『糸と魚と川Vol.05』イベントレポート
2022年5月14日、クラブハウス美山にて、「外と中、関係人口とローカルプレーヤー・企業・団体との接点をどう作り広げていくか?その先の未来は?」をテーマにゲストをお招きして、イベントがおこなわれました。
これまで過去4回開催された『糸と魚と川』では、会場参加者の他にイベントの様子をWebで配信。ですが第5回目となる今回は、リアルファンミーティングとして、実際に顔を合わせての交流を企画されました。
第1部では、糸魚川の課題を解決するためのゲストから妄想を語っていただき、参加者全員で議論をするワークショップを開催。また第2部では美山公園で糸魚川の自然を満喫する懇親会が開催されました。
本記事は、そんなイベントの第1部の内容をまとめたものです。
まずはイベントの雰囲気だけでも味わいたい方は、こちらの紹介動画をご覧ください。
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https://youtu.be/AIR-NsiB1Nc
~今回のゲスト~
・おもちゃコンサルタント 齋藤里沙 氏
・株式会社TAIMATSU 松尾宗則 氏
・株式会社イールー 伊藤薫 氏
※『糸と魚と川』の詳細はこちらから。
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https://note.com/ito_sakana_kawa/n/n3f771adde3f2
今回のイベントは、大きく分けて以下の3つのパートに分かれています。
1、ゲストによる糸魚川で実現したい妄想の発表
2、ゲストの妄想に対するイベント参加者によるワークディスカッション
3、グループ代表による発表
それではパート1の様子からお伝えしましょう。
まずは1人目のゲスト齊藤さんから糸魚川での妄想を語っていただきました。
◎地域全体で糸魚川らしい遊び場を作りたい
■齊藤さんプロフィール
神奈川県横浜市出身。第一児の出産後に夫の地元である糸魚川へIターンし、おもちゃコンサルタント(遊びの専門家)として活動中。「どんな遊びをすると子どもの発達にどのように影響するのか」など子どもの遊びについて学び、改善・アドバイスなどをする活動に従事。現在は3児の母。
齊藤さんについては『糸と魚と川Vol.04』で詳しく書かれています。
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https://note.com/ito_sakana_kawa/n/n90de3ca4f9a1
■子どもにとって遊びとは?
「糸魚川にもっと遊びを広げていきたい」
そんな想いを持つ齊藤さん。「そもそも子どもにとって遊びとは何でしょうか?」と参加者へと質問を投げかけます。様々な答えが返ってくる中で、「遊びは日本では勉強や仕事の対義語として使われがちですが、自分を成長させるための作業だ」と語ります。
たとえば子供が「ステージや台の上に登りたい」と思って登ることは身体を鍛えることにもなります。『遊びとは自分を楽しませる、自分を幸せにする作業』なのだそうです。
それでは実際に糸魚川では、どんな遊びが広がっているのでしょうか。県外から引っ越してきた齊藤さんは、糸魚川の子どもは山や川など自然の中で遊んでいるものだと思っていました。ですが、実際に住んでみると、近所に子どもがいなかったり、遊び場が無かったりするため、家で遊んでいる子どもも多かったのだそうです。
「そんな状況を変えたい」という齊藤さんの妄想を見てみましょう。
■遊びをデリバリーする
おもちゃ屋も経営している齊藤さんは、遊びの道具や段ボール、自然素材を車に積み込んで、空き地や廃校、使っていない駐車場など、様々な場所に遊びをデリバリーする妄想を膨らませています。
たとえば美山公園の遊具が無いところや町中でも道を通行止めにして道を遊び場にするなど様々な可能性があるのです。こういった活動は関西や関東には多いのですが北陸地方には無いのだそうです。
そして「糸魚川らしい移動式遊び場を作りたい。スタッフは地域の人にやってもらうことで地域の活性化にも繋がる。そんな遊び場が糸魚川の各地域でどんどん広がったらいいなと思っている」と語りました。
最後に参加者からアイディアが投げかけられます
