ヒヤリハット11 猫井川、ショベルカーにひかれる?
こんなヒヤリハットのお話しを、解説とともにご紹介します。
今回は重機作業(ショベルカー)での、あわや「はさまれ・巻き込まれ」のヒヤリハットです。
猫井川、ショベルカーにひかれる?
ここしばらく続いていた水道管工事も、ようやく終わりに近づきました。
本日は、仕上げの作業にとりかかっていました。
水道管の設置は全区間完了したので、残りは掘削したところを、きれいに整地していく作業を残すばかりでした。
今回は犬尾沢ガウ、猫井川ニャン、保楠田コンの3人で作業を行います。兎耳長ピョンは、別の現場です。
残りわずかということで、少し気も緩んでくる時期なのですが、犬尾沢はそれを許しません。朝のミーティングでは、気の引き締めにかかりました。
「残りは整地なので、今日か明日くらいに終わると思います。
俺がショベルカーで砕石を敷いていくので、保楠田さんと猫井川は、均していってください。
終わり掛けの作業で、怪我をしたという話を聞いたことがあります。
後片付けとか、仕上げだからと油断があったみたいです。
今日も重機作業です。しっかり周りのことに注意してください。
この現場もあと少しなので、ご安全に!」
2人に油断しないようにと強く伝え、ミーティングは終わりました。
ミーティングで話していたことですが、犬尾沢は以前、別の工事監督から、後片付け時に作業員が怪我をしたという話を聞いたことがありました。
後片付けの時、作業員同士話しながら、荷物を運んでいたところ、つまづいて転んでしまい、額を切ってしまったというもので。
工事の後片付けだからと、作業員はヘルメットをかぶっていませんでした。それが額の怪我に繋がったのでした。
犬尾沢独り言ちます。
「どうしても、後片付けとかになると、気が抜けるからなー」
どのような現場であれ、いつ誰が怪我をするのかなど、予測が付きません。
作業リーダーとして、しっかり気を引き締める必要があると考え、発破をかけたのでした。
「さっき犬尾沢さんが言ってた怪我って、牛黒さんのことですよね?」
猫井川が、保楠田に尋ねます。
「うん。あの家を建ててた現場。足場材を片付けている時らしいよ。
3針縫ったらしい。」
保楠田は答えます。
「そういえば、しばらく額にガーゼ付けてましたね。
でも、怪我を気にせず、ガハハハと笑ってましたけど。」
「あー、あの人はそういう人だから。」
保楠田と猫井川は、額に怪我をしながら、豪快に笑う牛黒ベコを思い出していました。
2人がそんな話をしながら、スコップとジョレンを持って、スタンバイをしました。犬尾沢もショベルカーに乗り込み、エンジンを掛けました。
犬尾沢のバックホーは、バケットで砕石をひとすくいすると、埋戻した土の上に、ザーッと下ろしました。
この作業を何度か繰り返して、ある程度の山を作りました。
今度はその砕石の山を崩して広げ、ショベルカーを前後させながら、均していきました。
ショベルカーで、ある程度均すと、保楠田と猫井川が手作業で平坦にしていくのでした。
平坦にしていくのは、意外とコツが入ります。
以前の猫井川であれば、やればやるほど、デコボコになるということもありましたが、今はそんなこともありません。
バックホウで砕石を広げ、人力で仕上げを行う。
3人は黙々と作業していきます。
とても順調に作業は進んでいったところで、保楠田は一度レベルで平坦度を確認しようと思いました。
「猫ちゃん、レベルで確認するから、スタッフ持ってきてくれる?」
「はい。あー、スタッフは車のなんかですね。取ってきます。」
猫井川は、そう返事をすると、作業していた手を止め、向かおうとしました。今いる場所から、作業車の間には、ショベルカーが動いています。
猫井川はショベルカーが作業していることは、分かっていました。
視界の端にも、薄っすらと捉えてもいました。
しかし十分に左右の確認はしませんでした。
真っ直ぐ作業車を見つめ、一歩、二歩進んだ時でした。
唸りを上げて、バックで進んでくる、ショベルカー。
犬尾沢は、左の肩越しに後方を見ていましたが、猫井川の姿は、死角で見えていないのでした。
「猫ちゃん、危ない!
