TIME Alpe d'huez DISC 2024 購入記 その2 発注に至るまで

前回、「いつかはTIME」のいつかって今なのでは?と完全に頭がバグった状態まで行き、いつもの自転車屋さんに体が勝手に向いていた、という所まで書いた。
本稿においては、なぜTIMEなのか?なぜAlpe d'huezなのか?
誰も読んではいないと思うので、やはり備忘録的な意味合いとして書いていきたい。もし、何かのご縁で本稿を読んでいる方は、長いと思ったらどうぞすぐに離脱してください。
ただ、TIME Alpe d'huezのインプレや購入検討を記したブログや記事などは極端に少ないので、もし万が一誰かの参考になれたのであれば幸甚です。

なぜTIMEなのか?

前回も記した通り、TIMEはかつてロードバイク界隈では「いつかはTIME」と言われたほど憧れのブランドであった。
それは何故なのか?詳らかに語れるほど私自身も知識を持ち合わせていないのだが、それはRTM工法という独自の製法から数々のロードレースで多くの勝利を得ていたから、と言われている。
近年はワールドチームへバイクを提供していないので、ツールやジロでその車体を見ることはなくなったので、あまりそういった文脈で語られることは少なくなった。
しかしながら、このRTM工法で作り上げるバイクは設計の最適化がしやすいと言われており、乗り心地の良い特別なバイクとして今でも語られる。
今回私が購入したAlpe d'huezでは採用されていないが、アクティブフォークというマスダンパーを用いた技術も乗り心地に寄与しており、よくカーペットの上を走っている、といった比喩表現も用いられたりする。

BCS+RTM工法

他に詳しい記述がたくさんあるので、私が語るまでもないことであるがこのBCS+RTM工法がTIMEのオリジナリティを支える屋台骨であることは間違いなさそうである。
BCS+RTM工法と他のカーボンフレームの製法との違いを簡単に述べると、一般的なカーボンは”プリプレグ”と呼ばれる炭素繊維をレジンに浸したシート状の素材を素材メーカーから仕入れ、それを適切な大きさにカットして方に巻き付けていきオートクレーブと呼ばれる窯で熱と圧力をかけ成形するが、TIMEはカーボンの原糸を素材メーカー仕入れ、それにダイニーマやベクトラン等の繊維素材を組み合わせながら自社で編み上げチューブ状のフレームのもととなる「ソックス」を作り(BRAIDED CARBON STRUCTURE)、そのソックスを型に入れ内外からレジンを空気と置換しながら注入をしていく、、、というプロセスであり、一般的なプリプレグを用いた工法とは大きく異なる。BCS+RTM工法のメリットとしては、原糸から作り上げるのでフレーム設計の自由度が高い、という認識だ。
【参考】

https://www.podium.co.jp/brands/time/resin-transfer-molding

しかしながら当然デメリットもあり、このBCS+RTM工法は非常に手間の掛かるプロセスで、自転車メーカーでこの製法を採用するのはTIMEのみといってもよく、おそらく製造コストや生産設備のメンテナンスコスト等採算性の悪い製法であろうと言える。当然、生産設備に汎用性はなく、他のメーカーがやっているように、アジア地域のフレーム製作メーカーでOEMを行うという事も出来ない。したがって、他のブランド達より生産数も少なければ、モデルバリエーションも少なくない。ハイエンドの設計をVEしてディフュージョンモデルで採算をとる、といったことも難しい。そんな採算性の低さから、TIMEは創業者が亡くなった後は撤退の噂をされる事も多く、会社自体も、私が知る限り、2度別の資本に売られている。(最初はフランスのロシニョール、ロシニョールはアメリカのカーディナル・サイクリング・グループ。#ペダルの技術はロシニョール→スラム)

それでも、TIMEというブランドの代名詞であるこの製法はブランドの屋台骨といってもいいほどのオリジナリティを持っており、TIMEとしては別の製法でフレームを世に送り出すことは、ブランド自体の価値を自己否定することになると思い込んでいるようであるし、我々TIMEに憧れを持つファンにとってもその認識は同じであるため、TIMEがよほどエポックメイキングな他の製造方法に出会わない限り続けていくのであろうと思われる。
それは、まるでポルシェという自動車メーカーが911という車種においてRRのレイアウトに拘る様と似ていると筆者は思っている。


