その血の運命!「ミュージカル ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」感想
※1 内容や演出のネタバレがあります。
※2 とんでもなく雑な絵で説明している部分があります。 許してください。
2024年2月17日に、ミュージカル ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッドを観に行きました。
私はソワレ公演で、キャストの組み合わせはこんな感じ。(見えにくくてすみません)
ダブルキャストは、ジョナサンが松下さん、ツェペリさんが東山さんの回でした。
席はM列上手寄りで比較的に見やすかったですが、人によってはオペラグラスがあった方が良いです。
以下、色々な感想。
大道具、舞台装置について
とにかく手が込んでいた!
床と壁の回転、花火、プロジェクションマッピング、フライング、ねぶた、等々、確かにこれは時間かかりますわ…という感じ。(納期は間に合わせて欲しいが)
私の経験上、ステアラで行われた髑髏城の次ぐらいに豪華なセットだった。
そうは言っても、ステアラはもともとの設備が整っており、場面転換の必要がないからああいうことが出来るのであって、何もない状態から、あそこまで手の込んだ大掛かりなセットを見たのは初めて。
【1】床と壁の回転
恐らく、舞台上に回転する床を作っていて、自動で回るようになっている。
壁は、単独で回っているのか、それとも壁が乗っている床が回転しているだけなのかは分からなかったが、とりあえず壁は単独で動いていた。
壁の技術は本当にすごくて、普段は舞台後方にあり、真ん中には大きな穴が開いている。そこに、スピードワゴンの顔を投影して、古いビデオを見ているような感覚にさせたり、石仮面を大きく映して、印象を強くしたりしていた。
それが回転して舞台の前方に来ると、幕の代わりになったりする。自動ドアのように右と左がぴったりと重なるのではなく、少しずれていて、閉じ切ると右と左が重なって↓こういう状態になる。
転換時は幕を下ろさずにこの壁を開けたり閉じたりして、上手く転換させていた。
また、舞台を一周するように、大きな弧を描く、木でできた橋のようなものがほぼずっと出ていた。
それが、序盤の馬車が落ちた崖になったり、後半の人間をやめたディオへの険しい道のりになったりしていて、シリアスなシーンや、感情が高ぶった瞬間によく回転していた。
もちろん、壁を回転して前に出したとしても、穴を閉じずに使っているところもあった。
↑こういう感じで。
ジョナサンがこの穴に吸い込まれていくところなんか特にすごかったので、まだこれから行く人は楽しみにして欲しい。
【2】花火
花火はダニーが燃えるところで使われた。
私は犬が好きなので、ミュージカル版では生きていて欲しいな~と思っていたが、全然だめだった。 ダニーが死ぬシーンは、いつも新鮮に悲しい。
実際に、跡形もなくなるまで燃やしているため、燃やす用のダニーを何体も用意するのは大変そうだなと思った。
ちなみに、普段のダニーは人が操っている。 ライオンキングのティモンとプンバァ、千と千尋の蛙方式と言ったら伝わるだろうか。
足に重しがついていて、特に走っているときに重力を感じる。 すごい。
【3】プロジェクションマッピング
先ほど書いたように、スピードワゴンの顔を投影したり、3DCGを使って、屋敷の壁や天井が火事で崩れ落ちているように表現したり、とにかく有能。
これも、少しでもずれたり、大きさが違っていたりしたら成り立たない。
劇場ごとの修正や調整が大変そう。
【4】フライング
覚えている限りでは、アステカの生贄が吊るされるシーン、ダニーが燃えるシーン、ディオが屋敷の置物に突き刺さるシーンに使われていた。
特に、ディオが刺さるシーンは、プロジェクションマッピングも相まって臨場感がすごかった。
これは、ディオ役の宮野さんが、自身のライブでワイヤーアクションをしていたからなせる技ではなかろうか。 本当にすごかった。
【5】ねぶた
二部のタルカスとブラフォードがゾンビになったときに使われる。
いや、本当にびっくりした。青森本場のねぶたに負けないクオリティー。
凄く巧妙に作られているし、ほぼ天井いっぱいの大きさに作ってあるのに、舞台上にあったのは恐らく10分程度ではなかろうか? もったいない!
