「ステルスロック」という技は一体何なのか
ポケモンシリーズには多くの技が存在している。そのなかでも今回は「ステルスロック」という技についてみていきたいと思う。
初出はポケットモンスターダイヤモンド・パール。1つ目のジムリーダー「ヒョウタ」からもらえるわざマシンに収録されている。
その効果はと言うと、交代で出てきた相手に最大HPの1/8のダメージを与えるというもの。割合は固定だがタイプ相性の影響を受け、最低で1/32、最大で1/2に変化する。なお、技を出した時点で場に出ている相手のポケモンに対しては効果がない。
…ストーリーで使うか?この技…
というのも対人戦であればポケモンの交代は常識である。その交代に対していわタイプという無効化されることのないタイプをベースにプレッシャーを与えられるというのは恐ろしい強さなのであるが、ゲーム中のトレーナーで交代を使ってくるのなんてせいぜいバトルタワーのトレーナー程度しかいない(つまりクリアまでほぼ使い道がない)。そのため初心者プレイヤーにはその強さを理解されず「貴重なジムリから確定でもらえるわざマシンの枠を潰してきた」という印象が強い。それにヒョウタはズガイドスのせいで超攻撃型の印象が強いこともあり、ジムリーダーとしてその技の強さを示してこないので、なおさらである(ちなみにダイパのジムリーダーからもらえるわざマシンは全体的にトリッキーであり、単純な高火力技は「ラスターカノン」、よくて「シャドークロー」程度である、対戦では「くさむすび」もよく使われる。「ラスターカノン」に至っては同じ鋼タイプの特殊技が「ミラーショット」と「てっていこうせん」しかなく、しかも「ミラーショット」は何故か剣盾で廃止になった。いや命中とかPPとか強化してやれよ…)
当時6歳のいたいけな小学生だった自分は、その明らかにストーリーで使うに向いていない効果に愕然し、しかしジムリーダーからもらった故に何かしら使いみちがあるだろうと思い売れるに売れなかったのを記憶している。おそらく今ダイパリメイクをやっている諸兄の中で同じ気持ちになっているプレイヤーもいるのではないだろうか。なおパールのROMを見返してみたところ「ステルスロック」を誰に覚えさせていたかは分からなかった。そりゃあリボンの一つも取らずにすぐポケシフターやポケムーバーで転送するタイプの人間でしたよ僕は、はい。
ちなみにプラチナでは誰にも覚えさせることなく売却していた。
なお、ダイパと同世代の金銀リメイクであるハートゴールド・ソウルシルバーではタマムシデパートで購入可能。対戦勢からの強い需要にこたえた形なのだろうか。ちなみに当時のタマムシデパートは「あくのはどう」などと合わせダイパではあまり数が入手できない技を2~3000円で売るという武器商人の様相を呈していた。
ここで問題となってくるのはこの「ステルスロック」、技の元ネタが一体何なのかということである。
我々は日常生活で「消える岩」など見たことがあるだろうか?おそらく多くの人間は「ない」と答えるだろう(ある方がいたら教えてほしい)。しかしこの技はそんな「消える岩」の技である。なんで?
しかも戦闘中のメッセージでは「尖った岩が漂い始めた!」「尖った岩が食い込んだ!」と表記されるだけであって、肝心のステルス部分についての説明が一切ない。剣盾のアニメーションでは一応程度にステルスしている様子が描かれてはいるが、初出のダイパなどではアニメーションすらステルス要素が薄い。何だってんだよ。
タイプ相性の影響を受けたり、重ねがけ出来なかったりする点があるとはいえ、仕様としては「まきびし」に近いわけで。しょだいから雪崩と言ういかにも氷タイプっぽい名前を拝借してきていたプライドのないタイプであるわけだし「いわびし」とかで良かったのではないか、と思わなくもない。
謎は尽きない技なのだがそもそもポケモンにおける岩技は初代から「いわなだれ」がサイコっぽいSEとともに岩をぶつける技であるようになんとなくこの現実世界の岩とは違う振る舞いを見せている部分が多いため、気にしてはいけない、と言われるとそこでおしまいではあるのだが。「ステルスロック」と同期の「ストーンエッジ」も今でこそ大地ごと突きあがる「だんがいのつるぎ」とそんなに区別のつかない技になってはいるものの、初出のダイパでは「なんか細い岩が謎原理で浮かぶ」技に過ぎなかった。
しかし、こんな元ネタが無さそうな技に対してもどうにかして由来をこじつけられるのが大人気コンテンツポケモンの特徴である。過去のオタクたちは「ステルスロック」の元ネタを何だと解釈しているのだろうか、ということでポケモンに関するこじつけが最も盛んな地(こじつけフロンティア)であるピクシブ百科事典で調べてみたところ…
(略)…尖った見えない岩が相手の場を漂い始めるという、どういう原理で何が起きているのか全くわからない技…(略)
と、完全に考察が放棄されていた。エレキブルの記事だと編集者が「牛」だの「鬼」だの「ブルドーザー」だの思い思いのモチーフを描いているというのに、何故だ…
そもそも「ステルスロック 考察」で検索しても対戦でのステルスロックの有用性に関する考察ばかりで元ネタ考察なんて一つもない(そりゃあ興味がないからだろ)。のでここで考えることにしてみたい。「尖っている岩」で「漂っており」、「見えない」もの…それが我々に食い込んでダメージを与えるものだとは一旦考えないでおいたとき、この条件に当てはまるものを見つけた。
竜安寺の石庭である。
竜安寺とは京都市にある寺である(新ゲッターロボの竜馬程度の知識)。ここにある石庭は全部で15個の石があるのだが、どの角度から見ても1つは見えないので「心の目」で見る必要があるらしい。これだ!上から見れば全部見えるしそれを考えると飛行タイプに効果抜群なのはむしろ逆なのではとか言いがかりをつけると無限に出てきてしまうが、ほのおタイプの最大威力技を最初「だいもんじ」にするゲームシリーズであるし、「ステルスロック」も竜安寺の石庭ってことで良いのではないか。
と思って記事を寝かせて置いたら「Pokemon LEGENDS アルセウス」では全然違う普通の攻撃技として「ステルスロック」が出てきていた。なんだかなー!