地域通貨2_2

仮想通貨の真逆を行く、地域通貨に未来はあるのか?〜Part2〜

お金の運用に失敗するのは個人だけでなく、国家も失敗してしまうことがあります。

ジンバブエドルなんて一晩で何百倍にも価値が暴落したことをご存知な方は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、地域通貨にももちろん失敗もあれば成功もあるということで、日本と世界の事例をご紹介していきたいと思います。

今回の記事は、【地域通貨シリーズ】の第二弾となります。第一弾では、地域通貨の歴史と性質といった基礎的なことを取り上げているのでそちらもご覧ください。


日本の地域通貨の事例

日本の地域通貨はこれまで3000種類あったとされ、現在も300〜500の地域通貨が流通しています。

その中でも成功例としてご紹介したいのが

① アトム通貨(高田馬場)

② めぐりんマイル(香川県)

③ おむすび通貨(愛知県)

この3事例です。

①のアトム通貨で成功の理由として最も大きいのが圧倒的キャラクター性でしょう。

地域通貨の紙幣や象徴としてゆるキャラを採用する地域は数多く存在しますが、この紙幣には鉄腕アトムが描かれています。

まさにちびっこ相撲の大会に現役の横綱が参加しているようなものです。

主に地域通貨というのは流通するにあたって信頼の担保がとても困難です。
だってただの紙切れに価値があるわけないですもんね。

しかしこのアトム通貨には日本のアニメシーンの象徴「アトム」が描かれていることに利用者は大きな安心を感じることとなります。

アトム通貨成功の陰には運営による確かな戦略もあり、多くの地域通貨がボランティアや地域に精通していないと入手が困難なのに対して、アトム通貨の入手はかなり簡単となっており、多くの消費者にアトム通貨と接する機会を与えていることも大きな要因でしょう。

現在アトム通貨は1500店舗で使用でき、配布量は2000万を超えています。
アトム通貨事業が掲げる「地域」「環境」「国際」「教育」の推進を目指し、現在も多くの人から愛されています。

②のめぐりんマイルとはどういったものか
みなさんこのめぐりんマイルが運用されている香川県のイメージっていかがですか?

まぁ、うどんでしょう。

僕も何回か足を運んだことがあります。ちなみに昨日の夕食は丸亀製麺でした。

それはさておき、うどんで有名な香川県で2010年にサービスが開始されたのがこのめぐりんマイルです。

めぐりんマイルは自治体主導によるところが大きく、現在550店舗の加盟があり、県民の6人に1人が所有しています。

この通貨が成功した理由は、カバーできるお店の範囲がかなり広いことでしょう。
どれだけ広いかというと、めぐりんマイルで支払いができないのは携帯電話代と子どもの学費だけというキャッチコピーがあるほどです。

通貨獲得方法も地元商品での買い物のキックバック(100円につき1ポイント)や地元スポーツチームの観戦、清掃などのボランティアに参加する、無料相談会や地域主催のイベントに参加する、、などなど多岐に渡ります。

僕も気になってホームページを見にいったのですが、地域のイベントや店舗情報をたくさんのせており、何より可愛らしい作りとなっています。

おそらくですが、担当されている職員さんもかなり優秀な人たちで運営されているだろうことも成功の要因かと妄想が捗ります。

最後に紹介するのが、おむすび通貨です。

正直いってこれまでご紹介した2つの事例は日本を代表する成功事例ですので、あまり通ぶりたい時にはお勧めできません。

そんな通ぶりたいあなたに紹介したいのが、このおむすび通貨です。

特徴としてあげられるのが通貨の獲得方法価値の裏付けの2点です。

まず、通貨の獲得方法です。
大人は千円で20むすびを購入できるのですが、小学生は購入することができません。

え?クッソいじわるじゃん!?

いえ、いじわるではありません。

このおむすび通貨を運営している団体が月に何度か子ども夢の商店街というイベントを行なっています。
そこでは小学生が職業体験をしたりハンドメイドの商品を持ち込み通貨を獲得しています。

獲得した通貨はその場で使ったり加盟店舗で使用できるのですが、この通貨には使用期限が設けられています。

ここが価値の裏付けと関連しているのですが、おむすび通貨の期限が切れたらどうなると思います?

一般的に、地域通貨の期限切れ=ただの紙くずとなりますが、この通貨は期限切れの紙幣と地域のお米が交換することができます。

その性質によって、使用期限内は地域で通貨が循環し、最終的には集約することができる強みがこの通貨にはあります。


いかがでしょうか?
日本にも地域通貨の成功事例が存在し、それぞれの特徴もユニークだと感じませんでしたか?

しかし、その成功までには屍累々の失敗事例が存在しています。

失敗事例に共通するのが、円を使う以上のメリットのなさ、加入店舗数の少なさ、運用元のショートの3点によって終焉を迎えることがほとんどですが、静岡県のEGGはユニークな理由によって終息していきました。

その理由が、、

住民が仲よすぎたことです!