犬尾沢君、ストップ!!!」
保楠田はショベルカーが猫井川に迫っていることに気がつき、大声を張り上げ、犬尾沢に見えるように大きく手を振りアピールしました。
驚いて、ブレーキをかける犬尾沢と猫井川。
間一髪。
ショベルカーは動きを止め、猫井川も石のように固まっていました。
「ヴァ、バカヤロー!!」
犬尾沢の怒り声が響きます。
「猫ちゃん、よく見ないと危ないだろう!!
ひかれたら、死ぬよ!!」
保楠田も大声で怒ります。
「朝、気を引き締めろと言っただろうが。
ひかれたら、頭を少し切ったどころでは済まないぞ!」
怒る犬尾沢の声は、エンジン音に負けません。
2人にこっぴどく叱られた猫井川は、しゅんとして、しっかりと左右を確認することを心に刻んだのでした。
ヒヤリハットの解説
今回のヒヤリハットは、ショベルカーに接触、ひかれそうになるでした。。
もし接触と鳴ると、命にかかわる大事故になりかねません。
保楠田がいち早く気づいてくれたので、事故に至りませんでしたが、危機一髪でした。
猫井川は、今回は保楠田からも怒られてしまいました。
仲のいい保楠田が怒るくらいです。
よほど危険だったということがわかります。
建設工事では、多くの機械(重機)が動いています。ショベルカーや移動式クレーン、ブルドーザー、くい打ち機などです。
工場などでもフォークリフトやトラックなど動いています。
これらの機械と一緒に作業をことは、接触する危険とも隣り合わせているのです。
建設機械(重機)との接触事故は、少なくありません。建設業の三大事故として「建設機械の事故」が挙げられるほどです。
考えるまでもありませんが、相手はとてつもない車体重量ですから、決して人間では勝てません。上に乗られると、致命傷間違いなしです。
しかしショベルカーなどは、乗用車などに比べると、走行スピードはゆっくりです。移動時は、せいぜい時速10キロから20キロです。作業中であれば、もっと遅いスピードになります。
しかし今回の猫井川たちのように、機械と人が一緒に作業する場合、思いがけず近づきすぎることもあります。
機械が後進している先に、作業員がいて、気がついたときには、回避もできなかったということです。
バックホウの上部は360度旋回できます。しかし敷均しなどをする場合は、旋回せずに前後することもあります。
後進時、オペレーターは、肩越し後方確認を行います。
しかし肩越しのため、全範囲を見ることはできません。
また建設機械は車体が大きいため、死角の範囲も広くなります。
作業員が死角にいたとしても、オペレーターは見つけられないのです。
現在、広く使用されている建設機械には、バックビューカメラやセンサーが付いているものもあり、安全性が高くなっています。
そのような安全性能が高い建設機械を使用する場合でも、人と近接して作業する場合は、誘導者を配置することが必要です。
誘導者を配置できない場合は、バリケードなどを配置して、明確に人と機械の作業場所を区切る工夫も必要になるでしょう。
今回のお話では、作業時というより、移動する時に問題がありました。
直接作業ではない時、例えば機械の作業範囲を横切ったりする場合は、必ず状況を確認するとともに、オペレーターに存在アピールしながらがいいですね。
今回のヒヤリハットのまとめ
ヒヤリハットの内容
後進するバックホウにひかれそうになった。
対策
1.機械と人の作業範囲を区分する。
2.人と機械の混在作業では、誘導者に誘導させる。
3.機械に接近する必要がある場合は、機械の動きを確認し、オペレーターに合図する。
私は労働安全コンサルタントとして、職場での労災防止についてのブログを書いております。
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