「ある町では移動図書館をやろうとしてるんです。これに興味がある町の人が集まって、どうやったら実現できるかワークショップをしているんですよね。同じように糸魚川でも、作る段階から地域の人に参加してもらうと良いかもしれません」
齊藤さんパートの動画はこちらから。
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https://www.youtube.com/watch?v=_TJABJeK2R8
続いて2人目のゲスト松尾さんより糸魚川での妄想を語っていただきました。
◎旅行者と地元の人とのコミュニケーションの場を
■松尾さんプロフィール
一級建築士
京都生まれ東京育ち
管理建築士
京都芸術大学非常勤講師
子育て、旅、山登り、読書、車、DIY、wine、Hotdog が好き
とにかく毎日が楽しい
早稲田大学商学部卒業
早稲田大学芸術学校卒業
2007-2010 鈴木恂+AMS(住宅・別荘)
2011-2012 SUDA設計室(幼稚園・保育園)
2013 SUPERPIXEL 設計事務所 設立
2019 株式会社 TAIMATSU 設立
設計建築事務所を経営し、家やマンションの設計、古民家のリノベーションを手掛ける。また、これまでも南アフリカのガーナや東南アジアのミャンマーなどに学校を建てたり、近年では空きビルやテナントの活用方法の相談に乗るなど、活動は多岐に渡ります。そして、今回の会場であるクラブハウス美山の設計にも携わってきました。
では、学生時代から糸魚川と関わってきた松尾さんから見る『糸魚川の魅力』はどんなところにあるのでしょうか。
■通う立場から見る糸魚川
松尾さんが思う糸魚川の魅力は以下の3つです。
・食べると楽しい
・話すと楽しい
・泊まると楽しい
糸魚川には、豊かな自然が育んだ食材も多く、美味しい飲食店が多い。松尾さんは、全国の多くの町を巡ってきた経験から「ご飯が美味しい町は大丈夫」と語ります。また、糸魚川の人は誰と話しても面白い人が多く、話をしてみないともったいない。これは駅を降りて、町を歩くだけでは気付けない点です。
そして、一見、駅前には何もないように見えて、観光に来ても半日で終わってしまうかのように思われがちですが、実際には「泊まってみないと見えてこない魅力がある」とのことでした。
その一方で何度も通ううちに糸魚川が抱える課題が見えてきたのだそうです。
■糸魚川に気がつくこと
・駅を降りても人がいない
・どこへ行って良いのか分からない
・宿泊施設が少ない
駅周辺に活気が無く、街を歩いている人を見かけない。他の地方自治体とは、違う寂しさが町を覆っているので、もっと活気を伝える必要があるとのこと。
また、一見シャッター街のように見えても、中に入ってみると実際は活気があり、地元の人と会話を楽しめる場所も多いので「もう少し人と人との繋がりを作らなければならない」というのが松尾さんの考えです。そして、糸魚川駅周辺には宿泊施設が限られており、選択肢がないことも問題とのことでした。
そんな松尾さんの考える糸魚川での妄想を見てみましょう。
■令和版『宿場町』を作ろう!
かつて糸魚川は縄文時代よりヒスイの交易地として、多くの人が訪れ滞在してきました。江戸時代には宿場町として栄えたとも言われています。「宿場町は1つの宿に泊まるのではなく、いくつもの宿に泊まれて、様々な場所で地元の食材を満喫でき、町全体でもてなす場所である」と語ります。
そこで「町中に銭湯を作ると良いのではないか」というアイディアが出てきました。今の糸魚川には山の中に温泉がありますが、町中にはありません。町の中に地元の人も利用できる銭湯を作ることで、旅行者と地元の人とのコミュニケーションの場にしようという試みです。
また糸魚川駅周辺で飲み会をする場合、代行を利用する人が多いのだそうです。そんな人のために駅近くの空きビルを改装して、気軽で安価に宿泊できる施設の提案をされていました。
松尾さんパートの動画はこちらから。
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https://www.youtube.com/watch?v=Xmq2tXqneLc
続いて3人目のゲスト伊藤さんより糸魚川での妄想を語っていただきました。
◎ワクワクが人生を豊かにする
■伊藤さんプロフィール
・TreckTreck/Tinkering主催
・株式会社イールー代表
