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聴衆を惹きつけるプレゼンテーション術

突然ですが、プレゼンテーションは何のためにやるものか、ご存じですか?「自分の意見を相手に伝えるため」でしょうか。

もちろんそれも重要ですが、実はもっと大切な目的があります。それは「プレゼンテーションを通じて、相手を動かすこと」。

TVショッピングの例がわかり易いですが、あれを見た人が一人も商品を買わなかったとしたら、そのプレゼンは成功したとは言えませんよね。自分の主張をどれだけ正確に伝えても、相手がそれを受け入れて、何かしらのアクションを起こさなければ、そのプレゼンは失敗したことになってしまいます。

誰でも少しの知識と訓練があれば、劇的にプレゼンテーションを変えられる

ここで少し自己紹介をさせてください。

図5

筆者は現役のコンサルタントとして、ほぼ毎日がプレゼンな日々を送っています。現状分析とシナリオ検討に始まり、プロジェクトメンバーへの指示、プレゼン資料の準備、顧客とのセッション、役員層への報告と合意形成など。これを常時2~3案件、並行で回していますから、嫌でも鍛えられますよね。

でも、今でこそライフワークになったプレゼンテーションも、駆け出しのころはとても苦手でした。

自信がないので夜中まで資料作りに費やし、発表が上手くいくよう、早朝まで自主練を繰り返す。特に大事なプレゼンの時は、それこそプレゼン会場のお手洗い(大きいほう)にこもり、直前までぶつぶつと独り言を出しながら練習したものです。

当時は「お客様にとってのわかりやすさ」もよくわからないまま、やみくもに努力していたのをおぼえています。もちろん失敗した経験も数え切れません。

ただ、そんな筆者だからこそ、今、伝えられることがたくさんあると思っています。

周りを見渡すと、昔の自分と同じように、プレゼンに対して漠然とした不安を抱えている人が多くいます。特に日本人は、幼いころから人前で自分をアピールする機会が少なかったせいか、プレゼンテーションに苦手意識を持つ人も多いと感じます。

でも、それはとても”もったいない”こと。

誰でも、少しの知識と訓練があれば、劇的にプレゼンテーションを変えられる。若いころ、もがき苦しみながらプレゼン力を鍛えた筆者だからこそ伝えられるポイントを、本書を通じて発信できればと思います。本書が、みなさまのプレゼン力向上に、少しでもお役に立てれば幸いです。

図6

はじめに

本書は、プレゼンテーションについて何らかの悩みを持つ皆様に、少しでも役に立つよう、筆者の豊富な経験に基づくプレゼンテーションノウハウをふんだんに盛り込んでいます。また、読者の経験値や悩みのポイントに応じて読み方を変えられるよう、構成を工夫しています。

プレゼンテーションの経験があまりない方や、ある程度の経験はあるものの、今一度体系的な整理をしたい方は、ぜひ初めから読み進めてください。きっと新たな気づきがあるはずです。

一方で、プレゼンテーションにある程度の自信がある方は、目次を見て気になるところだけをピックアップして読んで頂いても、内容がわかるようにしています。

加えて、筆者も常用しているパワーポイントスライドのフレーム集も収録していますので、すぐにでもご活用いただけます。

また、巻末には、ご自身のプレゼンレベルを俯瞰的にチェックするためのセルフチェックシートを用意しました。あなた自身の強み・弱みをあらためて確認し、弱い部分を積極的につぶすようにしてください。

本書が、読者の皆様のスキルアップに少しでもお役立ちできれば幸いです。


第1章.プレゼンテーションの優劣を決める3つの要素

1-1.プレゼンテーションとは

プレゼンDoJoでは、プレゼンテーションを以下のように定義しています。

「自分の主張を正確に伝え、相手に納得いただいた上で、次の行動に移していただくための一連の行為」

上記からもわかる通り、プレゼンテーションの目的は「相手に動かすこと」であり、「相手に伝えること」ではありません。そして相手を動かすためには、自分の主張を論理的にわかりやすく伝え、納得させる必要があります。加えて、相手の次の行動を引き出すためには、熱意をもって相手の”嬉しさ”に訴えかける必要があります。

一言でプレゼンテーションといっても、とても奥が深いんですね。

1-2.プレゼンテーションを構成する4つのP

プレゼンテーションの訓練をする前に、プレゼンテーションの構成要素について理解しておきましょう。

◆表1:プレゼンテーションを構成する4つのP

図7

これら「4つのP」がそろった時点で、聴き手の多少にかかわらず、それはプレゼンテーションです。そしてその場が設定された以上、プレゼンターは、プレゼンを通して参加者全員が同じ方向に動き出すよう、最大限努める必要があります。

1-3.プレゼンテーションの優劣を決める3つのスキル

続いてプレゼンテーションの優劣を決める3つのスキルを確認しましょう。

◆表2:プレゼンテーションの優劣を決める3つのスキル

図8-3

1つめのデリバリー・スキルは、デリバリー(聴覚表現と視覚表現)の仕方がうまいこと、つまり聴き手を惹きつける話し方や振る舞い方であることを意味します。平たく言えば「相手を”聴く気にさせる”ための技術」ですね。

