SF素人が『三体』に挑戦するよぉ⑤ ~黒暗森林(下)~
こんにちは。三体感想記である「SF素人が『三体』に挑戦するよぉ」です。
この記事は読書家になりたい圧縮ロフトが非常に難解で現代SFの最先端に輝くという劉 慈欣の『三体』の読破に挑戦しようという試みです。
なるべくネタバレなしで読書感想しますので、早速二巻 下を紹介していきましょう!
三体Ⅱ 下巻は満を持しての3人、鋼鉄のイケオジ軍人章北海、最強の物理学者丁儀、そして我らの面壁者羅輯を主人公とした群像劇である。
ヒュ~~~ッ!!一巻から登場している人物を中心とした頼れるタフガイが集結!!ヤツらの体を見ろよ…!まるで鋼みてえだ!!
これなら三体文明に勝てるかもしれねえ!!
彼らの活躍を中心に、そしてタイトルの黒暗森林とは何なのかという所に迫っていこう。
さよなら21世紀
三体2の下巻は冒頭にベネズエラの大将、マニュエル・レイ・ディアスの面壁者としての作戦と破壁人との戦い、そして脳科学者ビルハインズが生み出した精神印章なる技術の発明の経緯が描かれている。
ディアスの作戦はスーパー水爆を起点とした太陽系のカタストロフを引き起こす死のピタゴラスイッチを作り、
三体人が地球侵略を企てるならば地球を太陽に落として死なばもろともの姿勢を見せ相手をあきらめさせるというもの。
残念ながら面壁者権限は人類の生存を脅かすレベルのものは作ることができないため破壁人アリストテレスに看破された後、
惑星防衛理事会にも止められてしまい非業の最後を遂げることとなる。
ビル・ハインズの精神印章は絶対改変不可能の信念を精神に刻み込む脳科学研究の副産物であるものの素人目に見ても宇宙戦争の必勝のコマとは言えない。
ハインズの面壁者としての計画は一貫して脳科学から人類の精神成長を促し400年後の最終決戦に際して現代からは思いもつかぬ超兵器・超戦術を人類に作らせることだが、
そのためには微細工学の領域を高める必要がありどうしても智子の壁(『三体』一巻の冒頭より地球に起こっている、三体文明と智子による物理学発展の阻害行為)にぶつかってしまうのだ。
面壁者は残り二人。かくて何の希望も見いだせないまま時間による技術革新だけを頼りにハインズと羅輯は冷凍睡眠で2世紀後の未来へ向かう事となるのである。
一般人、羅輯
地球三体協会の病原ウィルス攻撃により自身の意思でなくコールドスリープすることとなり未来の世界に来た羅輯。
185年間の冷凍睡眠を経た羅輯だが、歳月の経過による地球科学の進歩、様々な宇宙観測によりなんとすでに三体危機は去ったと未来人から告げられる。
仮に三体文明が決戦を仕掛けてきたとしても現代の地球の科学力なら楽勝であるとハイテク、便利な生活に手厚い社会保障と楽園の生活を未来人は謳歌し羅輯も(病原ウィルスに侵された肉体も未来の医学で治療され)
冷凍睡眠前の極限状態からは思いもよらぬ平和な世界ぶりに自らを脅かすものは本当に去り、天国の生活を手に入れたのだと最初は感じていた。
しかし、未来人たちは明朗で自信に満ちているもののどこかおかしい。なにか違和感を覚えるし、読者としても異星人と戦ってくれないと困る。
最初はハインズの精神印章が猛威を振るっているのかとも思ったが、そんな事はなかった。なぜか三体2巻ではハインズの扱いは総じて悪い。作者は脳科学者に恨みでもあるのか。
未来の医療技術に期待し白血病の治療のためともに未来にやってきた元々羅輯の護衛であるムキムキ警官史強と共に行動する過程で面壁者制度がなくなり一般人になった事を羅輯は理事会に告げられるも、
2世紀前、羅輯が冷凍睡眠するかしないかのタイミングで地球三体協会が作成したらしいコンピュータウィルス ─ ターゲットの周囲にある機械のプログラムをトチ狂わして危害を加えさせる ─ が命を狙っているため
ハイテクで固められた楽園地下居住エリアに住むことができず、二人は懐かしの地上へ向かう。冷凍睡眠から覚めたものはハイテクの楽園居住エリアよりも馴染んだ地上で暮らすものが多いようで、羅輯は史強とともに慣れ親しんだ北京の団地に暮らすこととなった。
章北海
変わって三体艦隊との終末決戦のため羅輯たちと同じく冷凍睡眠していた章北海は宇宙軍と合流し恒星級宇宙艦≪自然選択≫の艦長代行の地位に任命される。