プロジェクションマッピングで顔の表情を映し、変えていた所もすごかった。 細かいところまで手が込んでいて凄すぎるよ…。
番外編
ボクシングのリングがゴムでできており、四隅をモブキャストが持って、争うジョナサンとディオの動きや、メロディーに合わせて自在に動かしていたため、臨場感があって良かった。
今思いつく大道具や装置についての感想はこんなところだろうか。
これから始まる地方公演に、このセットを一回ばらして持っていき、これをまた組み立てるのにも相当な時間を要しそうだ。
そのため、また初日が遅れるのでは?という懸念がある。
お気に入りのシーン
【1】 ジョナサンとディオの対比
ジョースター卿が二人の息子に「紳士とは何たるか」を高らかに歌い教えるナンバーでは、下手にディオ、上手にジョナサンの長机が並び、勉強、食事のテーブルマナーなどが行われ、完璧なディオと、甘やかされて育ったジョナサンとの対比がされる。
ジョナサンとディオが、テーブルセットごとくるくると回る、まるで美女と野獣の舞踏会シーンのようなシーンもあり、観ていて楽しかった。
そんな曲中で、ジョースター卿は二人の息子にひとつ質問をした。
「気高き騎士たちは、自分の主の為に自らの死を選んだ。 その時の騎士達は、足元の泥を見たか、それとも星空を見たか」と。
ディオは即座に「もちろん泥を眺めている。 結局何も成し遂げられなかったからだ」と答え、それに対しジョナサンは「星空を眺めていると思う。 なぜなら彼らは忠誠を誓った主の為に死ねるのだから」と答える。
貧しい家庭で生まれ、負けず嫌いでプライドの高いのディオと、温室で育ち、暖かい心と黄金の精神を持つジョナサン。
その回答の差に二人の本質が見えて好きだ。
上手く言葉に表せず申し訳ないが、このシーンを見て胸がいっぱいになった。
【2】 ジョナサンとエリナ
ジョナサンとエリナの恋模様を表すナンバーでは、ジョジョ、エリナとお互い呼び合う歌詞がある。
その部分も、目線や声色にうっとりしてしまうのだが、その後の歌詞で二人の歌声が重なり合うと、甘く美しいハーモニーが生まれ、優しく暖かな空気が劇場を包み込む。
エリナ役の清水さんは、話し方からも可憐さが漂っていて、すごく素敵でレディーなエリナだった。
それなのに、泥水で口をゆすぐ強い意思まで持っている。 好きだ。
【3】 ツェペリさんのレッスン
ツェペリさんの波紋のレッスンナンバーが好きだ!(私は代々のツェペリ家の男が好きだということもあるが)
今回、音楽は管楽器や打楽器などのオーケストラではなく、ベースやギター、ドラムなどのバンドの生演奏だった。
もしかしたら、大道具や舞台装置に莫大なお金がかかっているため、経費削減のためにこうしたのかもしれないが、私はこれでよかったと思う。
ジョジョは荒木先生の趣味で、キャラクターの名前がロックバンドの名前や曲名に由来しているものが多く、そのイメージに合っていてシビれた。 そこにシビれる!あこがれるゥ!
どのナンバーも良かったが、その中でもツェペリさんの波紋レッスンのナンバーが一等良かったし、かっこよかった!
まさかメメタァが曲のハイライトになるなんて…!
