業界研究、5大総合商社の評価、企業概要、沿革、特徴などについて解説!
2017年からキャリア(就職、転職、業界研究)関連記事を多数執筆してきた7年目ライターが今回、5大総合商社について解説いたします。
「商社もしくは商社マンを一言で説明せよ!」と言われたら、私は即座に『スカウトマン』と答えます。
自社以外の企業から商機を見出し、その企業の商品やサービスを必要としているもしくは広めてくれそうな企業などとつなぎ、そして市場へ送り出す商流をつくるのが商社だからです。
海外企業からまだ日本に上陸していない商品やサービスを輸入し、上陸させて全国に広めることもあります。
商社マンは商機を見出した企業に声をかけ説明、企画をプレゼン、ときには説得を重ね、企業と企業をつなぎ、商品やサービスを世に送り出していく姿はまるで、スカウトマンなのです。
企業と企業をつなぎ、商品やサービスを世に送り出したらそれで終わりではありません。大事なのはそこからとなります。
商社マンは自ら見出し生み出した商品やサービスを軌道に乗せ、関わった企業そして在籍する商社にも最大限の収益をもたらしていく、いわば消費者、クライアント、商社といった三方良しの関係を実現させなければならないのです。
会社員でありながら経営者ばりの動きができる点が、商社、商社マンの大きな魅力と私は考えています。
5大総合商社とは
・伊藤忠商事(8001)
・丸紅(8002)
・三菱商事(8058)
・三井物産(8031)
・住友商事(8053)
の5社を指し、ちなみに東洋経済オンラインの就職人気ランキング(2021年卒・後半)では、
・伊藤忠商事…1位
・丸紅…5位
・三菱商事…8位
・三井物産…12位
・住友商事…23位
と5社とも高い人気を得ていました。まずは堂々の1位を獲得した伊藤忠商事についてまとめていきます。
商社の歴史
就職活動を始める方にまずお教えしたいのは社団と財団のちがいです。
社団=人のあつまり
財団=集まった資金
と覚えておくといいです。これを知ると、あとの話が少しだけ頭に入りやすくなると思います。
<日本最古の商社>
本題に入りますが商社のはじまりは、同時に
・会社
・民間による海運
・グローバルビジネス
のはじまりでもあるといっていいです。総合商社を目指している方ならご存じのとおりですが、日本でいちばん最初に会社をつくったといえるのは坂本龍馬で、その会社は亀山社中です。社は人、社中は人のあつまりの意。つまり坂本龍馬が普段関わっていた仲間(同志)らと一緒につくった人のあつまりなのです。そして、
“船の回送や運輸業、銃器のあっせんなど”
を行っていたとのことで、亀山社中と現代の商社のやっていることは、ITや技術の発展は抜きにしてほぼ変わらないといえるのです。ちなみに財を投じ支援したのは当時の薩摩藩や大商人の小曽根家でした。亀山社中はのちに土佐藩を支援する海援隊へと発展して、
“運輸、射利、開拓、投機”
の営利活動を行っていました。龍馬の死後、海援隊は解散しましたが、土佐藩士らが新たに九十九商会を設立、海援隊に籍があった土居市太郎が代表に就きます。そして母体である土佐藩の幹部の一人にあの三菱創業者の岩崎彌太郎がいたのです。
岩崎彌太郎はのちに九十九商会の経営者となり「三菱商会」と改称します。その流れを汲み今も残っているのがもうおわかりのとおり今の三菱グループや、財閥系商社、三菱商事ということになります。
<財閥系商社>
財閥系商社は前項でご紹介した三菱のほか、住友、三井が当てはまります。商社としての住友は1919年に設立された大阪北港がはじまり、三井は戦後設立された第一物産からスタートしています。
そして商社にはもうひとつのグルーピングがありそれが繊維系商社で、こちらも覚えておくといいです。
<繊維系商社>
繊維系商社は5大総合商社でいえば、伊藤忠と丸紅が当てはまります。かつて『五綿八社(関西五綿・船場八社)』と呼ばれ明治時代、商社として紡績会社を支えていました。具体的には紡績会社のために綿花を調達し、製品を販売、輸出する支援をしていたのです。
関西五綿は
・伊藤忠
・丸紅
・日本綿花(現在の双日)