糸魚川出身。2016年に株式会社イールー(YILU inc)を創業。コミュニティを旅する体験プログラム事業TreckTreckや、地域の魅力を紹介するメディア事業、旅・地域・移住に関する企画プロデュース等を通じ、旅人と地域の営みをつなぎ、双方の暮らしを豊かにすることを目指す。また2022年4月より駅前広場キターレの運営も務める。
伊藤さんについては『糸と魚と川Vol.03』で詳しく書かれています。
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https://note.com/ito_sakana_kawa/n/n94b2abb5a16c
■本業を活かしインバウンドを活性化
元々、東京で人と人を繋げるツアーの仕事をしていた伊藤さん。そのツアーを見た人から「糸魚川でも同じようなことができるのではないか」と言われ、糸魚川へ戻るきっかけとなりました。そして、現在は『糸と魚と川Vol.01』にも登壇した美山プロジェクトのリーダーである五十嵐さんや糸魚川商工会議所の環境創造プラットフォームの方々と共に、美山の開発に取り組んでいます。
そんな伊藤さんは、本業を活かして『塩の道』を利用したハイキング、トレッキング、サイクリングのツアーを企画中とのこと。塩の道は、かつて長野や山梨から生活に必要不可欠な塩を運ぶために使われた古道です。日本には現在、有名な古道として『政治の道』の中山道、『京都に繋がる道』と『信仰の道』の熊野古道があります。
そして、今後は商業、命を繋ぐ『暮らしの道』として塩の道が3つ目の古道に数えられるようにしたいと語っておられました。
さらに伊藤さんの妄想は、これだけではありません。
■子供時代のクリエイティビティが人生を豊かにする
幼稚園・保育園に通うような小さな子供には「なんで光に虫は寄っていくのか」、「なんで晴れているのに朝起きると地面が濡れていることがあるのか」など、素直な疑問が浮かんだり、大人に止められても火を使ったり、隠れて秘密基地を作ってみたりする子が多いですよね。
この時代が人生で最も楽しんで成長して、創造性(クリエイティビティ)が高い時代なのですが、小学校に入ると授業を受けるだけで受け身になりがちで、創造性が発揮できないようになるそうなのです。そこで「小学生になっても子ども達に創造性を高めてワクワクするような体験をしてもらい、大人も一緒になって楽しみながら何かを作り上げていこう」という目的で、ティンカリング事業というものを始めました。
基本的には「子どもが遊びながら自然と暮らしから学んでいく」というコンセプトとなっています。その中からいくつか紹介しましょう。
・ao コットンプロジェクト:綿花の畑にタネをまこう!&早川ピクニック
糸魚川で育てたコットンでベビー服を作り、糸魚川で生まれた赤ちゃんにプレゼントする企画
・縄文ピクニック:縄文スタイルのフェイスペイントイベントをして森をさんぽしよう!塩づくり&BBQ
土器を作って、縄や貝殻で縄文模様を作ったり、塩を作ったり、ヒスイを削ったりする縄文時代の暮らしを体験する企画
このように今後も様々な体験学習を企画していくとのことでした。その中で伊藤さんが糸魚川に作りたいものの1つが『糸魚川アート&デザイン研究所』です。
「糸魚川で研究するアートやデザインとは一体どんなものか」を考えると「いかに自然と共生していくか」という一言に尽きると伊藤さんは語ります。糸魚川は火事、地滑り、雪崩など多くの自然災害が起こりやすい地域です。
ですが、昔から糸魚川の人は、災害が起きたときに、ただ逃げるのではなく、自然の変化を見ながら、しなやかに対応して暮らしてきたのだそうです。そのような生き方や暮らし方を子ども達が学んで、活かされるプロダクトを開発することが出来たら、糸魚川のライフスタイルを作ってくれる人がどんどん育っていくと期待しているとのことでした。
そして最後に「これらのティンカリング事業を楽しんでもらったり、外から糸魚川にやってきた人が、地元の様々な事業者とコラボして開催してもらったりしてほしいと思っているので、何かをしてみたいと思っている方とどんどん話をして妄想を膨らましたい」と締めくくりました。
そして、ここからはゲストを中心に各グループに分かれて、活発に意見を交わし合います。
伊藤さんパートの動画はこちらから。