この曲は、全体的にジャズ調で、例えばアラジンの「フレンド・ライク・ミー」のような感じ。
カテコ後のスタオベ時にもバンドが演奏してくれたし、きっとバンドメンバーも好きなんだと思う。
【4】ディオの心理
ミュージカル版は、すごくディオの心理が分かりやすいと思った。
原作やアニメだと、ディオを悪役たらしめる原因を、自分で何度か思い返さなければならないと思うが、ミュージカル版では、ディオが決定的な悪に手を染めそうになるシーンで必ず「ディオ」と、死んだダリオの亡霊が、禍々しく歌いながら舞台上に出てくる。 そして、その度にディオは葛藤する。
逆に、ディオが人間をやめた後は、上記と同じメロディに「ジョジョ」とディオが乗せて歌い、ジョナサンへの恨みを表す。
そんな演出があることで、ディオの憎めなさが増し、より愛着がもてるキャラクターになったと思う。
それにしても、宮野さんのディオは本当にすごかった。
私は以前、熱狂的なマモクラ(宮野さんのファン)だったのだが、その頃と比べて格段に歌が上手くなっていたし、演技も上手くなっていた。
恐らく、芝居を生で見るのはウエストサイドストーリー以来だった。
彼は、普段は主に声優という強みを生かし、少年期、青年期、吸血鬼のディオを上手く声でも演じ分けていた。 特に、二部の最終決戦の狂ったディオは鬼気迫るものがあり、手に汗握った。
歌も抜群に上手く、ビブラートやロングトーンものびやかで感動した。
しかし、主人公に負けず劣らぬ出演量と曲数(ハイトーン多めでバトルシーンも多め)であったため、これをシングルキャストで全公演駆け抜け続けるのは、さすがに厳しいのではないかと心配になった。 どうか無事に終わってほしい。
番外編
スピードワゴン役のYOUNG DAISさんは、普段ラップグループに所属しているらしい。 そのためか、今回のストーリーテラーを任されていたスピードワゴンは、ほぼラップで状況説明していた。最高にクール。
そういえば、今回はスピードワゴンだけ客降りがあるぞ!前方席はより近くでスピードワゴンを見れるチャンス!
それと、口調はジョジョ特有の翻訳調の話し方ではなく、普通の話し方だった。 逆に違和感がない。
また、「君がッ 泣くまで 殴るのをやめないッ!」や上記で書いた「メメタァ」など、一部の名言は、曲中の歌詞になっていたりしている。
どの名言が歌詞になって、どれがそうじゃないのか気にしながら見るのも楽しいだろう。
全体的な感想
実は、久しぶりにファントムブラッドの世界に触れたため、最初は不安があった。
所々忘れていた展開もあったが、観劇中はあまり気にならず、逆に新鮮に物語を楽しむことが出来たし、作品の没入感がすごくて、まるで自分もジョジョの世界に迷い込んだようですごく楽しかった。
しかし、出来れば全くの初見よりも、ある程度原作やアニメに触れた後の方が、より作品の世界観を楽しめると思う。
今月いっぱいは各プラットフォームで原作が無料で読めるので、是非気軽に読んでみて欲しい。
その世界観に酔いしれること間違いなしだ。
それと、今回の客席は作品のファンが大半を占めていたように思う。 そして、いつもより男性が多い!
観劇が初めての方も多かったのではないかと思うが、某世界的アニメ映画の舞台化の時とは違い、客席の観劇マナーがよく、みんな固唾をのんで舞台を見つめていた。 子供だってそうだった。
きっと黄金の精神の持ち主と、本当の紳士が多かったからだと思われる。 どの舞台もこうであってくれ。
ファントムブラッドは血の幻影。
ジョナサンとディオ、それぞれの発言や行動から、一族の影を感じることが出来て良かった。 ここから因縁の対決が始まるんだと、改めて感じることができた。 本当に良い脚本だったと思う。
本当にどれもが素晴らしかったので、予定の初日に幕が開かなかったことが残念だ。
おそらく、公式リセールもまだあると思うので、気になっている人は思い切って観劇してみてはいかがだろうか。