ゲーマー歴37年のダンジョン紀行#31続『ゲームマーケット2023秋の新作ダンジョンをチェック!』
▼年越しダンジョンの薦め。
※当記事に載せさせて頂いているのは「2023秋初出」を中心にしております。初出ではない等、間違いがありましたらご連絡ください。
2023年も間もなく終わります。皆様は今年一年どのような一年でしたでしょうか? 私事としては忙殺される一年を過ごし、落ち着いて何かに取り組むのが難しい一年だったと振り返っております。2024年は腰を据えて、何かしら自分の事業を為せればと思っています。
さて、『アナログゲームマガジン』は、アナログゲームに精通した執筆陣が集まり、一ジャンルを詳しく解説する記事から、ゲームの攻略記事、ルール記述の記事、はては第一線で制作している方々の最新記事まで、多角的にゲームを語るマガジンです。
私の記事は『ダンジョン』を焦点にコラムを書かせてもらっております。マガジンの中でも異色のテーマ型コラムとして、楽しんでもらえたら幸いです。
そして当記事は『ダンジョン』について掘り下げていきますので、ゲームの評価をする記事とは異なるのが特徴です。これはひとえに、製作した皆様が『ダンジョン』をモチーフに選んでくれたおかげと言う感謝と尊敬の念を込めているからです。
また、ダンジョンゲームの紹介を主軸とし、登場するゲームの紹介は全て無料で読めます。無料部分がかなり広い記事ですので、是非最後まで御覧頂ければと思います。ただし、『今年のダンジョンゲーム観』をまとめた段落は有料です。
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▼B94F: ダンジョンが登場する作品
【チョコボの不思議なダンジョンボードゲーム】
※2023春でプロト版の先行体験があり、『ダンジョン紀行』としてすでにプレイ済。
ダンジョンの舞台となるボードをチョコボが歩きます。プレイヤーはバッティング要素をうまくいなしながら、協力して最深部を攻略します。元ネタとなる「不思議なダンジョン」を頑張って再現した意欲作です。
ダンジョンと言う点では、3枚+1枚のボードで構成されており、それぞれ1F~4Fの階層を表しています。部屋の中はすごろく状のマス目が敷かれており、「満腹度」や「HP」を管理しながら進んで行きます。
ボードは表裏あり、難易度が用意されています。4Fのボス部屋には、シリーズお馴染みの「ベヒーモス」、「オメガ」が待っています。
複数人でチョコボを操作し、死神に追いつかれないよう逆算しながら進んで行く緊張感。また行動にバッティング要素があり、ままならない事件が起きることも。そうしてギリギリの戦いを繰り返す焦燥感は、当シリーズを遊んだ人間なら感じる「ダンジョン攻略の難しさ」を感じられます。
ただ電源ゲーム・アナログゲーム両方を嗜む者としまして、元ネタを考えると気になる所は少しありました。気になった点は以下の点です。
不思議のダンジョンシリーズらしい「ランダム生成ダンジョン」や、緻密にパズルを解いていくかのような「緊張感」、そして武具の作成などの「成長」。これらは当ゲームシステムに組み込まれていません。
【だんじょにんぐべい!2】
一人用のダンジョン冒険ゲーム。ダンジョンの構成となるカードをめくりながら進んで行きます。
こちらはちょうど一年前、2022秋に1が頒布しておりました。その時の感想は【#18『ゲームマーケット2022秋の新作ダンジョンをチェック!』をご覧ください。
1と同様に、ダンジョンはカードで構成されています。敵や罠、あるいは幸運な出来事を乗り越えていく、前回から時系列が進み、冒険者として成長した我々が新しいダンジョンへ挑む「2」となっています。今作でも親切なチュートリアルが付いており、シュリンクを開けてすぐに楽しめる内容です。
アナログゲームではなかなか”レベルアップ”が難しいですが、こうして「2」が出るのは嬉しいものです。
【盤上ダンジョン】
二人用のアブストラクトゲームで、5×5マスのダンジョンを舞台にした対戦ゲームです。お互いがボーケンシャ(冒険者)またはモンスターを操作して、先に相手の宝箱に到達できるかを競います。
壁(通路)の配置、ボーケンシャの配置、モンスターの配置をお互いに順番に進めて行くのは、#29 『ダンジョンゲーム、次の”柱”』で想定した通り、”ダンジョンのカスタマイズ性”を有したゲームです。
個人的に特筆するのは対戦ゲームであること。プレイ感覚は珍しいものです。と言うのも、ダンジョンがテーマとなると、同じパーティで協力しがちだからです。ダンジョンをテーマとして対戦するゲームは少なく、様々なダンジョンゲームを紹介させて頂いたダンジョン紀行でも以下2点。
・「ダンジョン・ツイスター」(#10『BGA収録のダンジョンゲーム(2022版)』)