未来では地球文明圏の一体化により話者の多い中国語と英語が入り混じった公用言語が広く用いられているらしい。
まぁいいよ。日本のアニメだってみんな日本語ペラペラだもんな。過去人の章北海や羅輯達は冷凍睡眠から覚めた後まずこの文化の壁に出くわすようだ。
三体一巻で出現した地球を明け渡してほかの星に逃げようとする逃亡主義という思想者よりさらに厄介な、
ハインズの精神印章により「地球は終末決戦に必ず負ける」という考えが絶対に消えないよう思考に刻み込まれた刻印族と呼ばれる者たちが宇宙軍に入り込んでいるため、精神印章技術が開発される前の時代に冷凍睡眠を行った北海であればとたたき起こされ抜擢されたのである。
しかし章北海は美女艦長東方延諸に代行の権限付与がデジタル認証され戦艦を完全掌握したのちに、なんと三体艦隊ではなくまったくあらぬ方向へ宇宙艦≪自然選択≫を最大戦速で走らせ始めるのだった。
絶対に刻印族ではありえない時代出自と軍人としての堅固な勝利主義者として自身を迷彩した北海は
2世紀前から父より遺志を受け継ぎ冷静に戦力分析し地球の敗北に際して人類の遺伝子を深宇宙に逃がす計画を立てていた信念からの逃亡主義者だったのだ。
地球、ダサい
同じく冷凍睡眠から覚まされ宇宙に上がった丁儀は、三体人の偵察船と目されている「水滴」と名付けられた航行物体の検分を宇宙軍から依頼されていた。
智子による物理学発展の封じ込めにより基礎理論が進歩しない地球では2世紀前の物理学者である丁儀でも十分通用する。羅輯達より8年早く冬眠から覚醒していた丁儀はすぐに北京大学で教鞭を取って
並ぶもののないキャリアを形成しており、加えて鹵獲された三体文明の探査機の調査は本人立っての希望でもあった。
水滴と呼ばれるのは進行方向である地球側を重力の働く地面方向として、背面である三体星側をとがった頂点とした文字通り「水滴型」をしていたからであるが、
またその滑らかな宇宙の星々を映す金属面の神秘性から、未来地球では敗北を認めた三体文明が友好と降伏の意志のために地球に贈った美術工芸品だと考えられていた。
一応未来人のフォローをしておくと、地球からの観測結果では250年の宇宙航行の結果陣形も保つことのできないほど疲弊しきった(ように見える)三体艦隊と、
宇宙技術発展のため地球の全リソースをつぎ込んだせいで「大峡谷」と呼ばれる地球全土を襲った飢饉が発生し、それを克服するため宇宙開発をいったん止め飢饉の解決に全人類で挑んだ結果、爆発的に科学力発展を遂げたのだ。
これが目覚ましく地球の科学力はすでに三体文明を遥か超えたと自負した結果、地球側の圧倒的勝利は自明で終末決戦など起こらないものと考えられていたのである。
ボロボロの宇宙航行を終え地球に到来し戦うまでもなく敗北する三体文明を頭に思い描き、「かわいそうだし火星とかを与えて住ませてやろうぜ?人類が手伝ってやってさぁ」などという論説グループまで現れてくる始末。
押すなよ!!絶対押すなよ!!宇宙は絶対零度の真空ではなく熱湯風呂だったのだ。
丁儀は美少女助手の西子と(三体主人公、どいつも美女はべらしがち)他探査員と共に地球連合宇宙艦隊全隻の見守る中、鹵獲した「水滴」~本部隊の三体艦隊より圧倒的に早く、たった一機で太陽系に到達したため偵察機であると見られたそれ~ を捕獲し表面に触れてみるも、
おぞましいほどの科学力で製造されている事を一瞬で見抜き、同行者達にすぐ現場から逃げることを指示するが捕獲用宇宙船の中で「推進光輪」と後に呼ばれる水滴の加速用ロケット噴射のようなものをゼロ距離で浴び調査隊は蒸発したのだった。
ディ、丁儀~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!
そしてさらにすぐそばにいた全人類の希望を乗せた地球連合宇宙艦隊であるアジア艦隊、北米艦隊、ヨーロッパ艦隊恒星級戦艦2011隻はたった一隻の「探査機」によって紙クズのように切り裂かれ全滅することとなる。
この惨劇を受信する数時間後に地球は増長していた心とすべての希望を打ち砕かれ世界的に大混乱に陥るのだった。
SF素人が『三体』に挑戦するよぉ⑥へつづく。