盛夏火 劇場演劇Vol.2『カーニバル・アザーワイズ』台本
『カーニバル・アザーワイズ』
仁依星マヤ(にいほしマヤ)・・・新山志保
たつき・・・金内健樹
風子(ふうこ)・・・高井斜子
穂村VCR(ほむらビデオ)・・・金田陸
貞名城タマ(ていなしろタマ)・・・倉里晴
荒山乃ヴァ(あらやまのゔぁ)・・・星野慶太
hocoten(ホコテン)・・・hocoten(劇団「地蔵中毒」)
仁依星ドリ美(にいほしドリみ)・・・三葉虫マーチ(劇団「地蔵中毒」)
照明:ミキティ[波木虹香(なみきにじか)]・・・中西美樹
舞台監督・・・小川陽子
【0.カーニバル或いは / Carnival or...】
せんがわ劇場ロビーではスーツ姿の4人のスタッフが受付・物販・案内を行っている
スタッフA:来場者受付(みのりぬ)
スタッフB:来場者受付(香川知恵子)
スタッフC・D:物販・席への案内(カネタガク・鈴木啓佑)
♪:メインホールでは開場中〜開演までは音楽が流れている
[トラックリスト]
・The Cardigans – Carnival
・Strawberry Switchblade – Who Knows What Love Is?
・夏アニメーション – 菫・ヘッドストリーム
・秋 – Safety in #Numbers
・Gui Boratto – No Turning Back × David Wise – Stickerbush Symphony [Remix]
・Riz Ortolani – Cannibal Holocaust
・Choro Club feat.Senoo – 幻想カーニバル
・Prefab Sprout – Carnival 2000
・Riz Ortolani – Life Savers Girl [Screwed]
・Cocteau Twins – Frou-frou Foxes in Midsummer Fires
【1.ヒプノティスト/Hypnotist】@ステージ
※冒頭の展開は、トーキング・ヘッズのライブ映画『ストップ・メイキング・センス』の1曲目『Psycho Killer』のパロディであると同時に、それをパロディにした前年の盛夏火『スプリング・リバーブ』のセルフパロディでもある
ステージ上手からたつきが歩いて出てくる、上下スーツ姿で、黒い目隠しを付けている
アコースティック・ギターを携えていて、ラジカセを持っている
ラジカセをバミリの場所に置き、スイッチを押すと簡素なドラムパターンが流れる
♪:たつき、アコギを弾きはじめる
◎照明:陰影をつけすぎないスポットライトみたいな感じ
歌っている途中で、仁依星ドリ美を先頭に上手から他7名が手を繋ぎながら出てくる
ドリ美はローブを着ていて頭から黒いフードを被っている
他6名は全員目隠しをしていて、虚ろな人形のような表情と動き
[ドリ美-風子-タマ-hocoten-マヤ-乃ヴァ-穂村]
※『第七の封印』のラストシーン参照
歌っている途中でドリ美が出てきてラジカセを止めると、音が持続音のようになる
ドリ美意外全員、手を繋いだままで木偶人形のように崩れる
ドリ美がフードを取る
ドリ美 「(客に)みんなこんにちは!・・・いや、こんばんはかな?おはようかも。(上見る)劇場だと空が見えないからわかんないや(笑)。あははは。・・・今からこのステージでお見せするお話は、実際に・・・この私のお姉ちゃん(マヤを示す)や、ここのみんなが(このあいだ)体験したことを舞台仕立てにした再現劇です。なので全員、自分で自分自身を演じる事になります。まぁ、ほとんどの人が役者でもなんでもない素人なので、演技が下手だったり声が聞こえづらかったりする部分は多めに見てください(笑)・・・それじゃあ、1人ずつ紹介していきましょうか」
ドリ美、膝をついているたつきの目を手で覆うとたつきは後ろへ倒れドリ美が支える
