SF素人が『三体』に挑戦するよぉ⑦ ~死神永生(上)~
こんにちは。三体感想記である「SF素人が『三体』に挑戦するよぉ」です。
本編では最終巻である『三体 Ⅲ』までついに来ました!
この記事は読書家になりたい圧縮ロフトが非常に難解で現代SFの最先端に輝くという劉 慈欣の『三体』の読破に挑戦しようという試みです。
なるべくネタバレなしでやっていきますので、早速三巻 上を紹介していきましょう。
プロローグ 1453・コンスタンティノープル
『三体Ⅲ 死神永生 (上)』のオープニングはコンスタンティノープル陥落の1453年まで遡ります。遡り過ぎじゃねえか??!!!
コンスタンティヌス帝は攻め手のオスマン帝国の首魁であるメフメト二世に起死回生の一撃を与えるため、
その役を買うと名乗り出た一人の魔法使いの暗殺者・ディオレナに細心の注意を払って依頼を行う。
どのような方法で敵を暗殺するのかとコンスタンティヌス帝が聞いたところ、女の魔法使いは
「封印が施された聖櫃の宝物、頭蓋や体内の内臓のような閉ざされたものも私にとっては『開かれて』いるのです。ゆえにそこから簡単に持ち出してこの手に納める事ができる」
ディオレナはどこでもその魔法の力を使う事ができる訳ではなく、特定の場所で儀式的に行う必要があるようで、
コンスタンティヌス帝の指示による捕虜に対する一度の首実験を経てメフメト二世の暗殺に挑むが、
残念ながら我々がジャンヌ・ダルクがごとくディオレナの名前を知らないようにこの暗殺は成功せず、コンスタンティノープルは教科書の通りに陥落するのであった。
世界史の小話では難攻不落の城塞都市であったコンスタンティノープル陥落の原因は『裏口の鍵が開いていたから』だったというのは知っている人もいるかと思うが、
閉じたものの中身を開け放たれているものと同じかのようにその手に納める事のできる魔法使いの守ろうとした街が閉じていなかったという事が原因で敗北するというのは皮肉な結果である。
SF慣れをしている我々には「閉じているものも開いて見える」というワードにピンとくるものはあるが、ゲェー!ま・まさか四次元空間?!!
四次元に入る力を三体危機よりはるか前に人類が出会っていたというのか??!!!!(強めのフリ)
階梯計画
『三体』3巻(上)の前半は三体危機が羅輯によって解決した2巻(下)からその時間を戻した、三体危機が出現した一巻の時点の別視点の物語で、
階梯計画という面壁計画の裏で進行していたとある斥候作戦から始まる話だ。
葉文潔、汪淼、羅輯達に続いての新たな主人公である
美少女・程心を中心に話が進む事になるが、階梯計画の事を語る前に一人の男、雲天明の話をしよう。
彼は航空宇宙学を大学で学んでいた主人公・程心の同級生だったが、生来の虚弱で若くして末期癌患者として入院生活を送る事となり、何やかんやあって超大金持ちとなって、
羅輯とも多少因縁のある宇宙防衛理事会のセイという女性が発案した、地球人から宇宙開発のための資金を募る一環であり宇宙の星を販売するという星群計画に乗り
地球から286.5光年離れたDX3906星を買い、大学時代からの想い人である程心にプレゼントし、安楽死を選ぶのであった。
ちょっと何言ってるか分からないこの雲天明は、つまり陰キャを超えた無キャを生きた男で
イマジナリー彼女を脳内構築した羅輯をありあまる経済力で一点突破するマハラジャもやしだ。
約20年の前半生で無を生き、治療費のため家族からも疎まれていた天明は世を去る前に大学時代の初恋の女性である程心に心を込めた贈りものをしたのだった。
彼は贈り主が自分であるとも告げる事もなかった。そういう所だぞ!!!!
程心
程心は大学で宇宙航空学を学んで三体危機に際しては三体文明に対するスパイ活動を行う組織の一員となる、
汪淼のような行動タイプ善の科学者という訳ではなく、羅輯のようななろう主人公でもない、三体ワールドでは珍しく美少女設定がされている才色兼備の女性主人公だ。
ここまでで汪淼や羅輯のような前進する力に溢れた主人公に慣れていると程心の物語には少し頼りなく、歯痒い思いをするかもしれないが
三体ワールドはドクターストーンの世界と同じ主人公補正が働くので科学の知識があれば主人公として大丈夫だ。
羅輯を三体危機の英雄で、ただ一人で滝を昇った鯉とするなら程心と雲天明は暗黒森林宇宙時代の連理の枝である。そういう意味では彼らは二人とも主人公だといえる。
どちらが欠けても三体危機が終わった後にこれから始まる宇宙時代の物語は切り抜けられないのだ。
人類を三体文明に送れ
階梯計画は面壁計画と同時期に地球が編み出したという対・三体文明戦略の一つである。内容はメチャクチャざっくり言うと
宇宙の三体艦隊の方向に人間を飛ばせば、敵である地球人の情報を得たい三体文明側は絶対に研究のため鹵獲しようとするっしょ、
そしてその捕まった人間に向こうの情報を流してもらおうぜという
もはやガバガバの極みみたいな作戦なのだが、程心が所属する事となったPDC戦略情報局、通称PIAはスパイ組織なのでこのくらいはアリなのかもしれません。
世界まる見えで昔のスパイの情報交換方法特集とか見たら犬のウ〇コに偽装した情報紙片ケースとかありましたから、心理の虚をつく奇策こそ戦争には必要なんでしょう。
さらに目標の航行速度である光速の1パーセントに達させるためには脳しか送れないため、
三体人の科学力で脳からクローンの体を作り全身を復元復活させる事ができるとしても
この任務につくスパイには一度死んでもらわなければなりません。
捕まるかどうかは分からず、復活は相手頼みで、
全身復活できるとも限らず(培養液の中で脳に電気信号だけ与えられて研究されるとかもあり得る)生き返っても三体星に食えるものがあり生き永らえられるのかも分からない。
人の心がないスパイ脳みそ君作戦には終末状態患者である雲天明が選ばれてしまう。
しかし彼が宇宙船に乗る姿、脳だけになる直前程心は自分に星を贈ってくれた人物が天明だと知り自分を想ってくれていた人物を自分の手で地獄に送るのだと知り、絶望の中冬眠にはいり未来へ向かう。
長いのでいったん分けます。感想記後編の⑧は羅輯も向かった未来の世界の話となります。そちらもぜひ読んでいって下さい。