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ドーナツの穴

第一回 本と食べ物エッセイ

ドーナツホールについて考える。
穴があるから実質ゼロカロリーだとか、某ボカロの有名曲とか。とかなんとか考えていたら食べたくなるというもの。それが実際カロリーオフにならないとしても、だ。

今回作るのは『さめない街の喫茶店』作者、はしゃさんの作品のドーナツだ。作中、なんなら割と大事なポイントで出てくる。

上は二次発酵前。下は二次発酵後。

作った時のポイントは、とにかく捏ねろ。ベタベタとか思う暇があれば捏ねろ。およそどのパン生地作りにもいえるが、粉が水分油分と一体にならなければ、パンにはならない。そのうちイーストとバターの香りがあなたを虜にしてくれる。(そしてパン作りにハマる。ようこそ、こちらは沼だ。
そして一次発酵後成形するときは、穴は広めにとっておくべし。でないと、二次発酵で膨らむので穴が小さくなる。気をつけよ。(写真のツイストっぽくしているのは趣味です。普通に棒にして輪っかに成形がデフォです。ここ試験に出ます。

さてはて、そんな感じで揚げている最中、ネタにした作品の紹介をしたく思う。ほんわり漫画なので、老若男女に押し売りの如く語ろうと思う。
主人公のOL、スズメはある日突然.ルテティアという街の喫茶店、キャトルの一室で目を覚ます。喫茶店の店長である老人、ハクロの元で働くことになったスズメは、夢を見ないルテティアの住人たちと関わっていくことになる。
巨大なネコや双子の幼い魔女、愉快な飲み屋のお姉さん、本屋なんだかパン屋なんだかわからない店の青年、マイペースな尻轢かれ青年、コーヒーに釣られた謎なお姉さん……。(大分偏見混じりの紹介です。
個性豊かな人たちと毎回出てくるのは、美味しそうであたたかなお菓子や手軽な食べ物たちだ。
スズメの手で作られたり、作ってもらったり教えてもらったり。過ごす時間はあっという間で、あったかくて、たのしくて、なんとも平和だ。料理をきっかけにした交流に微笑ましく見ていると、段々と、スズメが感じる街の違和感や居心地の良さにうっかりハマってしまいそうになる。けれどこの街は、”さめない”のだ。もしこのままさめなければ……。

誰しも覚えがあるだろう。白にも黒にもならない、曖昧な空気感の居やすさ。けれど、それがずっと続かないと、自分の何処でわかってしまっている。誰も責めない、聞かないからこそ、積もっていくもやのかたまり。
夢はいつかさめるもの。子ども時代に描いていたものは大人には得難く、遠い日々の宝物だ。なくしてしまったと気づいて、もう忘れたくないから固執する。
そこに、大事なものの明日はあるのだろうか。ドーナツの穴みたいに、ポッカリ開いたその場所に、そっくり埋まるものなどないと知っているけれど。
スズメの抱える不安と共に、読者には結末を見届けてもらいたい。


そうこうしていたら揚げ終わりました。素朴な甘さが食べやすい。しかし、台風が来ている暑い秋にやるもんではない。発酵の進み具合がエグい。けど、美味しい。
なお、私はパン生地タイプのドーナツよりケーキ生地タイプのドーナツのほうが好きです。某店のシナムドーナツは無敵。異論は認める。
終わり。


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