ドリ美 「この人がたつき役のたつき君。お姉ちゃんと小学校時代の同級生で、地元はこのあたりです。極度のジュブナイル・ジャンキーで、いまだに小学生の延長みたいなことをここら辺の人を集めてやってて、いうならば今やってるこれもその一環です」
たつきを持ち上げて立たせると肩を持って上手へ歩かせてはけさせる
ドリ美、舞台袖から大きな布を持ってくる
ドリ美 「この人は風子役の風子ちゃん。お姉ちゃんとたつき君の元クラスメイトの妹で、実家がこの町にあります。誰よりも制作業務に非常に長けているので、今回もフライヤーの入稿だとか、様々な手配もやってくれました。
風子の目を覆うと風子は布の上に倒れ、ドリ美はそれを引きずって下手へはけさせる
ドリ美 「・・・あ、そうだ、今回は大体全編xx分くらいを予定しています。途中でx分間の休憩があり、そこで一部出演者による中間アフタートークを開催します。御用の無い方はぜひお席にお座りになったままお待ち下さい」
ドリ美、穂村の目を手で覆いながら膝を付かせると、穂村は犬のような姿勢になる
ドリ美 「この人は穂村VCR(ほむらビデオ)役の穂村VCRさん。VCRって書いてビデオって読みます。あ、詳しくはお手元のパンフレットに名前の漢字とか書いてあるので、そっちを見てくださいね。この人は本業はオカルトライターなんですけど、最近はペットビジネスに手を染めていて、フォロワー数十数万人の飼い犬をインフルエンサーとマッチングさせたりグッズ販売したり、企業案件を受けたりして稼いでいます」
ドリ美が先導し、穂村をハイハイで上手にはけさせる
ドリ美、ここで舞台袖から紐を持ってくる
ドリ美、タマの目を手で覆うと、指に注視させる
ドリ美 「この人は貞名城タマ役の貞名城タマちゃん。お姉ちゃんやたつき君の友達で、二人より若干年齢的には後輩です。あ、でも、大人になってからの友人関係は年功序列みたいなのは特に関係なくなっていくのであまり気にしなくて大丈夫です(手をパン)」
上手舞台袖を指し、手をパンと叩くと、タマはそちらに走り去る
ドリ美、乃ヴァの目を手で覆うと、腰に紐を結びつける
ドリ美 「この人は・・・後で出てきた時にどうせわかるから、今は紹介しなくても大丈夫かな」
紐を引っ張り、乃ヴァを下手舞台袖にはけさせる
ドリ美、hocotenの目を手で覆うとhocotenは崩れる
ドリ美 「この人はホコテン役のホコテンです。ホコテンはいつでもホコテンなので今回もいつも通り普段と同じホコテンを演じてもらいます。ホコテンはここ一年で犬を二匹も飼い始めました」
hocotenを転がし上手舞台袖へはけさせる
ドリ美、マヤの目を手で覆うとマヤは催眠状態のようになる
ドリ美が背中を押してマヤを客席の方へ向ける
ドリ美 「そしてこれが仁依星マヤ役の仁依星マヤ。私の実のお姉ちゃんです。当然、これから行われる再現劇の中でもお姉ちゃん自身を演じてもらいます(笑)だよね?お姉ちゃん?」
マヤ、問いかけに目を覆われたままうなずく
ドリ美はマヤを座らせ、靴を脱がせる
ドリ美 「さて、物語は今から数週間前、カーニバルを目前に控えたとある朝、私たち姉妹の実家のお姉ちゃんの部屋から始まります。今から10数えるとスタートです。10・・・9・・・」
ドリ美、カウントしながら周りや舞台袖裏を一通り見回す
次のシーンで使うマットレスを裏から出す)
ドリ美 「8・・・7・・・よし、みんなOKだね」
ドリ美、カウント途中で思い出し、舞台先端中央に立ち上の方を見て叫ぶ
ドリ美 「6・・・ぁ。・・・ミキティーーーーーーーーーー!!照明は大丈夫?」
ミキの声 「はーい」
◎照明が1回光り、ドリ美は手で軽く合図する
ドリ美 「ありがとう。5・・・4・・・(エコーがかかっていく)」
ドリ美、後退りながら下手にゆっくりとはけていく
カウントダウンが途中から録音のものに変わる
ドリ美の声(録音) 「3・・・2・・・1・・・0」