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https://www.youtube.com/watch?v=FQky15vQh_s&t=767s
◎グループワークで膨らむ妄想
■チームに分かれて活発な議論が交わされる
各グループに分かれた参加者は簡単に自己紹介をし、まずは糸魚川が抱える課題の洗い出しに取りかかります。小さな紙に課題を書き張り出して、全員で共有。
そして同じように解決方法などのアイディアをどんどん貼っていきます。
議論が進むにつれ、どんどん具体的な話になり、いよいよ発表の時を迎えました。
■発表タイム
・宿場町を作ろうチーム
発表者は今回初めて糸魚川を訪れた人でした。ターゲットは自分のような人だと仮定して議論を進めたのだそうです。
まず「飲食店で失敗したくない」、「知らないお店に入りたくない」など、知らない土地で飲食店に入るにはハードルが高いという課題があることが分かりました。地元では有名な美味しいお店でも「お店が中が見えない」、「常連のたまり場となっていてアウェー感がある」などの理由で入りづらいこともあるそうです。
一方で「明らかに観光向けのお店や全国チェーンのお店も入りたくないし、高いお店にも入りたくない」という希望があるとのこと。そこで解決策として『信用できる飲食店の情報』を提供できるようにすれば良いとのことでした。
他にも「夜の駅前広場キターレで、日本酒の会など大人向けのコンテンツの開催して、地元の人と外部の人とが程良い距離感で交われる場所を作っていきたい」など、新たなアイディアが出て有意義なグループワークだったようです。
松尾:私たちのチームは糸魚川在住、在住で会社経営、他県から来た人など個性が分かれていました。年齢層が高めなので意見が偏ってしまったかもしれませんが、とても良かったかと思います。
・伊藤さんと齊藤さんの合同チーム
齊藤さんと伊藤さんが糸魚川を良くするために中心的に活動をしていますが、まだまだ足りない部分があるとのこと。そして、ママさんだけでなく、今回はパパさんからの意見も聞けたことで違った視点からも課題が見えたようです。
そんな合同チームでは「雨の日は遊ぶ場が無い」、「何をするにしても都会のように選択肢が無い」、「遊園地に行くには時間もお金がかかる」など子育てに対する課題が多く出ました。これらの中から、特に雨の日の遊び場不足問題に焦点が当てられ、解決策として「雨の日は割引になるなど雨の日サービスをすると良いのではないか」というアイディアが飛び出します。
そして「糸魚川市でも作る予定はあるということですが、実現するにはまだまだ時間がかかるので、自分たちですぐに取りかかりたい」、また「駅前広場キターレには年配の人に向けた時間があるので、同じように子どものための時間を作り、町と一緒に様々な課題を解決して、糸魚川を活性化していきたい」と意気込みを語り締めくくりました。
齊藤:そもそも糸魚川は子どもを育てるのに、とても良い地域なのにもったいないんですよね。子どもの送り迎えのサービスを作るなど、小さな課題を解決できると、もっと地域は楽しくなるのではないでしょうか。
伊藤:他の方の子育て経験や糸魚川に初めて訪れた人など、様々な人と1つのテーマで話をすると広がりが生まれるんだと実感しました。また今日の会場にもふらっと子どもを連れて遊びに来てくれる人もいて嬉しかったですね。
■まとめ
渋谷:元々、今回のイベントは交流に重きを置いて開催しようと思っていました。ですが、3時間丸々交流するのは少しもったいないと思い、今回のようなグループワークの形をとらせていただきました。
自分だけでやろうとすると他の人に助けてもらおうという考えが出ないんですよね。手が足りなかったり、規模が大きくなったりすると課題が解決しづらくなるんです。なので今回のように課題をみんなで共有すると様々なアイディアが出て解決の糸口が見えると思うんです。
ぜひ、これからも『糸と魚と川』のメンバーとして、大きなプロジェクトも小さなプロジェクトもどんどん進めていってもらいたいですね。
その後も時間いっぱいまで参加者同士で様々なプロジェクトについて熱い議論が交わされ、今回のファンミーティングの第1部は終わりを迎えました。
プロジェクトに参加希望の方は、下記のメールアドレスまで。
糸魚川市産業部商工観光課企業支援室(担当:山崎)
kigyo@city.itoigawa.lg.jp
株式会社MOVED(担当:渋谷)
info@moved.co.jp