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本当に変るべき人は誰なのか

今日の言葉

イソップ寓話より引用

196)蛇と蟹
蛇と蟹が一緒に暮らしていた。蟹は蛇に対して率直で親切にふるまったのに、蛇はいつも陰険で邪だった。率直につきあってくれるように、そして自分の気性を見ならうように、とたえず忠告しても蛇が聞かないので、蟹は腹をたて、蛇の寝入るのを見すまして、喉を挟んで殺してしまった。そして、真一文字に伸びたのを見て言うには、 「おい、真っすぐになるなら、俺の忠告を聞かなかったあの時だ。死んだ今では遅いわい」 生前、友に意地悪をし、死んでから善行を積むような人間に、この話をしてやるがよい。

【引用元 岩波文庫 イソップ寓話集 著 イソップ 翻訳 中務哲朗】


本当に変るべき人は誰なのか

この寓話を読んで最初に感じたことは、なぜ率直で親切な蟹が、陰険で邪な蛇と一緒に暮らしていたのだろうかという疑問です。

もしかしたら、蟹は自分の正義感から、蛇を率直で親切な性格に変えようとしていたのではないでしょうか。

蟹は自分を見習うように蛇に忠告を続けたのに、蛇はいつまでたっても改心しませんでした。

そのため、蟹は怒りにまかせて蛇を殺してしまったのです。

殺した挙げ句に「おい、真っすぐになるなら、俺の忠告を聞かなかったあの時だ。死んだ今では遅いわい」という台詞は、蟹の本性を見るようです。

そして、こういう関係性は人間社会でも垣間見えます。

「私が正しいから、あなたが変わりなさい」と、常に相手を変えようとする人がいます。

そして、相手が変わらないと、変わらないことに対して怒りをぶつけます。

しかし、本当に相手は変わりたいと思っているのでしょうか。

蛇は、本当に蟹のようになりたいと思っていたのでしょうか。

他人を変えようとして、変わらないと相手を攻撃してしまう。

本当に変わるべき人は誰だったのでしょうか。

イソップ寓話集の「蛇と蟹」を読んで、そんなことを感じました。

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