シャーデンフロイデ〜推しの子から来ました(1)
2023年に大人気の推しの子で言及されていた「シャーデンフロイデ」。そこから興味を持ち、具体的にどのようなものか知りたくなってこの本を読みました。本筋と関係ないけど、アニメで見た時の鳥肌シーンのそばでした(鑑賞済みの人なら全員共感してもらえるはず)。第7話のエンディング部分ね。だからこそその近くで触れられていた概念に強い興味を覚えたのかも。
読んでみると、推しの子のような特殊な関係性に限らず、現代日本に蔓延る病理を辿ることになった。
今回の書籍
中野信子 著 2019年11月20日第四刷 幻冬舎新書
シャーデンフロイデとは
「誰かが失敗したときに、思わず沸き起こってしまう喜びの感情」
第一章の最後に「メシウマ=シャーデンフロイデ」とも端的にまとめられています。
人間はそもそも集団を守ることで生き残り、愛と絆を育んできた。それをこわす異端は排除されねばならない。と感じてしまう。
それを裏付けるさまざまな事例や実験が提示されている。
同調圧力など日本人は特にその傾向が強い。集団で稲作で数を増やしてきたり、歴史的にも災害大国でありその度に団結して復活してきたり、100年続く会社が世界的に見てもすごく多い。などが例として挙げられている。その中で良しとされてきた社会正義、協調性、ルール、規範、倫理などを変えてしまうことは集団の存続に対して危機である、ということで、正義感を持って批判し、排除し、出る杭を打つのです。
一方、それらは滅私奉公、個よりも組織が大事、という価値観から成り立ってきた。
生物学的に、脳の働きによるものだから、感じてしまうのはしょうがない。そもそもそういう生き物なのです。
愛と絆を司るオキシトシンの裏返しの作用で、持っているものを失うかもしれないと思ったときに強く働くのだとか。
事前に契約書を交わす夫婦は離婚率が高い
さまざま例が挙げられている中、個人的に気になった例。約束事が多いということは「〇〇するべき」が多いということ。とくに長い結婚生活で何も抵触しないのは容易ではなく、「約束を破って許せない、あなたとはいられない」となって契約書に基づき離婚していくのでしょう。
結婚自体にまったく縁がない私なのですが、これはずっと考えてたなぁ。つまり細かい約束事を契約書にしておくと言う話。法的効力についてはさておき、後で揉めないために必要でしょう?と。周囲にはそんなんいってるとずっと結婚できないよ、と一蹴されていたが(今のところぐうの音も出ないが)。で、これをやった夫婦は離婚率が上がるのだとか。守るべきルールを明確にしたら、それを破る相手は許せなくなるよね。と。私も曖昧な約束や社会規範によって、なんとなく続いている関係性に合理性を感じず(特に結婚関係の解消はハードルが高い認識)、すでに終わっている婚姻生活を続けているくらいならいつでも別れられるようにした方がいい、と考えているので、この結果は納得。(長く続くことの良い側面もあるのでしょうが、これは経験者に譲りたい・・・)
不倫をたたく風潮はなぜ
不倫をたたく風潮、についても言及があったが(繰り返すが現状縁がない)、生物としての生存戦略として、あらゆる生き物はつがいの形態が違うそうだ。日本人は明治から一夫一妻制というルール(法律)になり、皆がそれを守っている(守らされている?)なか、そのルールから逸脱した人間が叩かれるということなのでしょう。
少子化の議論においては、このルールは全く合理的でないと思う。作れる人に増やしてもらって何が悪いというふうに舵を切るべきだと思うが。(個人の感想です)
終わりの感想
推しの子から出会ったこの本だけど、思いの外、現在の日本社会の病理について分析してあって非常に興味深かった。この本ではそこまで語られていないのだけれど、心理学や脳科学って、人間はもともと〇〇というような傾向がある。ということを解き明かす学問なのかなと思う。心理学であればそれを実験で、脳科学であれば条件によって分泌される化学物質の計測で。なので、何も考えずにいると大衆はそのように動くし、自分の脳もそう。それが望ましくないと考えるのであれば、生物的な当たり前に対抗していく術を学ばなければならない。そのために、まずその前提知識を知ることが第一歩になるということなのだろう。
備考※冒頭画像の引用について
この方のスタンスがわかりやすかったので、参考にさせていただき、この趣旨の範囲で利用させていただきました。