見えていいもの?
我が家のアイドル 17歳の娘。
この子が喋り始めたころのことだから、15年程前の話になる。
自宅から買い物に向かう途中に高速道路の上がり口がある。
この交差点では、ほぼ毎回と言って良い程 信号で止まる。
すると当時の娘は言う。
「くるくる回ってる」
毎回なので、これがもう怖くて仕方なかった。
何がくるくる回っているのか私には分からないからだ。
幼い子どもには、大人には見えないものが見えるとも聞く。
だから私は、毎回その交差点で停止している時間
思考も停止させることで切り抜けていた。
娘には何が見えているのだろう・・・。
ある日 謎は解明されることになる。
突然弟が遊びにやって来た。
じゃぁ食事でも…と出掛けることになり
弟は後部座席のチャイルドシートの隣に座った。
当然のように娘はあの交差点がくると
「くるくる回ってる」
と言う。
優しい弟は、これをどうやってスルーするのかと
私は複雑な心境だった。
すると弟も
「くるくる回ってるね」と繰り返したのだ。
思わず、「何が?」と言わずにはいられなかった。
私の ”思わず” に反撃するかのように 弟は「カンバン」と言い切った。
カンバン?
ぐるぐる回る看板?
「あっ!」
スーパーはその交差点をまっすぐ突っ切るのだが、
左折して少し進むと反対車線にファミレスがあった。
そこのキャラクターが描かれた看板は
そういえば 見事にくるくる回っていた。
謎の回るモノは
大人にもちゃんと見えるものだった。
そうか、良かった。
私が主人にも言えなかった、娘の不可解な言動は
こどもらしいかわいい発言だった。
無事解決。
弟が娘の隣に座ってくれなかったら、
私はずっと触れないまま墓場まで持って行った
…かもしれない。
くるくる回っていた看板は、
数年前からぐるぐる回らなくなった。
理由は分からない。
だけど、左折した先にあるあのファミレスは
未だに我が家で店名を呼ばれることはない。
【くるくる回ってるとこ】
と呼ばれる。
もうくるくる回っていないのに。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?