うた恋い。であなたの創作タイプがわかる
『超訳百人一首うた恋い。』という漫画を知っていますか。ニコニコ動画で「またお前か・・・愛してる」のタグを付けられた杉田圭先生の作品です。百人一首の恋の歌のエピソードを現代語も交えながら漫画で描き、単行本4巻として世に出版されました。2012年にはアニメに。具体的にどういうもんなんじゃいこの説明だけじゃようわからん!と思われます。リンク貼ります。
バンダイチャンネルでアニメの一話が無料で見れます。
だいぶ話題になったと思いますし、リアルタイムで見てた!という方もいらっしゃると思います。2021年7月、杉田先生がtwitterに復帰なさりました。当時のことも振り返りながら、うた恋い。について語っていきたいと思います。タイトルのことは後々説明を。
杉田先生~~~!!!改めて帰ってきてくれてありがとうございます!先生の絵が生きてるうちにまた拝めるなんて最高です!!
おっとオタクがあらぶってしまった。
創作タイプがわかるってなんじゃいそろそろタイトルについて説明せい前置きが長いわ、と思った方すいません。タイトル詐欺にならないうちに説明します。
まず百人一首のついての説明をば。小倉百人一首は、藤原定家が山荘の障子に貼る色紙型のために選んだ平安時代中心の歌人100人の歌。100首の中でなんと恋歌が43首を占めるという、なんとも定家の趣味爆発な和歌集。
そう、うた恋いにはいろんな男女が登場するのです。結婚して一生を添い遂げた/仲を引き裂かれ悲恋で終わった、肉体関係がある/なし(ここらへんは杉田先生の創作かと思われますが……)などと色とりどりより取り見取り(?)で男女CPが好きな人は誰しも、ビビッと来る2人に出会えるというわけです。その2人のことが忘れられず、後々ハマる男女CPが、
「ハッ! これってうた恋い。のあの2人に近くない!?!?」
となる人は意外に多いと思うんですよ。
うた恋い。のアニメは13話で完結しています。原作では登場しているもののアニメにならなかった二人のエピソードもありますが、この記事ではアニメでエピソード化された二人組の特徴を言語化して語っていきたいと思います。何はともあれうた恋い。は本当に良いぞ。平安時代のあれこれがわかりやすいし、日本史の関係図だけでも妄想が出来るようになります。(これは私だけですが、男性でも触れてみてほしいアニメであり、漫画です)
アニメ第一話 2エピソード収録
業平と高子
スケコマシ女タラシ奔放男×高飛車高貴系お嬢様
言わずと知れた当代きっての色狂い・在原業平。百人一首17番「ちはやふる」の歌で有名ですね。伊勢物語のモデルともいわれた人物で、「芥川」の段で高子との駆け落ちをしようとするのですが、高子の兄・藤原基経の妨害で失敗しています。「芥川」ではそれは鬼の仕業となっていて、「ある男」が連れてきた女は、鬼に食われています。(ある男=在原業平です)ここらへんは古典の授業で取り扱った人もいるかもしれません。詳しいことはアニメで見て頂きたいのですが、この物語で業平が「いざ一緒になろうとした女性」が高子だったわけです。この2人は悲恋で終わるのがマジで良いのですが、2話も2人の要素があるので、見て。
在原行平と弘子
真面目純朴着実紳士×三歩下がって支える系妻
このエピソードのキーセンテンスは「自分の男運の良さを噛みしめてしまいます」だと思っています。うわ、もうこの文章だけで2人の夫婦仲の良さが伝わってくる。良い。(自分で引っ張っておいて……)業平の兄の行平ですが、弟とまったく似ていない。嫁と一生添い遂げます。個人的には彼の方が業平より色気があるなぁなんて。色々対照的な回だと思います。
第二話 陽成院(貞明)と綏子内親王
ツンギレ不器用男×ふわふわおっとりかつ芯が強い系女子
この2人の結婚は親同士が決めた、というのがまずポイント高いです。貞明は幼少期から妥子内親王を意識しているのですが(本人無自覚)、悪行で徐々に妥子内親王の好感度マイナスになり、見かねた中将・在原業平が貞明に歌を詠むことを進められます。業平は当時、蔵人頭として幼くして天皇になった貞明の世話をしていました。大人になっても妥子内親王に酷いことを言う貞明。それを見かねた内親王は……? という話。エンダアアアイヤァァァ、を脳内で流していた記憶があります。ツンデレじゃなくて、ツンギレってところが、貞明の良いとこです。
第三話 良岑宗貞と小野吉子
正統派イケメン(シスコン)×気が強い自覚系美少女
