【Neuf 林さん】デザイナーインタビュー #3 @TEXTILE JAPAN SHOWROOM2022SS
繊維産地に軸足を置いてさまざまな活動をされている林優貴さんにインタビューさせていただきました。
宮田:インタビューよろしくお願いします。デザイナーとして産地を拠点に新しいスタイルで活動されている林さんのお仕事のお話を聞かせていただきたいと思っています。
林:よろしくお願いします。久々の東京出張が、こちらのテキスタイルショールームの会期と重なったのでお邪魔しました。
宮田:最近は福井を拠点に、どんなお仕事をされているのですか?
林:福井は合繊テキスタイルの産地で知られていますが、縫製もカットソーから重衣料まで扱えるさまざまな工場さんがあります。そこで生地開発のお仕事だったり、OEMなどもしています。県の織物工業組合のコンサルティングもさせてもらっていますが、織物工場も下請けの仕事だけでなく、トレンドやニーズを捉えて試作開発をして、自分たちで発信できるようにサポートをしています。
そういった産地の工場さんとのお仕事と並行して、これから新しく立ち上げるブランドの生地を仕込んだり、商標登録をしたり…そんな日々です。
宮田:林さんにとって、形、生地、デザインなどの服の企画はどのような工程で作っていきますか?
林:その順番でいえば生地が先です。肉感や落ち感や素材特性が先に決まっていないとデザイン画が書けないので。例えば、薄手のタフタにキルティングするなら、中綿の分量やキルティングの柄まで決めてからデザインに入ります。
宮田:ブランドで服を作るにあたってデザインのインスピレーションとなるものは何ですか?
林:多いのは、過去のアーカイブなどからですね。「マルタン・マルジェラ」などの服の形が好きというところからこの業界に入ってきているので、すでに世の中にあるソースを解釈して再編集する形で『どんなものを作っていこうか?』という感じです。
宮田:今回の生地のショールームにはどんなものを求めていらっしゃったんですか?
林:自身のブランドで使えそうな生地探しが3割。福井の機屋さんと組めそうな加工場さん探しが3-4割。残りが、福井は基本的には大きいロットが多い中で、小ロットのデザイナーズなどにも別注対応してくださる工場さんもありますので、その辺の販路開拓について宮浦さんに相談も兼ねて訪問しました。
宮田:福井の機屋さんと組めそうな加工場さんというのは?
林:福井で生機を沢山持っている織物工場さんがあるので、それと多産地の加工とを組み合わせられないかなと。ボンディングや箔プリントなど。福井の加工場ではできない加工を組み合わせてみたいなと思ってます。
宮田:今回、特に気になった生地はありましたか?
林:探していた加工のバリエーションを持つ加工場さんが出展されていました。生地は石川のトレスアクアさんが気になりました。糸使いでの差別化など独特の企画力を感じました。
宮田:福井の強み、産地で活動するメリットは何ですか?
林:福井は恐らく土壌的には立ち回るのがすごく難しく、ファッションデザイナーが極端に少ないんです。他のファッションデザイナーが少ないこともあって「福井で服を作ってる変わり者が長いことやってるぞ」ということで、自分のことを知ってくれて良くしてくれています。合繊の産地で素材開発というのはハードルがあるし個人事業主では踏み込めないであろうところまで踏み込ませて貰えるところも、東京ではなく福井を拠点にやってきたメリットになっているのかな、と振り返ると思います。
あと、今の時代だとSNSのおかげでどこにいても温度差を感じずに済むのもいいですね。もし情報やコミュニケーションが分断されていたとしたら、あったかもしれない勝手なコンプレックスやプレッシャーがないです。SNSでも国内外の誰とでもリアルタイムでアクセスできますので。
それと、福井県内を車でグルグルすることで求める服が作れるようになったというのは、これまでの9年間やめずに続けてきたご褒美かなと思います。笑
インタビューに向けて用意した質問以上に、たっぷりとお話を聞かせていただきました。林さん、ありがとうございました!
産地を拠点に時代とともに活動される林さんの姿とお言葉、とても勉強になりました。林さんは、福井の繊維産業全体のために課題をとらえて多種多様な動きをされています。林さんだからこそできることを確立して、行動していくエネルギッシュさに圧倒されました。
新しいブランドのデビューも楽しみです!
聞き手:TEXTILE JAPAN SHOWROOM運営スタッフ 宮田
書き手 TEXTILE JAPAN SHOWROOM運営スタッフ 井上