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映画ゴッドファーザーの撮影地!マッシモ劇場が建設された時代のウラ話

イタリアには多くのオペラ劇場がありますが、

イタリアの中で一番大きな劇はどこでしょう?

…よく返ってくる回答が

「ミラノのスカラ座!」

残念でした… 正解はパレルモにあるマッシモ劇場なのです

イタリア最大のオペラ劇場

19世紀に建設されたマッシモ劇場は面積7730平方メートル、建設当時の収容人数は3千3百人余りでした

この劇場を建設するためにパレルモの1地区全てが取り壊されたそうです

その中には教会や修道院みたいなものもありましたが、そこに埋葬されていたある修道女の霊がマッシモ劇場を訪れる人の足を引っかけて転倒させるという曰く付きの階段なんかもあります

歴史的建物にはよくあるオバケ伝説ですね 笑 
オペラ座の怪人もといオペラ座の怪女ってとこでしょうか?
いずれにしても世紀を代表する大工事のひとつだったということです

ただの1地方にしか過ぎないパレルモにこれだけ立派なオペラ座があるのには当時のちょっとした社会階層の変化が関係しています

シチリア島はそれまで伝統的なラティフォンディウム
つまり広大な農地を所有する貴族が土地を分割して小作人に耕させて年貢を受け取る仕組みです

汗水流して農作物を生産する小作人の集落が「村」
年貢は「村」から貴族達の住む「町」へと運ばれます
町の大きなお屋敷で勉学や芸術に通じる貴族は知識階級ですが、その生活費は統治する領地から吸い上げた年貢で賄われていました

18世紀にイギリスから始まった産業革命はヨーロッパに普及し、19世紀のシチリアでも資本家が登場してきます
貴族・平民(農民)という農耕を中心とした社会階層から新たに「中産階級(ブルジョワジー)」が誕生するのです

農耕を基盤とした封建社会が産業を中心とした雇用制度へと移り変わる中で貴族達はお金に困り始め没落していきます
一方で経済力を確固たるものにした中産階級ですが、彼らには伯爵や侯爵などの「称号」がありません

このような社会階層の変動でお互いの利害関係の観点から貴族と中産階級間の婚姻も執り行われるようになります

貴族の娘(または息子)と中産階級の息子(または娘)の婚姻によってビンボーな貴族は財産(お金)を手に入れ、〇金な中産階級は称号を手に入れることになる… めでたしめでたし

マッシモ劇場の建設はこのような時代に行われました

劇場建設の出資は勿論、中産階級の実業家達

つまり当時の「へーみん」が建てたオペラ劇場なんです

オペラ鑑賞は貴族の社交のひとつ。社交界に入りたいブルジョワ達がその経済力を使って貴族と交流できる場所を設けようという目的です

出資するからには最高のものを というのは今も昔も変わらぬ『ビジネス魂』
ムラノから取り寄せたベネチアングラスを利用した照明、一世を風靡した当時の画家達による絵画装飾、音響の配慮などは勿論ですが、
エアコンがなかった時代に劇場の天井を開閉して空調を調整する画期的なシステムを導入したりして、マッシモ劇場はイタリア1の広さと優美さを誇るオペラ劇場となったのです

マッシモ劇場の大天井。周囲の花びら型部分はワイヤーで開閉可能

先程も少し触れましたが、オペラ鑑賞は社交のひとつ
ただ単にオペラを見るわけではなく、交流の場でもあったのです

家族全員で劇場に赴き、オペラの開始前や幕間ではお見合いや政治の根回しやビジネス交渉なども行われました

マッシモ劇場内部もステージと客席だけでなく、交流の目的に使用された共有空間がいくつかあって、そこにもちょっとした工夫がされています

エコーの間と呼ばれる部屋

↑ 劇場内の共有空間である『ポンペイの間 (Sala Pompeiano) 』は別称「エコーの間」と呼ばれています

ここはオペラ幕間にタバコを吸うために男性達が集る場所でした

その名の通り、この部屋はエコーがかかって反響するので、かなり近くにいないと会話が成立しません

当時ここを訪れる男性達は町のキーパーソン。政治やビジネスの根回しや交渉など会話のプライバシーが守られるようにわざとエコーで反響する設計にされているそうです

贅を尽くして作られたゴージャスなマッシモ劇場ですが、中産階級が建設したということもあるのか、貴族階級からは冷ややかな受け止め方をされることもあったようです

サボイアのウンベルト国王用のために作られたロイアルボックスも、

「この町にこれ程贅沢な劇場は似合わない。こんなものは必要ない」

と国宝本人からもダメ出しを喰らい、利用すらされませんでした

ロイアルボックス専用のフォワイエ。現在もサボイア王国の紋章がある

王族からは相手にされなかったマッシモ劇場のロイアルボックスですが、その後映画『ゴッドファーザーPart3』の撮影に使われ、世界的に有名になるのです

アルパチーノが座ったロイアルボックス。今ではだれでも座ることができます

現在、ロイアルボックスは催し物の当日販売限定でプラテア(平土間席)と同料金で購入できるんだそうです。さすが『庶民の劇場』ですねー

このロイアルボックスは27席くらいあるので、マッシモ劇場でオペラやバレエなんかやっていたら開演2~1時間くらい前にチケットオフィスでトライしてみるのもよいのではないでしょうか?

ゴッドファーザーの気分を味わえるかもしれませんね!

日中は9時~19時まで内部見学ツアー(有料10ユーロ)も30分おきに行われています(リハ―サル等で見学時間の変更あり)

詳細はマッシモ劇場公式サイト(伊、英)にて


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