ヒヤリハット6 猫井川にせまる指詰めの危機!?
こんなヒヤリハットのお話しを、解説とともにご紹介します。
今回は倉庫で資材を運んでいる時に起こったものです。
事故は、あわや「はさまれ」のヒヤリハットです。
猫井川ニャンは今日、会社の資材置き場での仕事です。
今朝、犬尾沢ガウから、
「コンクリート打ちの予定があるから、型枠用のコンパネを準備してくれ」という指示を受けたのでした。
保楠田コンと一緒に、この作業を行うことになりました。
コンパネ、つまりコンクリートパネルとはベニアを重ねた合板のことです。
片側の表面がオレンジ色に塗装され、ツヤツヤとしています。
コンクリートは、打ち込む時はドロドロです。打ちっ放しだと、汚いスライムのような物体に固まってしまいます。
そのため目的の形にするため、板などで形を保ってあげるのです。
この型取りを型枠というのです。
コンクリートの型を作るための枠ということで、型枠です。
コンパネは型枠に使います。合板なので、加工しやすいのです。
会社の倉庫では、常時コンパネをストックしています。
猫井川と保楠田は、保管場所から、必要分を外に運び出すことにしました。
「夏に倉庫内整理してて、よかったですね。
去年だったら、物がたくさんあって、運ぶ時にジャマになっていました。」
猫井川は、夏の倉庫整理のことを思い出しながら、話しました。
「そうね。ぶつかるどころか、目的の物を探すのに時間がかかったよ。」
保楠田も笑いながら、答えます。
「保楠田さん、型枠は明日からですか?」
「犬尾沢君の話だと、そうみたいだね。
それにしても、かなりの量のコンパネを使うな。
とりあえず、トラックに載せられるだけ、載せていこうか。」
保楠田と猫井川は、長さが1.8m×0.9mのコンパネを1枚ずつ運び出ました。運んだ物は、倉庫の出口付近に重ねて、仮置です。
10枚ほど運び出すと、ひとまずトラックに積み込み、運び出すことにしました。
「猫ちゃん、トラック持ってきて。
一回載せよう。」
猫井川は、保楠田の指示を受け、猫井川はトラックを持ってきました。
「じゃあ、俺は荷台で受け取るから、猫ちゃんは運んで。」
「はい。1枚ずついきます。」
猫井川が重ねたパネルを1枚ずつ荷台まで運び、荷台の上で保楠田が重ねていきます。
リズミカルに作業は進み、あっという間に10枚運び入れました。
10枚重なったコンパネは、荷台のアオリ(荷台を囲う壁板)よりも高くなっています。
「ちょっと、これ以上重ねて運ぶとグラグラするから、一度加工場に運び込もうか。
コンパネはロープで固定しよう。
猫ちゃんはロープ持って、固定していってくれる。」
猫井川は、言われたように荷台にロープを掛け、コンパネが輸送中にグラグラと動かないように縛っていきます。
荷台の左右をロープを渡し、ギュッギュッときつく縛っていきます。
手でコンパネを押してみて、動くかどうかを確認し、縛り具合も確かめます。
トラックの右側で、ロープを縛りながら、猫井川は保楠田に伝えました。
「保楠田さん、反対側のロープを持って、引っ張ってくれません?
もうちょっときつく縛ります。」
「いいよー。
じゃあ、引っ張るね。」
ちょうど左側に居た保楠田は、すぐさまロープを持ち、ぐいっと引っ張りました。
「いや、ちょっと待って。
まだこっちの準備がッ!
危ねッ!」
いきなり引っ張ると思わなかった猫井川は、まだ荷台とロープの間に指を置を残していたのでした。
やばい、挟まれる!
そう思った瞬間、反射的に指を引っ込めました。
引っ込めるのが早いか、挟まるのが早いか。
指の行方は。
どうやら、今回は引っ込めるが早かったようで、怪我はありません。
ちゃんとヒヤリハット収まりました。
「保楠田さん、合図してから引っ張ってくださいよ。
今の危なかったですよ。
指を挟みそうになりましたよ。」
「ごめんごめん。
ちょうど側にいたし、すぐやってもいいものかと思って。
大丈夫だった?」
「とりあえず、大丈夫です。
でも、あの勢いで挟まれていた、やばかったですよ。」
猫井川は、ほっとした表情で、保楠田に言いました。
「そうか、よかった。
でも指を挟むと、痛いし、下手したら骨が折れるよー。
俺も一度、玉掛けの時に指を挟んじゃってさ」
保楠田は、自分の怪我の経験話を思い出したようです。
「何ですか、それ。
痛い話ですか?」
痛いのが苦手な猫井川は、聞きます。
「そうそう。その時の肉と骨は・・・」
ひとまず、荷台とロープに指を挟まれるピンチを脱した猫井川は、二人してトラックに乗り込んでから、延々と保楠田痛い話を聞かされるのでした。
このピンチは、まだしばらく続きそうです。
ヒヤリハットの解説
今回は、トラックで荷物を載せる時のヒヤリハットです。
トラックの荷台に載せた荷物は、アオリよりも高く積まれると、走っている最中に落下してしまいます。
落下防止のために、荷物にカバーを掛ける、ロープガチガチに縛り付けます。
もし走っている最中に、物が落下して、後続車に当たるなどの交通事故を引き起こすと、落とし主の責任になります。
ロープ固定はとても強く縛り付けます。
もし指を挟み込んでしまうと、かなり痛い思いをします。
場合よっては、骨が折れることもあります。
イメージとしては、勢いよく閉めたドアに指をはさむ、といったところでしょうか。
とにかく痛いです。
指をはさむという状況(事故)は、何も荷台でのロープ固定の時だけではありません。
非常に多いのが、玉掛けの時に、荷物とワイヤーの間に指をはさむというものです。
玉掛けとは、クレーン作業の時などに、荷物を吊上げられるようにワイヤーを掛けてやる作業のことです。
荷物にワイヤーを掛け、クレーンに吊り上げるように指示した時に、もしワイヤーを握っていたら。指が荷物とワイヤーの間にあったとしたら。
指はとてつもない痛みに襲われることでしょう。
指をはさむという事故は、命に関わるようなものでありません。
打撲、または骨折です。どちらかと言うと軽微な怪我の範囲です。
墜落や転落、機械に体全体が巻き込まれるなどの事故は、命に関わります。そのためリスクアセスメントなどでも取り上げ、特段の注意を払います。
指のはさまれなどは、このような命に関わる事故に比べると、注意が行き届かないかもしれません。
しかし、怪我をした本人とっては一大事です。
仕事中の事故ですから、労災です。しばらく通院も必要になるでしょう。
何よりも痛い思いをします。
一方で、手の位置を毎回チェックする、声掛け合図を徹底するといった、ソフト面での注意であっても、防ぐこともできる事故でもありますね。
今回のヒヤリハットのまとめ
ヒヤリハットの内容
コンパネをトラックの荷台にロープで固定していたら、指をはさみそうになった。
対策
1.固定物と荷物の間に指を入れない。
2.2人で引っ張る場合は、声を掛け合い、引っ張るタイミングを合わせる。
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