このBCS+RTM製法から作られるフレームたちは非常に美しいカーボンの織り目を持っており、化粧カーボンを多用する他のフレームたちとは全く違った造形美を感じることができる。その美しさは工業製品である自転車のフレームに独特なオーラを与えるほどだ。

先にも記したように、いつも経営難であるTIIME社は今後またいつ危機的な状況に陥ってもおかしくない。そんな風に考えると、やっぱり”いつか”は”いま”なんだと思えてきてしまった。
#これについては、日本において輸入代理店を務めるポディウムのnoteに上記の私の想いを否定する、とても楽しみな記事があるので決してそんなことにはならない、と信じてもいいのかもしれませんが。
【詳細】

いつもの自転車屋さんで言われたこと

そんなこんなで、2023年の8月の終わりに頭の中をTIMEでパンパンにしていつもの自転車屋さんにライド帰りに立ち寄った。
普段私は、自分のロードバイクを自身の手でメンテナンスを行っており、頻繁に行くわけではないのだが、こちらの店長とはウマが合うのかお互いそんなに遠慮せずコミュニケーションが取れる関係となっている。

店長「どうしたの?珍しい」
私「いや、そろそろ次のフレームを考え始めてて・・・」
店長「いやいや、まだまだそのTCRで十分でしょ!」
私「いや、ちょっと気になるモデルが・・・」
店長「何よ?」
私「タイム・・・」
店長「へ?」
私「タイムのアルプデュエズ・・・」
店長「いやいや、要らないでしょ!!」
私「ちょっと問屋の在庫だけでも調べてよ・・・」
要らないでしょって!、、、それだけ私がTCRを気に入っていることを彼は知っていたし、TCRの良さも十二分に実感値として持っていたという事なんだが、全く商売っ気のない自転車屋さんだこと。
渋々?PCを使い問屋の在庫を調べ始める店長。
店長「いやー、全然ないねー。発注してもいつ来るか分らんよ。TCRでいいじゃない。それ、いいバイクだよ。」
私「いや、それはよく知ってるんだけど。。。まぁ、問屋さんにいつ来るかも含めて、一回聞いておいてよ。」
店長「分かったよ。聞いておいてあげるから一回冷静に考えてみて。」
というやり取りをし、その日は一度自転車屋さんを後にした。

いよいよ正式発注!

まぁ、冷静になんて考えられる訳もなく、また翌週のライドの帰りに自転車屋さんへ。
私「どう?発注したらいつ来るって?」
正直、この時点で問屋には聞いてないだろうと思っていたのだが、
店長「あー聞いたよ。色によるけどだいたい3か月くらいらしいよ。色は何がいいの?」
私「カーボンの目がきれいに見える黒!」
店長「ホントに買うの?俺はTCRでいいと思うけどなぁ」
私「いや、タイムってさ特別じゃん。一生に一度は乗ってみたいじゃん。タイムっていつでも潰れそうだから、今買っておかないとなんか後悔しそうなんだよね・・・」
その後、タイムがいかに特別か、いかに稀有な存在なのか、釈迦に説法ではあるけど彼に説明したところ
店長「確かにそうだね~。予算もあって買えるんだったら今買うのはアリだよね~。」
と僕の気持にほだされだのか、急に態度が軟化してきた。
私「キャンセルとか絶対しないから、発注してよ。俺が店長さん裏切ったことなんてないでしょ?」
店長「よし!分かった。発注しよう!!サイズどうする?」
どうにか私の思いは彼に届いたようで、なぜか急にノリノリになる店長。
店長「ハンドルどうするの?ホイールは?コンポは流用でいいよね!」
私「コンポを流用する以外はまだ全然考えてないよ。他のパーツ周りはもう少し考えるから。」
店長「そうだね!ここまで来たら理想の一台を作り上げようね!!」
一体さっきまでの出し惜しみ?は何だったのだろう。私にTIMEに乗る覚悟があるのか試していたのか?それでも、そんな彼が私は嫌いになれない。どころか、何故か好きなのである。。。

そんなこんなで完全にイカれた状態でのイカれたやり取りの末、前納金を払い正式にTIME Alpe d'huezの2023年モデルを発注した。

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