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いよいよ参院選へ突入 そもそも参議院とは? 海外の二院制事情 日本の少ない国会議員の数

 参議院選挙は今月22日公示、来月10日投票の日程で行われることとなった。選挙では、非改選の議席を除く選挙区の74議席と神奈川で欠員となっている非改選の1議席、さらに比例代表となる50議席の合計125議席をめぐり争われる。

 政府は通常国会の閉会を受け、15日午後に臨時閣議を開き、6月22日公示、7月10日投票の日程で参院選を行うことを決めた。選挙は、現在のところ、選挙区と比例代表議席の125議席をめぐり、527人で争われる見通しだ¹。

 選挙における「公示」とは、憲法第7条の「天皇の国事行為」における選挙の際に用いられる。これにあたる選挙は、衆議院の総選挙と参議院の通常選挙のときだけ。

 そのほか、衆議院・参議院の再選挙・補欠選挙、都道府県知事選挙などは「告示」という用語を用いる²。

 参議院全体の定数は、2019年と今年で各3議席増やされ、今回の選挙で248議席となる。このうちの半数の改選議席124議席(選挙区74、比例代表50)と、非改選の神奈川選挙区の欠員1の合計125議席を争う、選挙戦。

 自民、公明両党の非改選議席は合計69あり、今回の選挙で56議席を獲得すれば、定数の過半数の125議席に達する。

 一方、参院選において勝敗に影響しやすい改選の1人区をめぐり、立憲民主党などの野党が候補を一本化したのは、11選挙区にとどまっており、ほぼ、無風の選挙戦となるようだ。

 選挙後、岸田首相は早くも「黄金の3年」を迎えることができ、長期政権も視野に入ってくる。


参議院とは何か


 日本の国会は「衆議院」と「参議院」の2つの議院から構成される。この仕組みを「二院制」、「両院制」ともいう。

 二院制のメリットとしは、異なる視点で法案を審議することで、国民のさまざま意見をできるだけ広く反映させることができる。

 また、一つの議院で決めたことをさらにもう一方の議院が検討することにより、問題解決における審議を慎重に重ねることができる。

 さらに一つの議院の行き過ぎを抑え、あるいは足りないものを補ったりすることができるメリットも。

 参議院の定数は衆議院の半数程度であるが、しかし「解散」がないこと、任期が6年と衆議院の4年よりも長いことにより、継続して長期にわたり法案の審議を追うことができる。

 任期は6年だか、所属する国会議員の半数が3年ごとに入れ替わるため、参議院選挙も3年ごとに行われる。

 参議院の役割としては、

・法案の審議
・法案や決議などの議案の発議(提案)
・内閣への質問主意書の提出
・国民からの請願の紹介
・両院協議会での審議
・参議院の緊急集会

などがある。

 このうち、参議院だけに認められるものとしては、「参議院の緊急集会」のみだ。

 内閣は、人数が多い衆議院で多数派から支持を得ることができないと法案をつくることができない。そのため、参議院は衆議院と緊張関係を保ちつつ、政府を監視し、誤りを是正する「良識の府」となることが求められる。

 ほか「再考の府」、あるいは特に参議院の選挙以降、政局が大きく動くことが多いため、「政局の府」と呼ばれることも。

 一方、国会議員を指して「代議士」というが、この代議士には参議院議員は当てはまらないという考え方も存在するという³。

 戦前、日本の国会は「衆議院」と「貴族院」とで構成されていた。このうち、貴族院は貴族の出身者によって構成されていたため、必ずしも「国民の代表」とはいえず、現在においても参議院議員に対しては、代議士という言葉はあまり使われていないようだ。

岸田首相、「与党で過半数」


 通常国会閉会後の15日の記者会見で、岸田首相は参院選の争点について、

 新型コロナウイルスとの闘いやウクライナ侵略、物価高騰など世界的な歴史を画する課題に日本がどう挑戦するか。これを国民に判断いただく選挙だ。

との見解を示した。

 勝敗ラインは、自民、公明両党で現在、69議席を保有する非改選を含め、

与党で参院の過半数(125議席)