・東洋棉花(現在の豊田通商)
・江商(現在の兼松)
で、船場八社は、
・竹村商店
・岩田商事
・丸永商店
・又一
・田附商店
・八木商店(現在のヤギ)
・竹中商店
・豊島商店
です。船場八社はもともと規模が小さかったとのことで現在残っているのは、ヤギのみとのことです。
ここでご紹介した流れはお気づきのとおり非常にざっくりとしたものですので、より具体的かつ細かな流れはぜひ、各商社のコーポレートサイトの沿革などでご確認いただけますと幸いです。
参考文献
ながさき旅ネット 長崎市亀山社中記念館
長崎市亀山社中記念館 海援隊とは
三菱人物伝 vol.08 九十九商会の発足
三井物産 沿革
住友商事 沿革
日本経済新聞 工業化支えた繊維商社 「五綿八社」の興亡(1)
戦前期大阪の繊維関連問屋卸商について
商社の機能
亀山社中は倒幕、海援隊は土佐藩を支援、五綿八社は紡績会社を支援するために活動していたわけですが、現在の商社もまた
・自社
・取引先
の利益追求のために活動しているといえます。そして商社は
・商取引
・調査
・市場開拓
・開発
・経営
・リスクマネジメント
などの機能を有しているとされています。
商社に向いているかもしれない人
・コミュニケーション能力に自信があり営業を希望している方
・数字、統計、分析に興味がありマーケティングに興味がある方
・金融関係に詳しいまたは専攻者
・企業間投資に興味がある方
・国際商取引に携わりたい方(将来的に)
・語学得意で海外で働きたい方(実績を積んで)
これらに当てはまる方は商社を目指していいと考えます。
ここまで5大総合商社の概要、商社の歴史、機能、向いている人についてお伝えしたところで後半、各社の評価、企業概要、沿革、特徴についてまとめていきます。
伊藤忠商事の評価、企業概要、沿革、特徴
伊藤忠商事は日本経済新聞によると“大手総合商社 繊維、食料など生活消費関連に強み。非資源の利益首位”と。会社四季報オンラインによると“総合商社大手。非財閥系の雄。繊維や食料、中国に強い。傘下にファミリーマートなどの有力企業”と評されています。コーポレートサイトを見ると、
・繊維カンパニー
・機械カンパニー
・金属カンパニー
・エネルギー・化学品カンパニー
・食料カンパニー
・住生活カンパニー
・情報・金融カンパニー
・第8カンパニー
の8ディビジョン・カンパニーがそれぞれトレード、投資を軸に伊藤忠商事の事業展開を担っていることがわかります。また収益構造も公開しており非資源78.3%、資源21.7%と評価のとおり全体の約8割が非資源からの収益となっています。
また伊藤忠商事はアジア特に中国、タイの大手コングロマリット(複合企業)とのパイプが強固といえ、中国については1972年の日中国交正常化の年から市場に参入しています。現在、
・中信集団CITIC(中国)
・CPグループ(タイ)
と戦略的業務・資本提携関係にあります。
伊藤忠商事は戦後、1949年の設立となっていますが、創業は1858年。近江商人、初代伊藤忠兵衛が麻布の行商を開始した年としています。呉服太物商紅忠→伊藤糸店→伊藤忠へと改称し、現在に至ります。
1971年にいすゞ自動車とアメリカGM社の提携を仲介、1989年に日本初民間通信衛星『JCSAT-1』の打ち上げを成功させ、2020年にはファミリーマートを完全子会社にしています。
丸紅の評価、企業概要、沿革、特徴
丸紅は日本経済新聞によると“大手総合商社 芙蓉グループの中核。重電、プラントに強みを発揮”と。会社四季報オンラインによると“芙蓉グループの総合商社大手。穀物、発電で商社首位。プラントや輸送機、農業化学品に強み”と評されています。コーポレートサイトを見ると、
・生活産業グループ
・食料・アグリ・化学品グループ
・エネルギー・金属グループ
・電力・インフラグループ
・社会産業・金融グループ
・CDIO
が丸紅の事業を推し進めていることがわかります。
芙蓉グループは“旧富士銀行の融資企業を中心とした企業集団で,グループ社長会「芙蓉会」にちなんだ名称。三菱,三井,住友各グループなどの旧財閥系と並ぶ日本の代表的企業集団”とコトバンクで解説されており、芙蓉懇談会によると加盟企業は丸紅のほか、
