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この冬、懸念される トリプルデミック 新型コロナ+季節性インフル+RSウイルス 世界の状況 日本の状況

 この冬は、新型コロナだけでなく、3つの感染症が同時に流行する「トリプルデミック」の脅威が高まっている。

  トリプルデミックとは、新型コロナウイルス(Covid)と季節性インフルエンザ、さらにRSウイルス(Respiratory Syncytial virus)による呼吸器系感染症の3つが同時にパンデミック(感染爆発)を引き起こす可能性を指す。

  アメリカではすにその兆候が見られている。

  RSウイルスは一般にはあまり知られていないが、世界的に例年11月から翌年の1月にかけて流行する呼吸器系の感染症。感染すると、咳は発熱、鼻水、のどの痛みなど、風邪と似た症状を引き起こす。

  アメリカでRSウイルスやインフルエンザの感染が急増した背景には、これまでの新型コロナ対策の反動があるようだ。

  これまでマスクの着用や社会的距離の確保、あるいは学校閉鎖や旅行制限などの厳しい対策が施されてきたが、それは単に新型コロナのみならず、他の感染症を抑えることにもつながった。

  しかし今年9月、バイデン政権が「新型コロナ終息宣言」を出すなど、ここに来て感染症対策が大幅に緩和、結果、RSやインフルエンザなどの感染症が今年勢いを増してきたとも。

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インフルエンザ 世界の状況


 季節性インフルエンザは、現在、アメリカで大流行の兆しがある。米CDC(疾病対策予防センター)によれば、今年すでに400万人以上が感染し、それによる死者は2100人以上に上ったという(1)。

  しかも、いまだ感染拡大の初期段階にあり、今後、冬場を迎えて急増する可能性もあるという。少なくとも、ここ10年で最多の感染者数を記録することは間違いないと思われる。

  ただ、インフルエンザの今季流行の兆しはあった。南半球にあるオーストラリアでは今夏にインフルエンザが大流行していた。

  日本は北半球にある島国であり冬にインフルエンザが流行するが、オーストラリアは南半球に位置し、主に夏にインフルエンザが流行する。

  オーストラリアでは新型コロナの感染者数は5月~8月にかけて7日間平均で1日2万人~4万人で推移。

  今まで「インフルエンザと新型コロナは共存しないからインフルエンザの感染拡大は起こりえない」との説明もあったが、しかしオーストラリアで同時期での流行拡大が起きた。

  5~9歳、5歳未満の子ども、10~19歳の感染が多い。インフルエンザは世界中で過去2年、流行していなかったため、集団免疫はこれまでと比べ大幅に落ちている。

 とくにインフルエンザに一度も感染していない2歳未満では顕著だ。

RSウイルス 世界の状況


 RSウイルスは一般の成人では重症化するリスクは小さいが、しかし乳幼児のように気管支の発育が未熟な人や体力の衰えた高齢者、さらに免疫障害の患者などの重症化リスクが高まる。

 重症化すると、気管支炎や肺炎などを引き起こす。

  それらによる呼吸器不全から血中酸素濃度が低下し、命の危険も及ぼす(2)。

  RSウイルスによる感染症には現在のところ特効薬は存在せず、重症化した患者には対処療法や人工呼吸器などで対処するしかない。

 ただ、それでも小児患者の場合、病院で数日間、手当を受ければ、たいてい症状は治まり、無事に退院をすることができる(3)。

  ワクチンも存在しないが、ただすでに臨床試験が最終段階に入っており(4)、早ければ今後1~2年以内に実用化(商品化)されるとみられる。

 現在のところRSウイルスの予防には、ワクチンではなく、「パリビズマブ」というモノクローナル抗体製剤が使用される(5)。

  通常は感染した場合に入院リスクが高くなる子どもたちに使用が限定されているものの、今年は例年より早い時期からの感染者の急増に伴い、米国小児科学会は対象を拡大している。

 日本の状況

 
 コロナ禍3年目となる今年は、日本では新型コロナによる死者は急増。2021年から倍増し、すでに3万人を超える。今後はインフルエンザの流行も懸念される。

  その兆候は医療現場ですでに現われている。先日、発熱と喉の痛みなどでPCR検査を受けた30代女性が言う。
 
「検査の結果、コロナ陰性、インフルエンザ陽性と判明しました。5月にコロナに感染した時より喉の痛みや鼻詰まり、倦怠感などの症状がひどく、熱も39℃を超えて悪寒で震えました。時々発作のような咳も出て、本当につらかったです」

(6)

  医療ガバナンス研究所の上昌広医師は、週刊ポストの取材に、

 「コロナワクチンとの同時接種への抵抗感からか、インフルの予防接種を受けていない高齢者も多い。しかし、コロナに注目が集まりがちですが、インフルの毒性も強い。この3年は流行がなく多くの人の免疫が落ちているはず。一気に広がりかねません」
 

(7)

と話す。

  RSウイルスも、日本で急増。日本小児科学会のホームページによれば、今年の5月ごろからRSウイルスに感染する小児患者が例年をしのぐ勢いで、急増。

 当初は中部・近畿地方などごく一部の地域における流行であったが、そこから全国へ拡大したという。


(1) 小林 雅一「欧米で広がる「トリプルデミック」への危機感…“3重感染爆発”は日本でも起こり得るのか?」現代ビジネス、Yahoo!ニュース、2022年12月1日、https://news.yahoo.co.jp/articles/bd711dc1eff14c4a999dba7f814598b25a5c3220?page=1

(2) 小林 雅一、2022年12月1日

(3) 小林 雅一、2022年12月1日

(4) 小林 雅一、2022年12月1日

(5)Nina Shapiro「コロナ禍で起きる「トリプルデミック」、子どものリスクが上昇」Forbes JAPAN、Yahoo!ニュース、2022年11月18日、https://news.yahoo.co.jp/articles/06081716808acb3cc5527cc281ee66a71bd1f59e?page=1

(6) NEWS ポストセブン「【トリプルデミック】年末年始にウイルス3種流行の懸念 感染者1日75万人の予想も」2022年12月12日、https://www.news-postseven.com/archives/20221212_1821416.html?DETAIL

(7)NEWS ポストセブン、2022年12月12日

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