ドリ美 「(マイク使わずに、録音の声にかき消されないようにしながら)・・・あ!そうだ!言い忘れてた!私は仁依星ドリ美です!妹です!現実でも、今から始まるお話の中でも!」
カウントダウンのゼロの声がフィードバック
◎照明:カウントダウンに沿ってゆっくりと暗転していく
【2.カーニバルの(前の)朝 / (Morning Before) Carnival Morning】@マヤの実家
◎照明:明転
♪:チュンチュン・・・
マヤがマットレスに寝転がり、手持ちの小型扇風機であおいでいる
※マヤとドリ美、靴を脱いで横に置いておく。外出時には履く
マヤ 「(扇風機に)あ〜〜〜・・・。あー久しぶりに実家で寝ると変な感じするなぁ。ベッドは一人暮らしの家に持ってっちゃったから、実家の自分の部屋のベッドがあった場所に布団を敷いて寝てると起きた時に視線が低くて変な感じがするなぁ(説明ゼリフ感強めに言う)」
ドリ美(普通の格好)が入ってくる
ドリ美 「お姉ちゃんおはよう」
マヤ 「あ、おはよう(欠伸をする)」
ドリ美 「布団洗濯しちゃうからちょうだい」
マヤ 「はーい」
マヤ、マットレスからどくと、ドリ美はマットレスと扇風機を裏にしまう
♪:花火の空砲の音
マヤ 「ん?何の音?」
ドリ美 「ほら、予行練習の花火の音だよ。もう少しでカーニバルだもんね」
マヤ 「カーニバル?・・・ふーん、へえ。こんなとこまで聞こえるんだね」
ドリ美 「・・・あ、ほら、鐘の音も聴こえない?」
♪:遠くに鐘の音
マヤ 「(耳をすませ少し宙に視線)あ、ほんとだ」
ドリ美 「お姉ちゃんいつまで実家にいるの?」
マヤ 「う〜ん・・・(眠そうにしながら)私のマンションさ、今断水工事しててたしか明日には水出るようになるはずだから・・・今日の夜こっちでお風呂入ってもう一泊して・・・あ、いや、やっぱ今日帰って、途中で銭湯寄ろうかな」
ドリ美 「銭湯?ゆけむり?」
マヤ 「いや、そしおんのつもりだった」
ドリ美 「そしおん?」
マヤ 「祖師谷温泉。なんかもうすぐ閉館しちゃうんだって」
ドリ美 「へぇ〜」
♪:ピンポーン
たつきが上手から勢いよく自転車で走ってきて、自転車ごとスライディングで止まる
たつき 「マヤ!!大変だ!!」
マヤ 「何!?(めんどくさそうに。自転車で入ってきた事への驚きは無し)」
たつき 「そしおんが潰れちゃうんだよ!!」
マヤ 「ああ、らしいね」
たつき 「しかも今日が最終日!!」
マヤ 「あ、へ〜。そうだったんだ」
ドリ美 「ちょうど良かったね」
たつき 「あ、妹ちゃん、おはよう」
ドリ美 「おはよう」
たつき、自転車を起こし、乗る
たつき 「早く!乗って!!」
マヤ 「いや、でもまだ部屋着だし」
たつき 「いいから!!早く!!説明してる暇は無い!!急がないと!!」
マヤ 「えぇ〜・・・」
マヤ、靴を履くと自転車の後ろに乗る
たつき 「妹ちゃんも来る!?」
ドリ美 「洗濯終わったら行くかも」
たつき 「そうか・・・とりあえず先行ってるから!!」
ドリ美、小道具があれば洗濯物をしまうかのようにはける
たつき、マヤ、自転車で上手へはける
【3.温泉最後の日 / The Last Day of Onsen】@そしがや温泉前
♪:ガヤガヤ音
たつき、客席左側扉より走って出てくる
マヤ、少し遅れて出てくる
たつき 「ハァハァ・・・(遠くを見る)あぁ!遅かったか・・・」
マヤ 「うわっ、凄い並んでる。え?これ今から並ぶつもり?」
たつき 「いや、えーっと・・・もう来てるかな・・・」
タマが人混みの向こう、上手から出てくる
タマ 「あ、たつきさーん!」
たつき 「タマちゃん!」(『すずめの戸締まり』における「ダイジン!」と同じ言い方)
タマ 「あ、マヤさんも。おはようございます(軽く)」
マヤ 「おはよ(軽く)」
