文章は「逃げ」だった ークリスマス金曜トワイライトに寄せてー
パッと画面に映ったのは、リライトnoteのトップ画とアイコンだった。
拍手の中、レモンイエローとグリーンの抽象画は爽やかである。
黒いニットの上半身はすましている。
確かにそこに存在する女。
けれどそんな女はどこにもいない。
此処にいるのは、冷えた指先から滲み続ける冷や汗をどうにかしようと、必死でハンドタオルを握りしめる女だった。
全身を小刻みに震わせ、歯と歯がぶつかり続ける音すら制御できない、力無い女だった。
どうしようもなく心細くなって、厚手のガウンをおもむろに羽織った。
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「マイクをオンにして下さい。」
優しい声に促され、見慣れぬZOOM画面を震える指でそっとつついた。
言葉も息もぶつぶつと切れ、深く潜って伝えようにもそんな余裕など無く、浅瀬を弱々しく掬うだけの私だった。
この悔しさ、このもどかしさを、知っている。
このやるせなさが、その昔、私にペンを握らせたのだった。
そうだ、
だから、書くことにしたのだった。
話せないから書くことを選んだのだった、私は。
文章は「逃げ」だった、私にとって。
逃げた先の「居場所」だった、私だけの。
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noteというパラレルワールドが存在することを知ったのが4月。
暗い文章、潜った文章をただただ書き続けた春。
企画、お題、コンテスト、方法も分からないまま体当りし続けた夏。
何にも引っ掛からず、滑り落ちて零れ落ちて、文章が翳った秋。
それでも読み続けてくれる誰かの言霊に引き揚げられて、前を向いた冬。
この冬、私の文章は、広がりたいと訴えるようになった。
この両腕で囲った小さな枠内で鳴かせるだけでなく、遠くまで飛ばしてくれと訴えた。
窮屈な思いをさせないでくれと訴えた。
「逃げ」だったはずの文章に、いつの間にか手を引かれている。それは私を突き動かし、色々な人々に繋げ、初めて見る景色に出会わせてくれる。
ZOOMのマイクボタン、note界を行き交う面々、Twitterに流れる温かい文字、私のペンネームが活字になる瞬間。
このまま進み続けた先には何が待っているのだろうか。
どんな景色が見られるのだろうか。
感傷的な少女は微笑むだろうか。
彼女の「逃げ」を肯定してあげられるだろうか。
分からないことだらけのこの先を、私は私の文章で切り裂いていく。
寝不足の乾いた角膜に日が染みた。
目を細めて見上げた空は、見たことのない色をしていた。
厚い暗雲は、切り裂かれたように。
光は、溢れて然るべきかのように。
未熟な私は、前に進むしかないように。
#クリスマス金曜トワイライト 授賞式に参加しました。
恋愛って何だろう、
男女って何だろう、
女って何だろう、
そんな「基盤」について考えました。
登場人物達の個性や要点だけを残し、原作の世界を広げ、深めていけるのが興味深かったです。
緊張しましたが、思い切って授賞式に参加させて頂きました。
ガタガタ震えながら開いたZOOMのドア。
その奥には、穏やかな眼差しと優しい声が交わる、クリスマスのようなお部屋がありました。
池松さん、仲さん、クニミユキさん、イベントスタッフの皆様、そして『レモンドロップ』を読んで下さった方々、どうもありがとうございました。
感謝しています。