に設定。与党が今回の選挙で56議席を獲得すると、このラインに達する。

 首相は、

公約の重点項目として、憲法改正をしっかり掲げて選挙を行う。

としたうえで、憲法9条への自衛隊の明記など自民党憲法改正案4項目に触れ、

 どれも現代的な課題。選挙で丁寧に説明し、結論を出すべく進めたい。


とする。一方、野党が「岸田インフレ」と批判していることに関しては、

 ロシアによる価格高騰、有事の価格高騰だ。

と反論。また自らを本部長とする「物価・賃金・生活総合対策本部」を発足させ、

最大限の警戒を持って対応する。

とアピールした。

 自民党は現在、各世論調査の参院選比例代表の投票先で、主要な野党に4倍もの差をつけている。ある参院幹部は、65議席を獲得し圧勝した2013年の参院選と、

 今回のムードは似ている。

と話し、改選議席55からの大幅増を目指す⁴。

 一方で、ここにきてスキャンダルも相次ぐ。

 (勝敗ラインの)ハードルが低すぎる(自民党参院中堅)

西日本新聞、6月16日朝刊

との声も上がっている。

海外の二院制事情 少ない日本の国会議員の数 公務員の数も

 
 列国議会同盟(IPU:Inter-Parliamentary Union)のデータによると、2016年8月末時点で、世界193カ国のうち、一院制を採用しているのは116カ国(60%)。

 日本と同じ二院制(両院制)は77カ国(40%)で、世界的には一院制が多数となっている⁵。

 一院制の国としては、中国、トルコ、韓国、イスラエルやデンマークなどがある。

 二院制は、北欧を除く先進国が多く、日本のほか、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダなど。

 一院制のメリットとしては、審議の早さがあげられる。両院の対立による決議の遅れがなく、意見は一致している場合の重複した議論を避けることができるため、速やかな法整備や予算の成立が可能となる。

 また、二つの議院を維持する費用も削減される。

 北欧ではもともと二院制が主流であったが、しかしデンマークが1953年に、スウェーデンは1970年に、ノルウェーは2009年に一院制にそれぞれ移行した。

 一方、一院制から二院制へと変更した国も存在。スペイン(1976年)、ルーマニア(1991年)、ロシア(1993年)、カンボジア(1998年)などだ。

 人口が1000万人に満たない北欧諸国は一院制に移行する一方、一院制から二院制への移行は、社会主義から連邦制、あるいは民主制国家への以降など国家体制が大きく転換した際に起こった。

 他方、近年、「国会議員数の削減」が叫ばれるが、そもそも現時点で日本の国会議員の数は世界的に見ても少ない。人口100万人あたりの国会議員の数は5.56人とデータ比較可能な154カ国中、135位だ⁶。

 最も多くなったのは、コンゴ共和国で人口100万人に対し、131.6人、ついでガボン、エストニア、スワジランドとアフリカ諸国がならび、次いで北欧の27位フィンランド、28位スウェーデン、33位デンマークとつづく。

 下位に、142位ロシア、147位ブラジル、150位中国、153位アメリカ。最下位はインドで0.6人であった。

 そもそも、日本は公務員の数も少ない⁷。そのことは、結局は国家体制の弱さを招く。

(1) NEK NEWS WEN『参院選 7月10日投票決定 選挙の仕組みとは? 各党はどう臨む?』2022年6月15日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220615/k10013672341000.html

(2)NHK 放送文化研究所『「公示」と「告示」の使い分け』https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/054.html

(3)山口和史『衆議院と参議院の違いってなに?5つの違いを簡単解説』政治ドットコム、2021年2月15日、https://say-g.com/house_of_representatives_house_of_councilors-90)。

(4)西日本新聞、6月16日朝刊

(5)THE PAGE『1院制と2院制、世界の国会で多いのは? 日本は参院のあり方を論議』Yahoo! ニュースオリジナル、2016年9月3日、https://news.yahoo.co.jp/articles/52d181d981ff51f1322a364f877e38f1c2834788。

(6)THE PAGE『日本の国会議員数、世界で何番目? 世界の国会議員数を比べてみた』Yahoo!ニュースオリジナル、2016年9月4日、https://news.yahoo.co.jp/articles/f7b1118a9552396922d9bba6d258c787b2e66d7b

(7)舞田敏彦『日本の公務員は先進国で最も少なく、収入レベルは突出して高い』ニューズウィーク日本版、2016年10月5日、https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-5959.php

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