タマ 「いゃぁ、私さっき着いたんですけど、もう開店と同時に入場制限してるみたいで、今千人以上並んでるっぽくて、靴箱もロッカーも全く足りてないって言ってて・・・」
マヤ 「うわ」
タマ 「なんか、SNSとか見たら、昨日の閉店直後から深夜組の待機列が形成されてて、一回警察も来たみたいで・・・。あと!今見たんですけど、列の前の方で入浴券買った人が、500円の入浴券を8,000円で別の人に売ってたんですよ!転売ヤーも結構いるみたいで」
たつき 「なんだそりゃ!?ディズニーシーで新しいダッフィーが売られる時みたいだな・・・」
マヤ 「これ、ヘタしたら今日の閉館までに入るのムリなんじゃない?」
たつき 「え!?じゃあもう2度とそしおん入れないって事!?」
タマ 「いやーどうですかね。いっそ私達も深夜から並んでおくべきだったかもですね」
たつき 「(悔しさの声を上げ泣く)・・・ちょっ・・・そんな・・・(無表情のマヤを見る)マヤ、悲しくないの?そしおん好きだったよな!?あんた銭湯フリークだろ!?」
マヤ 「ん?いや、銭湯は好きだけど、別に祖師谷温泉にそこまで思い入れがあるわけじゃないし」
たつき 「なんだよ!!みんな同じ気持ちだと思ってせっかく善意で誘ったのに!!こんな事ならマヤの家に行かずにさっさとこっち来てれば良かった!!」
マヤ 「知らねえよ(軽く)」
タマ 「まぁでも、ちょっと早く来たところで多分そんな変わんなかったですよ。・・・え、でも今からでも並び始めれば夜最後閉まるまでには入れますかね?」
と、銭湯の方(上手)から風呂上がりの穂村がやってくる
髪が濡れ、そしがや温泉の閉館記念タオルを首にかけている
穂村 「んおぉ、たつきさーーん(たつきの姿を見つけ、片手を上げる)」
タマ 「(振り返り)あ、穂村さんだ」
穂村 「おぉ、タマさん。あ、マヤさんも」
マヤ 「え、(今)銭湯入ってたの?(軽く笑)」
穂村 「はい(笑)最終日でめっちゃ混むらしいって噂だったんで、思い切って昨日の夜から徹夜で並んじゃいましたよ(笑)」
たつき 「ハァ!?・・・テメエ、にわかが!!地元民でもねえ癖に!!整ってから街中華行ってろや!」
たつき、穂村の首を絞めようとする
穂村 「いやいやいや!ほら、僕2年前までこの辺り住んでたんで!まだまだ半分地元民っすよ!」
タマ 「どうですか?やっぱり中も混んでました?」
穂村 「いやっもう・・・!ヤバくて。僕は先頭の方並んでたんで一応開店から少ししたら入れはしたんですけど、中入れてもシャワー待ち15分、ドライヤー待ちは20分くらいで・・・サウナなんて2時間半待ちでしたからね!!僕もさすがにサウナは諦めましたもん!」
マヤ 「狂ってる」
タマ 「中の感じ的に今から列並んだら夜には入れそうですか?」
穂村 「いやいやいや・・・とてもじゃないけどまずムリですね。まぁ、白い目で見られるの覚悟で、入浴券転売してもらえないか1人ずつ声かけていけば、今日中に入るのもあながちやぶさかじゃないかもしれないですけど・・・」
タマ 「はぁ・・・(少し間)ん?それ、やぶさかの使い方、なんか間違ってません?」
穂村 「ん?そうか、変か」
マヤ 「まぁようはもう今日入るのはほぼ無理って事か」
たつき 「うわぁぁぁぁ・・・えぇぇー・・・!?待って待って待って、無理・・・」
マヤ 「うるさいよ!さっきから一々!大袈裟に!」
たつき 「しんどい・・・俺最後にそしおん行ったのいつだっけ・・・こんな事ならもっと普段から行っておくんだった・・・」
タマ 「まーなんにせよそういうもんですよね。親の死に目とか(サラッと感強く)」
穂村、愛想笑いしながら首元のタオルで髪をゴシゴシやる
マヤ 「(穂村のタオルを見て)え、それさ」
穂村 「あぁ、これ閉館の記念に風呂入る人は全員貰えるんすよ!(タオル広げる)」
マヤ 「へええ!結構いいな」
穂村 「全然あげてもいいっすよ!あ、これ今使ったんで洗濯してからですけど(笑)」
