値と見識が必要。
では具体的に、美容室は「ココには投資している」「ぶっちゃけ、コレにはお金かけない」をどのようにして取捨選択しているのでしょうか。
あくまで僕が沢山の美容室を見てきた傾向として、お話します。
▼「トリートメント」は、お客様が体感しやすいからお金をかける
まず、「トリートメント」は多くの美容室が投資する傾向にあります。なぜなら、お客様の関心も高く、それに見合った効果も体感しやすいからです。
トリートメントの商材は、「松竹梅」の要領で各ニーズに合わせたランク分けがされています。
特に最近はハイエンドなトリートメントが進化を遂げ、お客様にも支持を受けていることもあり、それぞれのランクをお客様に選んで頂くことで満足度を高めようとする狙いがあります。
▼「シャンプー」「スタイリング剤」は、美容室“外”で満足度アップ!
また、いわゆる「サロン専売品」であるシャンプーやスタイリング剤も、美容室のこだわりが出やすい部分です。
これらは、より良いモノを探しているお客様に対して「良いモノを用意しています」と提供できればお店のブランディングにも繋がりますし、高単価でリピーターにもなりやすい商材です。
そして、サロン専売品はお客様が「美容室の外」で美容室のクオリティを体感する貴重なツールでもあります。というのも、美容室の施術はほとんどが「美容室内」で完結するもの。
日々の生活でのスタイルの再現度が上がれば満足度も高まりますし、お客様にマッチするモノを提案できれば、美容師との信頼関係を築くキッカケになりやすいのです。
◾️対して、美容室がお金かけないのは…
対して、美容室がお金をかけない商材は、メーカーや商品レベルの違いがそこまでないモノです。必要な種類が用意できれば充分で、安く仕入れることができれば積極的に仕入れるモノ。
まず、パーマの薬剤がそれにあたります。
美容室側は「今までより良い商材」があれば積極的に導入するのですが、パーマは近年そういったブラッシュアップはされておらず、商材の入れ替えは消極的です。
これは、コテやアイロンによるスタイリングが主流になったことも一因かもしれません。
▼デジタルパーマは導入にお金がかかるから、賛否両論
通常のパーマは全国どこの美容室でもできますが、美容室の選択が特に分かれるのが「デジタルパーマ」。
デジタルパーマの技術は通常のパーマとは理論が異なるため、別の知識と経験値が必要になります。また熱を当てる機材が高額な上、専用のロッド(巻く筒のこと)も必要数購入することになる。
加えて、デジタルパーマは使えるヘアスタイルが限定されるため、「導入する必要がない」と判断する美容室は多いです。
◾️実は、カラー剤にはお金をかけていない!?
パーマと比べると、沢山のメーカーから販売されているのが「カラー剤」。ヘアカラーはカットに次いで需要が多いので、節約できれば効果も大きくなります。
とはいえ、【美容室と商材①】で説明した「イルミナカラー」に代表されるハイエンドな商材もあったりと、値段の差が大きいのも特徴。
多くの美容室では「通常メニューのカラー剤」と「プラス料金のイルミナカラー」といった振り分けをするため、特に「通常メニューのカラー剤」の選択は重要になります。
▼「通常メニューのカラー剤」は、意外と取捨選択しやすい
この「通常メニュー」はたくさんある中から選択するので難しいのでは?と思いきや、むしろ取捨選択しやすい、ともいえます。
というのも実際には、「通常メニューのカラー剤」は各メーカーを比べても微々たる差でしかありません。加えて、カラーは美容師のテクニック次第で如何様にもなる(【美容室と商材③】で後述します)ため、美容師がその商材の扱いに慣れてしまえば、あまり問題にはなりません。
そのため「安く発注できる」ことが担保されれば、値段を重視して選ぶお店も多いのです。
◾️美容室は堅実に運営してます
「安く仕入れる」などと並び立てましたが、とはいえズルしたいわけではなく、例えば「イルミナカラー」と称してイルミナカラーの薬剤を使わない美容室は流石にないと思います。
ほとんどの美容室は堅実に運営していますので、ご安心ください。
そして、まだまだお話したい内容があるので【美容室と商材③】に続きます。
ではまた。
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