2つめのシナリオ・スキルは、話が論理的でわかりやすいこと、つまりシナリオ(論理構成)がしっかりしていることを指します。平たく言えば「相手に”主張を理解させる”ための技術」ですね。

3つめのコンテンツ・スキルは、話の内容そのものが面白く、コンテンツが相手にとってもメリットある内容であることを指します。平たく言えば「相手にとっての”嬉しさ”に訴え、”次の行動をおこさせる”ための技術」ですね。

これらが三位一体となり、熱意をもって体現したとき、聴いてくれたみんなが「面白かった!」と言うことになります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。


第2章.相手を惹きつける話し方と立ち振る舞い

プレゼンテーションをする際、話し手は綿密な準備をします。資料は完璧。話の展開にも自信がある。さあ、いよいよ本番当日。

でも、緊張のあまり話し方がぎこちない。徹夜したせいか、よく見ると寝ぐせや目ヤニが残り、額から汗がにじんで見るからに落ち着きがない。こんな場合、聴き手はどう感じるでしょう。

頑張っていることは伝わるかもしれませんが、正直、聴く気になりませんよね。

どんなに努力しても、どんなに良い内容に仕上げても、相手が聴く気にならなければ意味がないんです。

プレゼンテーションの目的は「相手に伝えること」ではなく「相手を動かすこと」。本章では、その最初のキーとなるデリバリー・スキルについて解説します。

2-1.デリバリー・スキルとは

プレゼンDoJoでは、デリバリースキルを「相手を”聴く気にさせる”ための技術」と定義しています。このスキルを磨くことで、視覚・聴覚の両面から聴き手に訴えかけ、話し手に注意を集めることができるようになります。

◆表3:プレゼンの優劣を決める3つのスキルと本章のテーマ

図8-4

2-2.プレゼンテーションは見た目が9割?

突然ですが質問です。「人は、初めて会ってから、どれくらいの時間で相手を判断するでしょう?」

10分くらい?話の中身を聴かないといけませんので、20~30分くらいでしょうか。いいえ、実はもっと短いんです。

人は、会ってから90秒~120秒で相手を判断すると言われています。 これ、結構意外ですよね。人は相手を判断する際、ほとんど時間を使わないんです。「瞬時に相手を判断する」といってもいいかもしれません。

2-3.意識したい”メラビアンの法則”

ここで意識したいのが「メラビアンの法則」です。下のグラフを見てください。

◆表4:メラビアンの法則

図3

いかがですか?どれだけ資料を綿密に作っても、データを並べても、結局人は視覚情報と聴覚情報に左右されてしまう。。もちろん、言語情報が要らないということではないのですが、視覚・聴覚情報が非常に重要であることが見て取れます。

ヒトは90~120秒で相手を判断する。そしてその判断のための情報は視覚と聴覚が9割。

プレゼンテーションをする際は、ぜひこれらのことを意識して準備を進めましょう。

<NOTE>
メラビアンの法則を理解する際、1点注意が必要です。
それは、この法則はあくまでファーストインプレッション(第一印象)についての話である点です。このデリバリースキルにより、逆に90秒で相手を「ファン化」できたなら、速やかに話の中身(シナリオとコンテンツ)で勝負するようにしてください。

2-4.自然にこなしたい”アイコンタクト”

それでは、ここから具体的なデリバリー・スキルの高め方について見ていきましょう。まず最初に大事にしたいのが”アイコンタクト”。アイコンタクトを適度に入れることで、相手の反応を確認しながら、プレゼンの場を適切にコントロールできるようになります。

<アイコンタクトの効果>
相手の目を見ながら進めることで、
・話し手の自信が聴き手に伝わる
・自分の話が聴き手に伝わっているか、都度確認できる
・相手の興味や理解の度合いに応じて、進め方や話す内容を調整できる
・相手が多人数でも緊張しない(事実上1対1にできる)

では、アイコンタクトを効果的に行うためのポイントは何でしょう。実はアイコンタクトには、押さえておきたい2つの型(かた)があります。

◆表5:アイコンタクトの2つの型

図4

いかがですか?ただやみくもに相手を見たり、ただ一人を凝視したりしてはアイコンタクトの意味がありません。

ぜひZ型とW型を意識し、自分から見て一番遠くにいる人から視線を投げかけ、ZないしWを描きながら視線を戻すようにしてみてください。これを繰り返し、自然にできるようにすることで、聴衆から見て自然なアイコンタクトができるようになります。

大きな会場でなくても、普段の会議室でも使えますから、ぜひ早速試してみましょう!

2-5.なくしたい”言葉のヒゲ”

次に大事にしたいこと。それは”言葉のヒゲ”を無くすことです。これをやることで、あなたの話し方は劇的にわかりやすくなります。具体的に見ていきましょう。

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