あるいは、
・ダンジョンクエスト(#02『ダンジョンの多様性を比較する』)
くらいでしょうか。
ダンジョンゲームではないですが、見た目やプレイ感からクアルトも思い出します。
ただ、それらを差し置いてこの「盤上ダンジョン」に溢れる魅力は、やはり3Dの盤面にあります。D&Dなどではキャラクターコマやモンスターコマを置いてマスゲームでの戦闘を行いますが、それらを手軽に感じられるのがこの盤上ダンジョンの魅力です。やはり、ダンジョンは「その手に汗握る臨場感」を感じさせる演出が、強い魅力になることを思い出させてくれました。
【レリックテイカーズ】
ダンジョンから出土する遺物を集め、高値で取引をして勝利点を稼ぐ3~5人用ゲームです。ダンジョンに挑むキャラクターカードを使い、袋から出土するレリック・チップを集め、卸先となる依頼書カードに納品し、勝利点を稼いでいく。かなり正統派にリソース勘定をしていきます。
パッケージの雰囲気も良く”ダンジョン”を感じさせ、説明書の一行目に「ダンジョン」の記述があるのはダンジョン紀行としてうれしいものでした。
ただ、プレイしていく中で「ダンジョン」を感じる部分は少ないです。依頼先のキャラクターが挑み、レリックが出土していると言う背景設定があるのみ。プレイしている時は、レリックの種類、依頼書に照らし合わせて、いかに勝利点を得るかばかり考えています。
つまり、これは2023春でも多数出ており、”ダンジョン”と言う概念がすでにプレイヤー側にあり、
・冒険者が恒常的に挑んでいる。
・稼げる経済活動の中心地になっている。
と言うRPGの共通認識がある前提になっています。
【ダンジョンカバン】
全員で協力してダンジョンに挑みます。バッティングに近い形でダイスを選びながら、無事に踏破することを目指します。カードで構成されたダンジョンには、障害や幸運な出来事、アイテムなど【報酬と障害】がバランスよく配置されています。
敵からの攻撃を受けるのは指定された一人。一方、味方を守るカードは隣の人に効果を与えるものが多く、1つの障害に対して、皆で挑んでいく形は良きRPGのパーティプレイを感じられます。
ダンジョンがカードで構成されるゲームは多いですが、カードだけでパーティプレイを表現しているのはダンジョン探索において新鮮でした。
【作ってダンジョン!】
通路の描かれたダンジョンタイルを配置していき、魔王を倒せるように繋げるのが目的。タイルを配置するフェーズ、配置を修正するフェーズ、実際に攻略するフェーズがあり、配置→修正はダンジョン作成のゲーム。攻略はダンジョン攻略のゲームであり、2つのゲームがあると言っても良いプレイ感覚です。
タイル配置はカードとは少しだけ手触りが違い、ダンジョンの通路や壁に立体感を感じるのが良いです。ダンジョンの要素の一つに「空間」も大事ではないかと考察したことがありましたが、やはりダンジョンの印象に大きく関わることを痛感します。カードと比べるとタイルはいいですね。
またダンジョンを作ることに主眼を置いているのは、近年のダンジョンゲームトレンドに即していますね。(前述#29より) 攻略フェーズのコツを理解すると、自ずと作成→修正フェーズの動きも良くなり、良いダンジョンか悪いダンジョンかを作る時点で判断できるようになってくるのも、ダンジョン紀行としてはとても良いゲーム体験でした。
【アフター・ザ・ダンジョン】
ダンジョンの最奥から帰っていくゲーム。カードでダンジョンは構成される。序文にある通り、「宝など目にくれず一心不乱」だったためか、改めてカードでダンジョンを確認して(作って?)進んでいく。無事に帰還することも大事で、それらが勝利点として表され1つのボードゲームとなっている。
独特のデザインでダンジョンを描いている。また、折り返しができないことで、早く帰らなくてはいけないことと、なるべく多く宝を持ち帰りたいと言う二律背反が起きており、報酬と障害のジレンマに独特のプレイ感覚がありました。
個人的なダンジョン攻略の好みではあるが、やはりダンジョンは攻略前にしっかりと宝箱を回収して進みたいなと思いました。
【てのひらダンジョン】
冒険者を雇ってダンジョンの報酬を獲得していくゲーム。ダンジョンは小さなカードで構成されているが、ゲームとして主体となるのは冒険者カードの方でした。個性的な冒険者カードを駆使しながら、報酬となるダンジョンカードの得点が一番高い人が勝利となります。
ダンジョンカードにはアイコンやモンスターの絵が描かれていますが、ゲーム的に重要なのは勝利点の方になるでしょう。むしろ冒険者カード全18種類が、クク21やラブレターのように、一枚一枚が繊細に影響し合っているのが面白いゲームです。その点を見れば、レリックテイカーズのように背景設定としてダンジョンを利用しているゲームと言えます。