シスコン最高!うた変で公認です。宗貞の「この時代、女の人がそういう役割なのは仕方がない」って言葉をよく覚えています。すれ違い男女で、一生結ばれないところが本当に好きです。小野小町は、若い時の傲慢さが理由で早死にしたなんて言われてますが、男性に百夜通いを要求する吉子なりの理由があって、グッときました。本当に悲しい、この時代特有の女性の立場の話なので、2人の考え方の違いも含めて、うた恋い。の象徴的な話だったかもしれません。別れた後も親交が続いていたので、あんまり悲しく感じない人もいるかも。
第四話文屋康秀と在原業平の話
2人の友情もとても良いです。業平の方が歌の才能的にもやはり一枚上手、な描かれ方をしていますが、康秀は面倒見のお兄ちゃんって感じで2人のバランスはすごく見る人を安心させると思います。小町も出てきます。高子と別れてからも、女遊びをやめず、ついには小町にも文が来るように。高子と小町の業平のあしらい方がどう違うか、そこがポイントです。
第五話 東下り
文屋康秀と在原業平と小野小町の友情。康秀は小町に想いを寄せているのに、3人は絶対に恋愛に発展しません!男2人と女1人のテッパンな組み合わせが好きな人にはおすすめです。3人とも六歌仙で、若い時から仲良しです。出世や恋愛についての苦悩を語ったり、歌についての価値観を共有する3人は、本当に見ていて微笑ましい。ずっと仲良くしてほしい。この話は、小町が自分の選択について、生きる意味について悩んでいます。
第六話 うた変+
現代版だったり小ネタだったり。定家のカードゲームの下りは、式子さまが出てきてえ~っ一番重要なところなんだから12話までやらんでくれ、とやきもきした思い出。ギャグ回。
第七話 2エピソード収録
義孝と源保光の娘 冷静沈着仏道系男子=藤原義孝
正直言って娘ちゃんの性格が読み取れなかった。普通の恋するかわいい女の子だった。義孝は21歳でこの世を去ってしまうんですよね……息子の行成を残すのですが、行成と違って義孝はかなりやり手です。どういうことかは、漫画を読んでください。画面にほぼいる猫がかわいかったのを覚えてる。
高内侍(儀堂三司母)と藤原道隆
猪突猛進系一途漢×情熱のインテリ美女
今の価値観で言えばメンヘラみたいな歌詠んじゃう貴子さま好きです。この歌の超訳は是非アニメや漫画で確かめてほしいです。道隆と義孝はいとこ同士なので、この話ではどちらもお互いのエピソードに登場します。仲の良さがわかります。こちらの方のエピソードで、義孝がかなり良い役どころとなっているので、本当に好きな回です。この2人の娘が、清少納言が仕えることになる、中宮定子さまなのです。
第八話 2エピソード収録
末の松山 清原元輔
本当は清少納言の兄・清原致信と末の松山、なのですが歌人であった致信の父である清原元輔が歌を詠んでいます。「信じるものがない人生は死に等しい。そこには喜びも悲しみもない」兄の恋の行く末を案じる幼き日の清原諾子(のちの清少納言)に説く元輔。信じて裏切られたり、信じたことが無駄だったりすることは、決して意味のないことではない。元輔は苦労してきた身だからこそ、そう説くのです。それを納得しきれない諾子が次の物語への伏線となるのです。それが主として描かれていて、末の松山と致信の属性は私には読み切れませんでした。「末の松山」って何?って思った人は、是非調べてみてください。本歌取りという文化は本当に素敵です。
藤原実方と清原諾子
思いやりイケメン貴公子×世間知らず勉学系女子
若き日の清少納言、まだ定子の家庭教師になる前は、清原諾子と名乗っていました。(きよはらの・なぎこ と読みます)諾子は夫の浮気によって離婚。そんな折、諾子のもとに藤原実方朝臣が訪れます。2人は恋愛関係になるのですが、諾子の入内(ここでは、女御などあまり身分の高くない人でも、内裏に入って帝に仕えることが決まること。男の人とも頻繁に会話するようになる)が決まり2人の意見はすれ違い……。「私にはあなたで良い」。最後、清少納言と名乗るようになった後の2人の会話が、胸にグッとくるものがあります。。
業平近辺の話も好きなのですが、清少納言近辺の話も本当に好きで好きで……。ちょっと休憩がてらこんな話。清少納言は縮れ毛であったという説から、杉田先生の描く清少納言は、ウェーブのかかった髪で、平安時代美人とされた綺麗な長髪ではありません。私自身、日本で初めての女流エッセイストなのだから清少納言はおしゃれでクールな人というイメージが謎にあったのですが、清少納言はとても可愛らしく描かれています。
第九話 藤原行成と清少納言
仕事第一無愛想友情重男子×聡明健気仕事第一女