たつき 「ちょっと待てよ!俺も欲しいよ!」
マヤ 「いや、私が先に言ったから」
たつき 「マヤそんなそしおんに思い入れないんだろ!?ならこれは絶対に俺が持ってるべき・・・」
♪:花火の空砲の音
全員空の遠くの方を見る
たつき 「ん?」
穂村 「・・・ああほら、カーニバルの花火の音っすよ。もうすぐなんで」
タマ 「そっかー、もうそんな季節ですか」
マヤ 「ん?どんな季節?」
たつき 「チッ浮かれやがって・・・そしがや温泉の喪に服せよ。四十九日間は」
タマ 「えーたつきさん、そういう祭りごと乗らないタイプですか?(笑)」
たつき 「いや・・・やるとなればそりゃなんだって全乗っかりするけどさ・・・」
穂村 「・・・てかてか、みなさんもし良かったらアイスかなんか食いません?」
タマ 「あ、ずるーい。1人だけお風呂上がりなもんだから(穂村斜め下に指を差す)」
穂村 「ははは。コンビニとかで買って・・・そんで僕めっちゃ景色いいとこ知ってるんで、そこで食って。コスパ良い感じで(笑)」
マヤ 「あぁ(好意的な顔)」
たつき 「めっちゃ景色いいとこってどこ?」
穂村 「ほら、・・・時計台っすよ」
タマ 「え!?登れるんですか!?」
穂村 「・・・なんですよ。ほら、カーニバルも近いから!」
マヤ 「(鼻から息をスンと吐く)・・・銭湯入れないし、行っちゃいますかァ〜(軽く伸びしながら)」
全員、緩やかに下手へ
たつき、1人だけ一番後ろで一旦振り返る
たつき 「・・・バイバイ、そしがや温泉・・・21」
たつき、急に走り出す
たつき 「店まで競争!(『となりのトトロ』の草壁父参照)一番遅れた人が奢りね!」
マヤ 「ハァ!?」
タマ 「え!それは卑怯!」
穂村 「うぇっ!?」
全員、走って下手にはける
【4.時計台の上で / Top of the Clocktower】@時計台の上
♪:高所の音(小さな鐘の音も)
皆、上手から順に出てくる(登ってきた感のある出かた)[タマ&穂村→マヤ→たつき]
タマ 「うわぁ〜高〜い(下を見下ろしながら)」
マヤ 「(後ろのたつきを振り向き)オラ、早くアイス持ってこい」
たつき、足を引きずりながらコンビニの袋を持ってくる
4人、時計台の淵(舞台の淵)に足を投げ出して座る
マヤ 「(下を覗き)うわっ。ヒュンってする・・・!」
タマ 「ゎぁ」
たつきの持つビニール袋から各々アイスを取る
タマ 「まさか直前であんなに盛大にコケるとは思いませんでしたね。大の大人が」
穂村 「じゃ、ありがたくいただきます〜」
4人、袋からアイスを取り出しアイスを食べ始める
4人、食べる。あまり誰も言葉を発しない時間。アイスを空に透かしたりする
◎照明:徐々に夕方のような色に
たつき 「(アイスを見つめながら何かを思う顔)・・・・・・ん?なんか・・・」
タマ 「どうしたんですか?」
たつき 「いや・・・。いつもだったらそろそろここらへんで穂村さんが近々で起きてるオカルトめいた事件の報告をしてくるくらいの時間のはずだけど・・・」
タマ 「はあ」
たつき 「(穂村に)なんか無いの?」
穂村 「いやァ・・・!?どうすかね?あ、て、いうよりも・・・最近は事件がどうとかってより、もっぱらカーニバル関連っすね」
マヤ 「カーニバル・・・」
穂村 「あのぉ、ほら、うちのムッちゃんが」
タマ 「あぁ、ワンちゃんの」
穂村 「はい。いわゆる案件みたいな感じで・・・。カーニバル期間中は、インフルエンサーとコラボしたりとか、ムッちゃんのファンでいてくれてるアーティストさんとかVIP(ヴィー・アイ・ピー)の人とミート&グリートしたりとかで、結構お仕事貰ってて」
たつき 「人んちの飼い犬のファンになるようなアーティストがいるの!?そんな奴はアーティストやめちまえよ。特定の個体の動物に営業行為させるなんてそんな世界は病んでるよ」
穂村 「ははは。いやいや、でもそれで飼い主の僕とかもカーニバル期間中は新しくできためっちゃいいホテルとか泊めて貰えるんですよ!タダで」