・JFEホールディングス
・日産自動車
・日清紡
・日立製作所
・みずほ銀行
などが名を連ねています。
丸紅の沿革を確認すると、実に興味深いことがわかります。それは丸紅もまた創業者は初代伊藤忠兵衛で、もちろん創業年も1858年となっている事実です。どういうことかですが1949年、当時の過度経済力集中排除法によって、
・伊藤忠商事
・丸紅
・尼崎製釘所
・呉羽紡績
の4社に分割された過去があり、伊藤忠と丸紅の起点とあゆみは途中まで同じだったということです。丸紅は2020年、特に食料が好調でした。例えばデンマークではサーモンの閉鎖循環式陸上養殖を、アメリカではアラスカ天然水産物の集荷加工・販売、肉牛処理加工・販売などを、ブラジルでは穀物港湾保管・船積荷役事業を展開しています。
三菱商事の評価、企業概要、沿革、特徴
三菱商事は日本経済新聞によると“総合商社の雄 エネルギー産業との取引に強み。資源開発で先行”と。会社四季報オンラインによると“総合商社大手。三菱グループ中核。原料炭等の資源筆頭に機械、食品、化学品等の事業基盤厚い”と評されています。コーポレートサイトを見ると、
・天然ガスグループ
・総合素材グループ
・石油・化学グループ
・金属資源グループ
・産業インフラグループ
・自動車・モビリティグループ
・食品産業グループ
・コンシューマー産業グループ
・電力ソリューショングループ
・複合都市開発グループ
の10グループが、三菱商事の事業を担っています。
三菱商事の最近の動きとしては2020年12月、ミャンマー国鉄から鉄道新型車両246両を受注したほか、綜合警備保障(ALSOK)と介護事業で、資本・業務提携することを公表しています。
三菱商事、ミャンマーで鉄道車両受注 690億円
三菱商事、ALSOKと介護事業で資本業務提携
三井物産の評価、企業概要、沿革、特徴
三井物産は日本経済新聞によると“名門商社 三井グループの中核。金属資源、化学などに強い。海外収益に厚み”と。会社四季報オンラインによると“三井グループ中核の総合商社。鉄鉱石、原油の生産権益量は商社断トツ。インフラ等にも強み”と評されています。コーポレートサイトを見ると、
・鉄鋼製品セグメント
・金属資源セグメント
・エネルギーセグメント
・機械・インフラセグメント
・化学品セグメント
・生活産業セグメント
・次世代・機能推進セグメント
に分かれ、
・マーケティング
・ロジスティクス
・ファイナンス
・リスクマネジメント
・マネジメント
・デジタルトランスフォーメーション
という6つの機能でトレーディング、事業経営・事業開発に取り組んでいるとのことです。
また2020年末の日本経済新聞で報じられた記事によると、
“非資源ビジネスの強化やデジタル化を加速させる”
との記載があり、資源中心の収益構造を変革しようとする試みが行われているようです。
住友商事の評価、企業概要、沿革、特徴
住友商事は日本経済新聞によると“上位総合商社 住友グループの中核企業。金属取引、自動車などに実績”と。会社四季報オンラインによると“住友系の総合商社。油井管など鋼管は強大、CATVなどメディアも強い。資源は非鉄が軸”と評されています。ちなみにCATVとはグループ会社のひとつでもあるジュピターテレコム(J:COM)のことです。コーポレートサイトを見ると、
・金属事業
・輸送機・建機事業
・インフラ事業
・メディア・デジタル事業
・生活・不動産事業
・資源・化学品事業
の6分野を軸に事業展開をしていることがわかります。2021年年明け早々、住友商事はテック・マヒンドラと共同で、日本において自動車エンジニアリング事業を行うSCTMエンジニアリングを設立しています。
参考文献(各社企業サイト)
まとめ
さまざまな業界を知ることで本当に自分に合った業界、業種が見えてきます。やりたいことは何か、自分にできることは何か、自分で自分の可能性を狭めず、ミライへの選択肢を探し、どんどん増やしていきましょう!
また新しい情報が出てきましたら随時、加除訂正、更新していく予定です。