「立場が変わっても思い続けたり、信じ続けることは難しいこと」そんな清少納言に対し、行成は、「信じるものがない人生は……」と言います。蔵人頭という、割と高い身分である行成と、娘を天皇の妃に立てようとする道長の勢力に押されていく、定子陣営の清少納言。そんな私たちが仲良くてもいいのがだろうか、清少納言のそんな疑念を打ち砕く、友情を大切とする行成の純朴さが最高です。2人の恋の関は開かないのですが、友情は永遠って感じです。友愛が混ざった恋情が好きな人におすすめの2人です。清少納言の方が年上。勉学だけでなく、歌の才能もある清少納言が詠んだこの短歌、機知に富んでいて本当に好きです。
第十話 大納言公任
公任先輩の回!公任先輩は、清少納言とも行成とも実方とも紫式部とも親交があって、この時代の文化人のリーダーと言える存在です。役人としての身分も高くスペックが高い!前半は、滝壺が唱えた名勝地で、ままならない世について短歌を詠む公任先輩の話。自分は名を残すことは出来るのだろうか。そんな思いを、平安時代で生きる人が抱えているかと思うと、感慨深くなります。後半は行成と清少納言の結末。彰子(道長の娘)が皇后に昇格し、立場が危うくなった末、定子さまは御子を生んだ直後に亡くなってしまいます。彰子立后のあと、清少納言は都を離れようとしている、その事実を公任先輩は行成に教えます。清少納言と連絡を取り続け、さりげなく行成に教えてあげるというみんなのお兄さん的な存在で本当に良いキャラ。2人の結末や、そのあたりの台詞は大好きで、泣きながら見てました。は~~~~、あの関係はマジでエモ散らかしてるでしょ……。見るたびに泣く。
第十話 藤子と香子
元気溌剌男勝り女子×オタク系女子
誰じゃいってなるかもしれませんが、香子=紫式部です。源氏物語という、恋愛の話で名をはせた紫式部ですが、百人一首に収録された歌は、幼馴染のことを詠った短歌です。「私が男だったら香子を妻にするのに」「一番大切、愛してる藤子」なんというお互いの想いよう。百合は最高。大人になった2人の思いはすれ違い、昔のように接することは出来なくなってしまいます。スランプだった紫式部が、短歌を詠んだ末に見つけた「源氏物語を書く意味」とは……。この時代の女性がどんな存在だったか、よくわかる回です
第十二話 藤原道雅と当子内親王
実は優しいライオン男×箱入り無邪気おてんば姫
美女と野獣~~~!!!年齢差を考えると教師×JKっぽい。2人の出会いは、当子が子供の頃。「私を連れだしてくるとお前が言ったのでしょう!」「私とお前は、どうやって一緒になるのです……」この2人の恋は、うまくいかないところが良いんですよね。天皇の娘ということもあって父に溺愛されている当子。身分が低い道雅は出世できずに、さらうことは出来なかったのです……。短歌の超訳も切ないので、漫画かアニメで是非確かめてください。道雅の家は、道長が栄華を極めてから没落の一途をたどっています。藤原家といえどもたくさんの派閥があり、平安中期は宮廷のほとんどが「藤原」だったとか。
第十三話 藤原定家と式子内親王
年下和歌青年×年上の神聖な「ずるい」貴婦人
「歌だけなの。不自由さの中で、歌だけがどこまでも自由なの。」
この回は、最初の定家のトリビュートがなくて良い感じ。まぁ本人の話だからね。最初から最後まで最高な回。CV.梶裕貴がマジではまり役だったと思います。2人の関係はまるで純愛です。いや~式子さまずるい。そんなこと言われたらこっちは黙って引き下がるしかないじゃないか。2人の「恋愛ごっこ」の行き着く先が、定家にどんな思いをもたらすのか……。和歌の家として子供を残さなければならなかった定家と、望まれることを選ばなかった式子さまは、本当にうた恋い。の中で胸に来ます。定家の存在は現代でも有名な上、百人一首の選者としてもやはり名高いです。2人は13歳も離れているところも、ポイントです。
以上で紹介を終了とします。
この書きようでわかるかもしれないのですが、私が自分で書きたいのは業平と高子で、見たいのは行成と清少納言です! 友情と恋のあわいのような思いで、その人のことが大切だから、立場を越えて思っていたい。そんな思いが漂うような2人に、心の琴線が震えてこういう2人に巡り合うたび泣きそうになります。
うた恋い。は本当に良いです。個人的には、原作→アニメで見ることをオススメします。アニメはまじで声優豪華です。男性陣は諏訪部順一、梶裕貴、森久保祥太郎に石田彰、子安武人などなど。早見沙織と遠藤綾と茅原実里、小林ゆうに花澤香菜……。もう本当に見てください。配信はU-NEXTでしかしてない。私はTSUTAYAレンタルで借りてみました。
アニメのオープニングも良いから……。エンディングは謎にソールドアウトで情緒クラッシャーなんですが、もう慣れて私はそれじゃなきゃダメになりました。
お願いだッ!この記事を読んだ人、超訳百人一首うた恋い。を見てくれッッ!!!
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