高圧洗浄機の使い方【Cthulhu小説】
晴れ渡ったある日、ハワードは遺品として残された祖父の古びた書棚を整理していた。
ふと見ると、多くの分厚い本の間に挟まれている、黒ずんだ古い手帳を見つけた。
「何だ、これ?お爺ちゃんの手帳かな?」
と、手帳を開くと、あるページに書かれた「イブン・ガジの粉の作り方」という言葉が目に飛び込んできた。
「これは何だろう?」
ハワードは興味本位で手帳の指示に従い、材料を集め、夜な夜な作業を続けて、その粉を作り上げた。完成させた粉を部屋に撒いた途端、彼の住んでいた家が一変。彼の目の前に、今まで見えなかった多数の地縛霊が現れた。
「うわっ!何だこれ!?」
驚くハワードの眼前には、昔の服装をした老人や子ども、ペットの犬や猫、さらには血まみれの鎧を身に纏った中世の騎士までが浮かんでいた。
「なんで僕の家にこんなにも!?」
ハワードは大慌てで手帳をめくり、この霊たちを見えなくする方法を探した。しかし、手帳にはそのような情報はなく、ハワードは困り果ててしまった。
そこで彼は、突然ひらめいたアイディアを実行することにした。
「こいつらは、あの粉を撒いた途端に現れたんだ…。それならば、この部屋に撒いた粉を掃除してピカピカにすればいい!」
ハワードはガレージからお爺さんが使っていた高圧洗浄機を持ち出してきた。
霊たちを前に、「準備はいいかい?」と一言。そして、高圧洗浄機を起動させ、部屋の中を力強く洗い流した。水しぶきと共に、部屋の中をうろうろしていた地縛霊たちは次々と消えていった。
洗浄が終わり、部屋の中は水浸しになったものの、霊たちの姿は完全に消え去っていた。ハワードはホッと一息ついて、
「やったぜ…」
と呟いた。
次の日、ハワードは部屋中の水を拭き取りながら、
「霊より水拭きの方が大変だ…」
と呟き、笑いながら掃除を続けたのであった。
(了)
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