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COP27 閉幕 何が議論されたのか 「損失と損害」 一方、グレタさんは不参加 議長国エジプトの「強権運営」問題視

 今月6日からエジプトで開かれていた「COP27」は2週間にわたる交渉を経て、会期を延長、現地時間20日、無事に成果文書を採択して閉幕。

 成果文書では、気候変動による被害を受ける途上国を支援するため、新たな基金を創設するとした。

 また成果文書では、世界の平均気温の上昇を1.5度までに抑える努力を追求するとした昨年のCOP26における合意が改めて盛り込まれ、その重要性を強調。

 さらに各国が温室効果ガスの排出量を削減する努力を高めることが緊急に欠かせないとし、必要に応じて、2030年までに削減目標を再検討するとし、深刻さを増す気候変動への対策に各国が一致して取り組むよう、求めた。

 COP(コップ)とは、締約国会議(Conference of the Parties)のこと。今年開かれた会議は、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)の27回目の会議なのでCOP27だ。

 条約の最高意思決定機関と位置付けられ、すべての条約締結国(2021年11月現在、197カ国・地域)が参加し、温暖化対策の国際ルールについて話し合う。条約の目的は、大気中の温室効果ガスの濃度を安定させること(1)。

 来年、2023年のCOP28は、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれる。

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COP27における論点 「損失と損害」


 COP27では、気候変動による被害に関する、「損失と損害」(Loss and Damage)についての議論に重点が置かれた。

 議題は、今年初めの開催されたドイツにおけるボン会議において、パキスタン側から初めて提案され、正式に採用(2)。

 しかもパキスタンは、ここ数カ月の間、前例のない洪水により、国土の3分の1にわたり大きな被害を受けている。

 この問題は、過去30年以上にわたり議論されてきたが、正式に議題となるのは初めて。 昨年の英・グラスゴーで開催されたCOP26では、発展途上国のグループが先進国に対し、損失と損害に対する資金提供を求めたが、アメリカやEUなどから反対に遭い、最終的に否決。

 しかし今回、途上国側が気候危機による被害を強く訴えるとともに、先進国側の協力が不十分であると不満の声が上がり、先進国が途上国を支援する仕組みを作ろうと議論された。

 「損失と損害」という用語は、気候危機の責任が最も少ない途上国で発生した損失を、先進国や二酸化炭素排出量がとくに多い高排出国に負わせるべきと主張する国や組織により使用され始めた(3)

 ただ、損失と損害は、「気候補償」であると説明されることもある。

グレタさんは、不参加 デモ規制など批判


 一方、スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリさんは、COP27に不参加の意向を示した。グレタさんはCOP27について、

「各国の権力者が、うそやごまかしの温暖化対策を訴える機会になってしまっている」

(4)

などと批判したほか、開催国であるエジプトでは公共の場でのデモが厳しく規制されていると指摘、参加しないとした。

 グレタさんは昨年、グラスゴーで開かれたCOP26では現地入り。気候変動対策を訴えるデモに参加し、

「政治家や権力者たちが、気候変動の影響を受けている人がいるという現実を深刻に受け止めているふりをしているだけだ」

(5)

などと会議に参加する首脳らを厳しく批判していた。ただ、今回の開催地エジプトではデモ規制が厳しいため、参加しない意向を示す。

 一方、環境活動家がロンドンのナショナルギャラリーにおいてゴッホの代表作「ひまわり」にめがけてトマトスープを投げつけた事件については、

「私たちがこれまで行ってきた方法では目的を達成できないことが分かったため、人々は新たな方法を見つけようとしている。この種の異なる行動が出てくることは自然に予想できる」

(6)

とする。

議長国「エジプト」の強権運営 各国からは不満が


 また議長国であるエジプトは、強権的ともいえる運営に終始。結果、各国からは不満の声は相次いだ。

「議長国エジプトの仕切りは強引だ。ここは2国間交渉の場ではない」

(7)

 この声は、会期終盤を迎えた19日深夜の、ある先進国のベテラン交渉官のものだ。会議が延長された中でも、会場の撤収作業が早々に始まり、運営のちぐはぐさも目立ったという。

 各国の代表団からは、

「長年の気候変動交渉の流れを踏まえずに議事を進めている」

「思い込みが強い」

(8)

といった厳しい見方も。

 エジプトは、強権的なシン大統領が率いる。2011年の民主化要求運動である「アラブの春」でムバラク独裁政権が崩壊したのち、選挙で誕生したイスラム色の濃いモルシ政権を軍が排除し、2014年に誕生したのが軍出身のシン政権。

 ただ、長期政権を目指し治安維持を最優先とするとともに、人権侵害や言論弾圧も日常化。会期の前半には、獄中でハンガーストライキを続ける民主化活動家の早期釈放を求める声が欧米から強まった。

 そのエジプトは、今年9月、2036年の夏季オリンピック開催国に立候補する意思を表明(9)。実現すれば、アラブ、アフリカ諸国では初めてとなる。


(1) 朝日新聞「COPとは? パリ協定との関係って? 歴史やポイントをわかりやすく解説」2021年11月9日、https://www.asahi.com/sdgs/article/14472373

(2)Think ESG「COP27特集: 気候変動における「損失と損害」とは?」2022年11月13日、https://thinkesg.jp/cop27_loss_damage/

(3)Think ESG、2022年11月13日

(4)NHK NEWS WEB「グレタさん エジプトでの「COP27」不参加へ デモ規制など指摘」2022年11月1日、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221101/k10013876671000.html

(5)NHK NEWS WEB、2022年11月1日

(6)ロイター「COP27はグリーンウォッシングに利用、グレタさんが批判」2022年10月31日、https://jp.reuters.com/article/climate-un-greta-idJPKBN2RQ09E

(7)真野森作「COP27議長国エジプト 強気の運営、各国からの評判下げる」毎日新聞、2022年11月20日、https://mainichi.jp/articles/20221120/k00/00m/030/137000c

(8)真野森作、2022年11月20日

(9) 真野森作、2022年11月20日

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