
ゲーマー歴35年のダンジョン紀行#05『TRPG迷宮キングダムと語るダンジョン』
▼ローディング。前回の栞を開くとルールブックが現れた。
ゲーム、遊んでますか!?
ゲームの一ジャンルを掘り下げる記事から、ゲームの攻略記事、ゲームのルールの記事、はては第一線でゲームを制作している方々の最新記事まで、多角的にゲームを語っておりますのが、この『アナログゲームマガジン』です。
私の記事は『ダンジョン』を焦点にコラムを書かせてもらっております。マガジンの中でも異色の記事として、楽しんでもらえたら幸いです。ジャンルを飛び超えて”ダンジョンを掘り下げて”いきます。
今回はダンジョン紀行を書き始めてから、ずっと取り上げようと考えていた国産TRPG『迷宮キングダム』と、『ソードワールド完全版・2.0・2.5』を通してダンジョンを見ていきます。
まず『迷宮キングダム』は2004年に初版が発売されました。次いで2010年に改訂され、新版として生れ変わります。そして2018年、『迷宮キングダム 基本ルールブック』として編纂され、現在まで遊び継がれております。なんと言ってもその特徴が、『世界が全てダンジョン化してしまった世界』を舞台としていること。そんな世界でも、たくましくダンジョンと戦う人々のTRPGです。まさしく、当記事が通らざるを得ない作品。ダンジョン探索が好きな人に向けて作られていることは明らかと言っても過言ではないのではないでしょうか。
また制作の冒険企画局は、斬新なアイデア・設定で現代日本のTRPGシーンを牽引する集団です。そんな冒険企画局が、一体どのようにダンジョンをまとめたのでしょうか。
一方、ソードワールドはファンタジーをベースとしたいわゆる王道RPGとして世に普及しており、日本のTRPGの中では元祖と呼べる作品です。その初版は1989年まで大きく遡ります。途中2008年にシステムの根幹が見直された『ソードワールド2.0』が発売。そして2018年にさらにと大きくルールを改訂した『ソードワールド2.5』として、いまだ遊ばれ続けている人気作です。
そんな人気作ではダンジョンがどう扱われているのか? 今回はその点に注目し、日本のファンタジーTRPGの金字塔とダンジョンの関係も見たいと思っています。
当記事の第一回では、ダンジョンの祖をTRPGの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下、D&D)に起源に置いておりますので、TRPGと言う同じ媒体でどのようにダンジョンを扱っているのか。それぞれの作品に注目していきたいと思います。
――――――――――――――――――――
▼B16F:百万迷宮の描くダンジョン①
迷宮キングダム2004年の発売し、2006年の第二版より、書籍として『王国ブック』と『迷宮ブック』の二冊を基本ルールブックとしていました。
『王国ブック』では、TRPGとして遊ぶ基本的なルール、そしてプレイヤーキャラクターの能力、装備、アイテム、また王国の設備とランダム表と言ったプレイヤーが事前に用意する自分の分身たちにまつわる内容です。
『迷宮ブック』では、対するダンジョンの構成、そこにある罠、モンスター、そして冒険後のお楽しみと言えばドロップアイテム、レベルアップ後の上級ジョブなどが記された後、細かい物語の舞台設定などの、冒険の先に待ち受ける物の内容です。
どこもかしこもダンジョンと言う世界ですが、この区切られた世界を領土として『王国』を作りながら、資金の調達や領土を広げる為に『迷宮』を探索していくTRPGとなっております。TRPGのルールブックはただでさえデータの塊ですが、迷宮キングダムはダンジョンのことしか書いていないのですから最高です。”全てがダンジョン化した世界”にふさわしく、ダンジョンを構成する為のものをどれだけ網羅できるかに、心血を注がれていることを感じます。
もちろん当記事では『迷宮ブック』の方に注目していきます。
”ダンジョンをつくる”の項目をもとに、迷宮キングダムにおけるダンジョンの構成をまとめてみます。大別すると、迷宮キングダムのダンジョンは『部屋』と『通路』によって構成されています。
▼『部屋』
●遭遇
・手掛かりと情報源
>捜索
>脅威をとりのぞく
>話を聞く
>謎を解く
・脅威
>トラップ
>拠点→モンスター
・部屋の風景
▼『通路』
・一本道
・分岐点
・特殊な移動
さて当ダンジョン紀行が特徴と挙げる一つ目は、『部屋』と『通路』に設置する障害の数・強さに、合算して何個・何レベルまでと言う制限が掛けられていることでした。
それは参加者の人数とキャラクターの合計レベルに合わせて、厳密な対応表が存在しています。TRPGではゲームのバランスがGMに委ねられますが、誰がGMをやっても最適なゲームバランスになることはありません。むしろ、GMをやる人は、どのようなバランスで作れば適切なダンジョンとなるか、最初は知らないものでしょう。そういう意味では、この範囲で脅威を配置するのがダンジョンとして適切ですよ、と提示されているのは、ダンジョンの定義として非常に重要な要素です。
前回までのダンジョン紀行で、『報酬と障害』には綿密な関係性と割合があるとお話させて頂いたばかり。報酬の方が多くなるよう設定するのが、良いダンジョンかと語らせてもらいましたが、障害を無事に乗り越えていくのも一つの報酬です。敵を倒せば報酬が手に入りますからね。脅威であり報酬と言う設定の為、適度に倒せる障害と言うのは報酬と言って差し支えないのかもしれません。
何より、多くのコンピューターRPGではその方式を取っていることに気付きます。経験値の多い敵を重点的に狩っている様は、脅威に出会いに行くと言うよりは、報酬を貪り尽くす行為にあたります。
――――――――――――――――――――
▼B17F:百万迷宮の描くダンジョン②
さて、迷宮キングダムにはもう一つ特徴的な所があります。『部屋の風景』を決定する点です。
『世界が全てダンジョン化している』としているので、どこを見てもダンジョンですが、もともとはダンジョンでは無いどこかです。それを再認識する設定となります。
この部屋の風景、GMが必ず決めなければならないのですが、設定をするのも大変です。なので、この迷宮キングダムではGMが決めあぐねた時の為にランダムで自動的に決めることのできる表も用意されています。
それら表は、人工物・洞窟・自然・水域・天空・異界と大別された6つの表があり、さらにそこへサイコロの出た目によって21種類もの『部屋の風景』が自動的に決めることができます。例えば、人工物の風景の表でサイコロを振れば、「石組みの部屋」だったり、「壁画やタペストリーが残る大広間」などの部屋の風景が提示されます。また自然の風景の表なら「巨大キノコの群生地」もあれば、「枯れた森林」などが提示されています。
これが必須であるのは、「部屋の風景」が「選択すること」に対して、大きな役割を果たしているためです。
ここから先は

アナログゲームマガジン
あなたの世界を広げる『アナログゲームマガジン』は月額500円(初月無料)のサブスクリプション型ウェブマガジンです。 ボードゲーム、マーダー…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?