コミュニティの再構築を狙って、新しい通貨を地域内に誕生させましたが、もとより仲の良い地域だったこともあってわざわざEGGを利用することが面倒と感じ始め、うまく定着することができませんでした。


このように地域通貨は手法や運営の仕方だけを真似るのでなく、地域に応じた取り組みをしないとうまくいかないナマモノであるのです。


世界の地域通貨の事例

続いて世界中の地域通貨についてご紹介します。
ヨーロッパでの地域通貨の歴史は古く、前回の記事でお話ししたように1930年代から通貨として採用されていました。

そんな中、みなさんにご紹介したいのが、

① WIR(スイス)

②LETS(カナダ・ドイツ・フランス)

③ コミュニティヒーローカード(米:ミネアポリス)

の3つです。

①のWIR通貨は、世界で最も成功した地域通貨と言われています。
その最大の理由は、国全体のお金に対する圧倒的シェア率でしょう。

通常、地域通貨とは狭い地域やコミュニティの中で使用されるため、国全体から見るとその影響率は微々たるものです。

しかし、このWIR通貨はスイス全体のお金の3%の発行量を占めています。 
なぜここまでWIR通貨が発展できたのか。その特徴となんでしょうか?

このWIR通貨は約70年の歴史があります。ここまで長く独自のシステムを維持できたのには、早くから銀行として認可されたことです。

当初は経済サークルとして運営されていましたが、運営の実態をいまいち把握していなかったスイス当局が銀行法の管轄下に置きました。

その結果、合法的に融資や預金ができるようになり、中小企業を中心にフラン(スイスのお金)より低利率での融資を行いやすくなりました。

さらに、公共事業の入札の際にWIRを使用できるようにし、スイス以外の事業者が入札に参加しづらくすることによって国内の産業を保護する役目をWIRが担っています。



続いて②のLETSについて学んでいきましょう。
『LETS』は Local Excange Trading System (地域交換取引制度) の頭文字を取ったもので、海外では1500カ所以上の地域で利用されています。

LETSの仕組みはいたってシンプルで、参加したいと感じたら事務局に赴き、通帳を発行してもらいます。
その後、自分が提供できるサービスと受けたいサービスを事務局に伝えると、登録メンバーからリアクションがあり、サービスのやり取りを行うといったものです。

取引が決まったらお互いでその対価を決めて、終了後にお互いの通帳に支払った額と受け取った額を記帳する。というシステムです。

このシンプルな取り組みが世界中に広まったのは、お金に変換するのが難しいサービス(留守中のペットの世話やちん所の掃除)に対価を支払うことできること、国の経済圏から脱却できるといったメリットが挙げられます。


最後は③のコミュニティヒーローカードです。
この取り組みの特徴は、地域のボランティア団体と地元企業、住民のといった地域を構成する3者の結びつきを屈強にしたことと、電子技術を活用して地域通貨と現行通貨を自在に変換させたことです。

このコミュニティヒーローカードの仕組みはどうなっているか。

① 利用者は最初に加入料10ドルを支払って会員となます。

② プログラムに参加している NPOでボランティアを行うと、1時間につき 10コミュニティサービスドルがカー ドに振り込ます。

③ 参加している地元の商店は、価格の5~20%分を寄付する。 会員が買物をすると地域貢献として無条件に参加者の40%を購入者に還元する。

④ 購入者がコミュニティサービスドルを保有していた 場合は、更に40%が本人に還元され、持ってない場合は、40%分はNPO等に寄付される。 残り20%は加盟するNPOおよび当プログラムに寄付される。

⑤ カードの利用1回に付き25セントが手数料として差し引かれる。コミュニティサービ スドルは、180日以内に利用されないと参加N POへ寄付される


いかがでしょうか?
僕は5回ほど読んで理解しましたが、要するに


・ボランティアしたら対価として地域通貨がもらえる
・買い物をした時、地域通貨で支払ったらキックバックがある
・買い物の時、地域通貨で支払わなかったらキックバック分がNPOに支払われる
・企業は参加料が必要だが、広告をうったり無闇に募金するより効果が高い

こんな感じに翻訳するとわかりやすいですかね?

コミュニティヒーローカードの強みは、これまでのLETSの取り組みや商店街で行われていたようなポイントキックバックを一枚のカードで簡単に行うことができるようにした点です。


いかがでしょうか?
まだ日本にはない革新的な取り組みも多く羨ましくもありますね。
みなさんお気に入りの地域通貨は見つかったでしょうか?

最後にPart1でも少し触れた『デーマーク』について触れたいと思います。

このデーマークは、通帳の上だけで取引をして、交換の輪を広げていくといった手法で行なっておりました。

最盛期には青年施設を改築しよう! ということで盛りあがり、最終的には建築費の約10%をデーマークで調達できました。

しかし、活動の中心となった取り組みが終わるとこれまでの盛り上がりが嘘のように萎んでしまい、活動を停止してしまう結末となりました。

このようにプログラムの象徴を作り上げてしまうと、継続的に短期的なプロジェクトを走らせなければいけないといった問題が生じてしまったことが失敗の要因でした。
(短期的であっても象徴を作り上げたのなら失敗とは言えないかもしれないですけどね)


まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は成功事例を計6つご紹介しましたが、正直いって地域通貨のほとんどが失敗しているのが実情です。

扱っているものが”お金”であることから、システム上どこかで不備があると継続的な利用には至らない難しさがあります。

それでも、地域通貨にはグローバル化やインターネットの充実によって失われた多くのものを私たちに気づかせてくれるちょっとイケてる一面があります。

これまでの何万通りの失敗を地域通貨はしてきました。
しかし、その失敗を教訓に成功した地域もあります。

そして、現在の世界を取り巻く仮想通貨にも多くの失敗と成功が混合しています。

私たちがいきていくこれからの時代のお金事情はどうなっていくのか。

次回の記事では、新時代のお金のあり方を考えていきましょう!

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