【ダンジョン365】
卓上カレンダーを素材とした画期的なコンポーネント。日付を1マスとして、全てにモンスターが描かれているのが特徴的です。ゲームとしては常に戦闘を繰り返すもので、高得点を狙うハック&スラッシュをイメージしているのかもしれません。
一ヶ月に与えられるライフ8つを駆使しながら、どれだけのモンスターを倒せるかを突き詰めます。戦闘相手は一週間の列の中で選ぶため、どのモンスターから倒すかの戦略性もあります。また日付=勇者のいるマスとなり、そのモンスターを倒すのが少し有利になるルールが憎いです。「○月✕日のモンスターは強いから、その日に○月✕日マスのモンスターを倒そう」などもあり得ます。
ありそうでなかったデザインに、ダンジョン紀行としてはとても感動しました。ダンジョンデザインのカレンダーと言うだけでも欲しかったのですが、毎日ダンジョンに挑まなければならないと言うことで、私にとって嬉しい悲鳴です。クリア報告は来年になりますので、是非来年、ダンジョン365の結果報告をお待ち頂ければと思います。
▼B95F: ダンジョンが登場しそうな作品
【エコペン探検隊 どうくつ探検バトル】
6×6マスと壁の描かれたカードが三枚あり、お互いのコマを手前の壁から相手の壁まで進めて二枚先に進んだ方の勝ち。わかりやすいルールのアブストラクトゲームです。
Twitterの方でダンジョンゲームを教えて頂いた所、製作者様からお声がけ頂いたので触らせて頂きました。ダンジョンをイメージしているとのことですが、マス目とコマの移動のあたりは、今回のゲムマで言えば盤上ダンジョンと同じようなゲーム性ですね。
ゲームとしてはシンプルながら面白く、自分のコマが一度に動いてしまう所にジレンマがありました。ただ"ダンジョン"を感じるかと言うと、難しいと言わざるを得ないのは許して頂きたく思います。
・立体感あるコンポーネントか、平面なコンポーネントか。
あるいは、
・具体的な意匠か、抽象的な意匠か。
これらがゲームに与える影響、ダンジョンと感じるかなどを対比して見ることができました。製作コストに大きく差はありますが、"ダンジョン"を表すにおいて、定めるべき意匠や最低限のラインを考える良い機会を頂きました。
【迷宮メイカーズ】
迷路の書かれた四種類のシートを前に、マスキングテープを利用して宝や壁を書き込んでさらにカスタマイズ。それをプレイヤー間で作りあって、自分は渡されたカスタマイズ迷路を、「のぞき穴シート」を使ってうまくクリアすると言う非常にアクティビティな紙ペンゲームです。
「迷宮」がダンジョンに必須かどうかは以前触れましたが、必須ではないにしろ、要件として頻出しやすい「迷宮」を冠しています。そのため注目いたしました。
結論から言いますと、やはり「ダンジョン」を期待すると物足りない部分があります。紙ペンゲームの性質を使ってのアクション要素があり、視野を狭められたり、ペンの線が壁に当たってしまうことへのマイナス点、また残り時間などが点数となるため、「能動的選択」による自身の道を進んでいる感覚や、「報酬と障害」の納得感がダンジョンハックのそれとは少し違う点があったかもしれません。
もちろんダンジョンとは明記されてありませんし、迷宮とついていてもダンジョンではないことが多いことは一度確認していますが、その少ない事例としての確認であったので、「ダンジョンではない」ことを判定できたことがダンジョン紀行のポイントかと思います。
紙ペンゲームとしては、昨年のダンジョンのようなアプローチと似ており、それでいて新しい体験になっていたので面白かったです。
【祈りの迷宮】
これは、非常に濃厚なダンジョンゲームです……!
祈りの迷宮は、ウィザードリィのような古典ファンタジーを感じさせる濃厚な物語から始まり、ボックスの中にキャラクターシートやサイコロ、世界設定本などを封入した古きTRPGボックスのような内容物のゲームです。タイトルや説明書には"迷宮"としか記述がないですが、迷宮は「ダンジョン折り紙」を使って表していたり、本格的な探索・戦闘システムもあります。
ゲームブックのようなシナリオブックもあり、主人公を変え、繰り返し遊ぶ楽しさもあります。罪人が主人公であったり、セピアで統一されたイラストなど、ダークな世界観がゲーム全体の雰囲気を引き締めています。
その作り込みに、もちろん個人的な好みはあるでしょう。しかしながら、ダンジョン紀行としてはとても感銘を受けた次第です。ダンジョン要素が幅広く盛り込まれ、上手に一つにまとめられたワンボックスゲームでした。
▼B96F:2023年のダンジョンを振り返る。
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