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日本、そしてアメリカで大寒波が到来 大雪に 地球温暖化により「冬の嵐」が増加する 一方、冬季死亡率の増加も 断熱化住宅進まず

 連日、冬型の気圧配置の影響で、日本海側を中心に断続的に雪が降り続いている。26日の午前11時現在、山形県大蔵村肘折で169cm、西川町大井沢で157cmの積雪を記録(1)。

  17日からの大雪により、除雪作業中の事故により亡くなる人も。総務省消防庁によると、26日時点でこれまでに全国で17人が死亡、110人が重軽傷を負った。

 一方、新潟県佐渡市では停電発生から9日目となった26日時点でも、およそ900世帯で停電が続いた(2)。

  地球温暖化で冬の嵐が増加気候変動に伴う地球温暖化の影響により、大雪など「冬の嵐」が増加していくことが、研究で分かっている。

 冬の嵐の要因となるのが、「爆弾低気圧」。気圧が24時間で24ヘクトパスカル以上下がり、北日本を中心に大雪や暴風をもたらす。

  これが日本列島の南を通れば、東京や名古屋など、普段、雪に慣れていない地域でも、大雪が積もる(3)。たとえば、2014年2月の豪雪災害がそうであった。

  一方、近年、冬季死亡率の増加という“冬の寒さのリスク“というものが注目されている(4)。

 

アメリカでも 「40年に一度」の寒波

 

 大寒波はアメリカでも。米国各地では24日、この冬一番の寒波が襲来。悪天候による停電や交通事故、空の便でも欠航や遅延が相次ぐ。クリスマス休暇の人々の足が大幅に乱れた。

  12月に入り、北極では気圧が高く日本などが位置する中緯度の付近では気圧が低い「負の北極振動」と呼ばれる現象に陥った。このため、北極の寒気が中緯度域に放出された(5)。

  北アメリカにも寒気が流れ込み、シカゴ付近を寒冷前線が通過。前線が通過した後は、強い寒気が流れ込み、上空1500メートル付近の中心はマイナス20℃以下で、この寒気がインディアナ州からオハイオ州、ペンシルバニア州近辺に流れ込む。いわば、爆弾低気圧だ。

  シカゴはマイナス23℃を観測した。高層ビル街を流れる川には、氷の霧が漂う。まるで町全体が冷凍庫のような状態だとも(6)。雪だけなく、激しい”波”が住宅街を襲う。

  都市部にも水が押し寄せた。ニューヨークのブルックリン地区も高潮により、冷たい海水が町を襲った。寒波は、「40年に一度」ともいわれる(7)。これまでに60人以上が死亡、週末だけで飛行機8000便弱が欠航。

 地球温暖化により「冬の嵐」が増加するメカニズム

 
 今年2月、爆弾低気圧が「日本の東の北太平洋で急増中」という論文が発表。

  爆弾低気圧とは、正式には、短時間で中心気圧が急激に下がる温帯低気圧の通称(8)。アメリカの気象学者の故フレデリック・サンダース氏とカナダ・マギル大学のジョン・ギャクム教授が、1980年に発表した論文で、

 「緯度60度にある低気圧の中心気圧が24時間で24ヘクトパスカル以上減少するもの」

と定義(9)。ただ日本の気象庁は、この用語を用いずに、「急速に発達する低気圧」と言い換える。

  爆弾低気圧が日本の東の海上にあると、北日本に豪雪をもたらしやすい「西高東低」の冬型の気圧配置を強める傾向に。そのため、低気圧が接近していない場合でも広範囲に影響をもたらす可能性も。

  気象庁のデータでは、爆弾低気圧が発生しやすい冬の間の東シナ海の南部の海面水温は、1961年~90年と91年~2020年の期間で0.7℃高まった。また東京大学の岡島悟助教授は、

 「日本の太平洋側の海面水温の高まりも無関係ではない」

(10)

 と指摘。

  温かい海面は、水蒸気を増やし、上昇気流も生む。上昇気流により冷やされた水蒸気は、水滴(雲)に姿を変えるときに熱を放出。熱がさらに上昇気流を強めて積乱雲を発生させる。これが爆弾低気圧発生のメカニズムだ。

冬季死亡率の増加 断熱化住宅進まず

 

 一方、近年、冬場の死亡率の増加が注目されている。冬場の寒さが命の及ぼす危険は、北海道や東北地方よりも関東地方の方が高いとみられることがわかった(11)。

  2011年4月からの10年間で、冬季(12~3月)の死亡増加率が全国で最も大きいのは栃木県の21.5%で、北海道の2倍を超えた。

  専門家は、住宅の断熱化が北国に比べ、進んでいないことが要因とする。調査をした慶応大学の伊香賀俊治教授(持続可能性工学)によると、死亡増加要因の6割を、心疾患、脳血管疾患、呼吸器系疾患が占めた。

  教授は、

 「家が寒いことで起こるだろう三大疾患だといわれている」

(12)

 と指摘。代表的なのは、入浴時など急激な温度変化がもたらす「ヒートショック」だ。また冬季死亡増加率が小さい地域ほど、断熱性住宅の普及率が高い傾向も分かった。

  死亡増加率が全国で最大の栃木県の健康増進課の担当者は、

 「以前から脳卒中を県の課題と位置付けてきた。栃木は朝の冷え込みが厳しい割に北海道や東北に比べると住環境の対策を取っていない」(東京新聞、2022年3月26日)

(13)

 とし、近年はチラシなどで内窓や断熱材の追加を促す。

  住宅の高断熱化を進めることは、結果、冷暖房の効率を高め、二酸化炭素の排出抑制にもつながる。


(1) FNNプライムオンライン「記録的大雪 全国で死者17人に 新潟・佐渡市で停電9日目」2022年12月26日

(2)FNNプライムオンライン、2022年12月26日

(3) 矢野摂士「「冬の嵐」温暖化で増加中」日本経済新聞、2022年11月20日付朝刊

(4)東京新聞「寒さのリスク 冬季死亡率 北海道より関東」2022年3月26日付朝刊

(5)白石圭子「負の北極振動が顕著 北極の寒気が放出 北アメリカにも寒波襲来」tenki.jp、2022年12月23日、https://tenki.jp/forecaster/k_shiraishi/2022/12/23/21111.html

(6)テレ朝news「アメリカ大寒波 街は冷凍庫に あらゆるものが凍り外出危険」Yahoo!ニュース、2022年12月26日、https://news.yahoo.co.jp/articles/a4dcaaf8157c72207d5137495a37babb49afa493

(7)テレ朝news、2022年12月26日

(8)矢野摂士、2022年11月20日

(9)矢野摂士、2022年11月20日

(10)矢野摂士、2022年11月20日

(11)東京新聞、2022年3月26日

(12)東京新聞、2022年3月26日

(13)東京新聞、2022年3月26日

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