タマ 「えっいいな〜」
穂村 「そう(笑)これがカーニバル効果ですよ(笑)」
マヤ 「カーニバルか・・・」
穂村 「そう。なんか色々と催し物あるみたいで、一般公募もしてるみたいなんで、マヤさんとかたつきさん達もなんかやったらいいんじゃないですか?ほら、久しぶりにまた演劇やるとか」
たつき 「・・・いや、演劇は去年のコンクールで懲りたからもうやらないね。今は演劇なんてオワコン。時代はYouTubeだね」
穂村 「あ〜YouTube。確かに。たつきさんこないだ始めましたもんね。僕のチャンネルもようやく登録者数3万人行きまして!たつきさんは今登録者数何人くらいすか?」
たつき 「えっ!?・・・えーと・・・200・・・40いくつとか・・・」
穂村 「ぁぉぉォン・・・。なるほど・・・登録者1,000人の収益化の壁があるっていいますもんね」
たつき 「動画撮れば撮るほど金だけがなくなっていく、セルフ懲罰のやりがい搾取構造だよ。誰からも求められてねーのに。でも何もやらないと死にたくなるからしょうがなくやってんだ・・・」
穂村 「地獄じゃないすか・・・たつきさんも犬飼ったらいいんじゃないすか?いいっすよ、犬の動画上げれば再生数も伸びるし、それに何より今僕自分のためってよりワンちゃんのために生きてる感じで楽ですもん」
たつき 「ワンちゃんに生かしてもらってるの間違いだろ。・・・ワンちゃんか、ワンちゃんねぇ・・・。オカルトライターもこうなったらおしまいだな(アイス舐める)」
タマ 「たつきさん達はカーニバルの間はどんなご予定なんですか?」
マヤ 「えっ?」
たつき 「ん?う〜ん・・・?」
穂村 「(アイスを見ながら、半分独り言で)あれ、これって当たりとかあるやつだっけ?」
マヤ 「え、カーニバルってさ」
♪:突然真後ろで時計台の鐘の音(爆音)
全員 「!!!!」
マヤ 「うるさっ!!!!」
たつき 「危ねえ!!下に落ちるとこだったぞ!!」
穂村 「・・・(驚いている)あぁ・・・もうこんな時間ですか。長居しすぎましたね。そろそろ行きますか」
タマ 「はーい」
4人、上手へはける(降りる感じ)
◎照明:完全に夕方っぽくなっている
【5.オクトーバーじゃないフェス / Not October Festival Fair】@広場の夜店
◎照明:夜になっている
たつき、マヤ、タマ、下手から出てくる
タマ 「(下手に向かって)穂村さん、またー!」
穂村の声 「(下手から)お疲れっす!また〜」
たつき、下手へ軽く手を上げる
マヤ、立ち止まる
マヤ 「あ。・・・あァーーー・・・」
タマ 「?」
マヤ 「・・・うち、まだ断水してるんだった。お風呂どうしよう」
タマ 「そっか、そしがや温泉ももう入れませんもんね」
たつき 「あァ!そうだった・・・!FUCK」
マヤ 「ん〜今日も実家に帰るか・・・」
たつき 「ってか、めっちゃお腹すいちゃったなァ〜〜〜。飯食いに行かね?とりあえず晩飯食いながら考えれば?」
マヤ 「あぁ、そうするか」
上手側が華やかに光っている
♪:徐々にアコーディオンとかのカーニバルみたいな音楽(無印良品でかかってそうな)
たつき 「ん・・・?おいおいおい・・・なんだよこれ」
タマ 「え〜!?なんかいっぱいお店ができてる!」
たつき 「まるでオクトーバーフェスみたいだな!今ってオクトーバーだっけ!?」
タマ 「今はオクトーバーじゃないですよ!」
たつき 「昨日までこの広場には何もなかったのに・・・」
タマ 「もうすぐカーニバルだからですかね?」
たつき 「え、ここで食おうぜ!」
タマ 「ちょっと入れるか見てみますね!・・・(自分たちを数える)えっと、3人か」
タマ、上手側(店)を覗きに行く
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