【創作童話】きつねと四つ葉のクローバー
悪気はないのだけれど、ちょっと自分勝手なきつねが、少しだけ成長するお話です。
きつねは、最近すてきなことを知った。
四つ葉のクローバーを持っていると、いいことがあるらしい。
きつねは探してみたけれど、三つ葉ばかりで、ちっとも四つ葉なんてありゃしない。
ほとんどあきらめかけていたところ、友達のうさぎからすてきな誘いがあった。
「一面クローバーがいっぱいの野原を見つけたの。あなたが探していた四つ葉のクローバーもあるかもしれないわ。一緒に探しにいってみましょうよ。」
「ありがとう! 明日ぜひ連れて行ってほしいな。」
次の日、さっそく、うさぎがきつねの家に迎えにいった。
「今日はとってもいいお天気よ。さっそく出発しましょうよ。」
「やっぱり今日は家でのんびりしたい気分なんだ。野原は逃げないし、また今度にしようよ。」
「それなら、今度でいいわ。」
そういって、うさぎは少し残念そうに帰っていった。
次の日、友達のロバがきつねを訪ねてきた。
「来週の森のお祭りで、一緒にステージで歌ってくれないかい? ぼくひとりだと、みんなの前で歌う勇気がでないんだ。」
「もちろんいいよ。みんなからたくさん拍手をもらおうね。」
きつねが笑顔で答えると、ロバはうれしそうに帰っていった。
お祭りの当日、ロバは、ステージの側できつねが来るのをどきどきしながら待った。
ところが、きつねはいつまでたっても現れない。お祭りもとうとう終わってしまい、ロバはきつねの家に様子をみにいった。
「お祭りはもう終わってしまったよ。何かあったのかい?」
「今日はのどの調子がいまいちだったんだ。お祭りは来年もあるんだし、来年のお祭りで歌おうよ。」
「ぼくは今年のお祭りを楽しみにしていたのにさ。」
そういって、ロバは悲しそうに帰っていった。
翌月、きつねは自分の誕生日パーティーを開くために、うさぎとロバに招待状を届けにいった。
「おいしいケーキや料理をたくさん作って待っているから、お昼ごろ遊びにおいでよ。」
「招待ありがとう。必ず行くよ。」
うさぎとロバが笑顔で答えると、きつねはスキップして帰っていった。
誕生日の当日、きつねは早起きをして、せっせとクルミをたっぷり練り込んだパンを焼いたり、大きなホールケーキを焼いてイチゴを飾り付けたり、大忙し。準備が整うと、「二人はまだかな。待ちきれないや。」と、きつねはうきうきしながら二人を待った。
ところが、三時になっても誰もやってこない。だんだん不安がこみ上げてきて、二人の家まで迎えに行くことにした。
ところが、どちらの家もだれもいない。
きつねの目は、みるみる涙でうるみはじめた。
そんなとき、小鳥がそばを通りかかったので、きつねは、小鳥に呼びかけた。
「ちょっと、小鳥さん! うさぎさんとロバくんをみかけなかったかい? ぼくの誕生日パーティーをする約束をしていたのに、どこにもいないんだ。」
「二人なら野原でみかけたよ。まぁ、気にしなくてもいいんじゃない。誕生日はまた来年も来るんだし。」
そういって。小鳥は空高く飛んでいってしまった。
きつねは肩を落として、とぼとぼと家に帰っていった。家が見えてくると、ドアの前にうさぎとロバがいるのが見えた。きつねは驚いてかけよった。
「二人とも野原に遊びにいってしまったんじゃなかったの?」
「あら、知っていたの? せっかくのサプライズが半減ね。」
そういって、うさぎはいたずらっぽく笑うと、きつねに四つ葉のクローバーを差し出した。
「わあ! 四つ葉のクローバーだ! すごいや!」
「見つけるのに時間がかかって遅くなってしまったの。待たせてしまってごめんなさいね。」
「ぼくからは、歌をプレゼントするよ。きつねくんのために作詞作曲したオリジナル曲だよ。君みたいに上手くはないけれど、野原で特訓してきたんだからさ。」
二人の言葉に、きつねは、うれしくて、うれしくて、胸の奥がぎゅっと熱くなった。
次の日、小鳥は、野原でうずくまりながら、もぞもぞと動くきつねを見つけた。
「きつねくん、いったい何をしているの?」
「こんにちは、小鳥さん。大事な友達へのプレゼントを探しているんだよ。」
頭に葉っぱをくっつけたきつねは、とても幸せそうだった。